麻布十番に店を構えるフレンチレストラン『Sublime(スブリム)』。
シェフの加藤順一シェフは、『レストラン タテルヨシノ』で修業後、パリ『Astrance(アストランス)』からデンマーク・コペンハーゲンの『Restaurant AOC(レストラン・エーオーシー)』やホテル・ダングルテール『Marchal(マーシャル)』にて北欧料理を学んできた。
そんな加藤シェフだからこそ作り出せる料理とはどんなものか?さっそくいただいてみることに。
想像を掻き立たせるメニューの数々に感動
席へ着くと本日のメニューが渡される。食材しか書かれていないメニューを手に取り「どんな料理がでてくるかな」と想像しながら待っている間、友人との会話が弾む。
ひと口でいただく、個性豊かな3種のスナック。
ごちそうを見つけた森のこびとの気分になる小さなタルト「雲丹 人参」は、切り株のような器に乗って登場。極薄の生地にニンジンのピューレと生ウニが入ったタルトは、サクッと軽く口の中でとろける。エルダーフラワーの実のピクルスやアップルゼラニウムの花がのせられていて、ハーブのほのかな甘みと酸味が濃厚なウニのあと味をさっぱりと仕上げてくれる。
思わず笑みがこぼれるほど、かわいい鳥の巣を発見。卵の殻の容器には「玉蜀黍(トウモロコシ)」の冷製スープが。カルダモンのパウダーが散りばめられているから、スープの甘みが強すぎず香りに華やかさが増す。かつて加藤シェフが修業していた『Restaurant AOC』がルーツだという、茶目っ気たっぷりな料理の見せ方からシェフの遊び心が伝わってきた。
蓋を開けるとフワッと食卓にひろがる煙の中から「ジャガイモ ロイロム」が現れた。ロイロムとは白ニシンの卵。スウェーデンではキャビアのように親しまれている食材である。ロイロムの塩味がジャガイモの甘みを引き立たせてくれる。桜のチップでスモークされたクリームチーズは、小粒なのに薫香が強く酒のつまみにぴったりだ。
美しい色彩に目を奪われる「ビーツ 鳥取産銀鮭」の前菜
「フレンチのソースといえば油分を乳化させるのが基本ですが、北欧料理ではわざと分離させるんです。それが逆に美しく、器に彩りを与えてくれます」と話す加藤シェフが学んできた、北欧の美が表現された一皿。
真っ赤に染まるビーツは、アップルビネガーに漬けられたもの。数枚めくると、中にマリネされた銀鮭が隠れている。ソースはサワークリームにディルオイルを合わせて酸味と香り華やかに。
寒い北欧では食材を収穫できる期間に限りがある。春と夏に一気に収穫し、発酵や塩漬け、酢漬けにすることで一年中食べられるように保存している。見た目が美しいだけでなく、酸味をしっかり感じられるのも、北欧らしさのひとつなのだ。
インパクト抜群!「マッシュルーム 半熟卵」は加藤シェフのスペシャリテ
食材しか書いてないメニューの中でも、一際気になる“マッシュルームと半熟卵”の組み合わせ。あれこれ想像してみたけど、見事に裏切られた。
スライスされたフレッシュなマッシュルームが山盛り登場。そこにスープが注がれると、芳ばしい香りいっぱいの温かいスペシャリテが完成した。マッシュルームは、加藤シェフの地元である静岡県で栽培されたものを使用。スライスの下には柔らかくソテーされたマッシュルームが入っていて、一緒に食べると食感の違いが楽しい。
注がれたスープは、3週間発酵させたマッシュルームのジュースとクリームを混ぜたもの。半熟卵と絡めていただくと、うまみがぎっしりつまったスープのコクが深まる。デンマークから帰国後、静岡県富士宮市にある有機農園ビオファームまつきが経営するレストラン『Bio-s』で半年間、料理と野菜の栽培に携わった加藤シェフ。ファームで働いた経験と、北欧料理の地産地消という考えに習い「日本で料理を作るなら、できる限り日本の食材を使用したい」というこだわりから生まれたスペシャリテは、シンプルだが一度食べたら忘れられない存在感がある。メニューにあえて食材しか書いていないから、想像をふくらませる楽しみがある。料理にはそんな予想を越えた驚きがあり、しかも食材をしっかりと感じられるよう計算されているからだ。
花の香りに癒されるデザート「ラベンダー ブルーベリー」
紫色の花びらが可愛らしい。シンプルだけど洗練されたデザインで登場したアイス。
口の中で溶けた瞬間、ラベンダーの香りが弾けた。下に隠れたフレッシュなブルーベリーと、丸いディスクに使われているラベンダー風味のビネガーが、甘すぎないよう演出してくれる。
『Noma』の魅力にハマって生まれた加藤シェフの料理とは
2009年、世界のトップレストランに何度も輝くデンマークの有名店『Noma(ノーマ)』が本を出版した。興味本位に手に取った加藤シェフは、そこで北欧料理の存在を知ったという。とにかく美しいデザインの料理と、少ない食材でも華やかに魅せるセンス、繊細なハーブの使い方を学びにパリからコペンハーゲンへと渡った。
「歴史が浅い北欧料理は、まだまだ手探りの途中です。安定したレシピはないので、料理の基礎や技術は学生時代から学んできたフレンチを活かすことにしました。そして実際に調理する場は日本。できる限り日本の食材を使って、海外のお客さまにも日本でしか味わうことのできない料理を提供したい。まあ、いいとこ取りですね」と笑顔で語ってくれた。
Sublime(スブリム)
- 電話番号
- 050-5494-8511
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- ランチ 11:30~15:00
(L.O.13:00)
ディナー 17:00~23:00
(L.O.21:00)
- 定休日
- 無
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。