インドやパキスタンでは、ハレの日の食べ物として「ビリヤニ」が振る舞われるそうだ。
米を肉や魚、野菜などの食材と香辛料とともに長時間かけて炊き上げる「ビリヤニ」は、日本でいうところの炊き込みご飯のようなもの。インド料理の一つと認識されがちだが、起こりは中東といわれ(諸説あり)、現在南~東南アジアまで地域色を映した郷土料理として広く食されている。
日本でも近年、イスラム圏からの観光客増加に伴うハラルフード(イスラム教の戒律に沿った食べ物)への注目とともに専門店も登場。その見た目の鮮やかさもあり、カレー好き、エスニック料理好きを中心に穏やかな広がりをみせる。
米とカレーを重ねて蒸し上げる独自の手法
「ビリヤニ」の最たる特徴はその調理法にある。基本は、壺型の底深鍋に長粒米の一種「バスマティライス」と「グレイビー(カレー)」を交互に敷きつめ、弱火で長時間蒸すというもの。味わいや歯触りの調整が難しく、現地ではビリヤニ職人と呼ばれるプロフェッショナルもいるほどだ。
銀座8丁目、博品館ビルに店を構える『カーン ケバブ ビリヤニ 銀座店』では、店名にも掲げる「ビリヤニ」のほか、フィッシュヘッドカレーやニハリ(骨付き肉の煮込み)、ハリーム(穀物や豆のスパイス煮込み)など、インドを軸にパキスタン、中東の料理を日本人の舌に合うよう提供している。
看板メニューの「ビリヤニ」は、ラム・野菜・チキン・シュリンプの4タイプを用意。一番人気の「ラムビリヤニ」は、ラム肉のうまみを抽出したスープにホールスパイスなど30種類の香辛料を加え、濃厚なグレイビーに仕上げていく。これを赤や黄、橙と色付けした目にも鮮やかなバスマティライスと交互に重ね、1時間じっくりと蒸し上げる。インドやパキスタンを中心に生産されるバスマティライスは、「香りの女王」の異名をとるほど香り高い品種。粘性が低く、日本人好みのふんわりと軽い質感が実現する。
「重ね」が生む味のグラデーション
その風味、絶佳なり。香り高いバスマティライスひと粒ひと粒がラム肉の力強いうまみにあふれ、続いてシナモンやカルダモンといったスパイシーな芳香が次々と花開く。
コリアンダーやオレンジピール、ミントも香りのふくらみに欠かせない。大ぶりなラム肉の柔らかい歯触りも心地いい。“重ね”の手法は、一皿にふくよかなグラデーションをもたらし、不意の喜びを生む。
「ビリヤニ」にさらなる表情を与えるのが、ライタと呼ばれる付け合わせ。同店では、キュウリやトマトを混ぜたダヒ(ヨーグルト)にコリアンダーやミントを散らした爽やかな仕立てで供する。「ビリヤニ」と合わせることでスパイスの角が取れ、かすかな酸味がキレを呼ぶ。
日本人に馴染み深い「炊き込む」という手法と巧みなスパイス使いが生む、変化に富んだ一品。インド料理の新たな選択肢として、今後より広く浸透することだろう。
(取材・文/井上こん)
<メニュー>
・ラムビリヤニ 1,855円
・3種類のカレーランチ 975円
・タンドリーチキン 1,595円
・アルチッキ(インド風コロッケ) 650円
・ココナッツアイスクリーム 410円
※価格はすべて税込
カーン ケバブ ビリヤニ
- 電話番号
- 050-3469-9048
- 営業時間
- ランチ:11:00~15:30(L.O.15:00)、ディナー:16:00~22:30(L.O.22:00)
- 定休日
- 無 年末年始(2016年1月1日)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。