東京の中でも屈指の観光都市として名高く、和食店や洋食店、純喫茶などの老舗店がひしめく浅草。そんな浅草で近年、再びブームを巻き起こしている食べ物があるのをご存知だろうか?古くから下町っ子に愛されてきた「もんじゃ焼き」だ。
もんじゃ焼きの街といえば東京の月島が有名だが、もんじゃ焼きの発祥地は浅草という説が多い。そんな浅草の中でも人気の3店に、浅草で再び興っているというもんじゃ焼きブームについて伺いながら、今浅草で食べるべきもんじゃ焼きメニューをご紹介する。
2012年東京スカイツリー開業後に浅草のもんじゃ屋が増加
「2012年に東京スカイツリーができて以来、ここ4~5年で浅草のもんじゃ屋は急激に増えました。今や東京観光とセットの食べ物なんでしょうね」こう話すのは、1980年初頭に創業した『六文銭』の二代目オーナー・丹波さんだ。浅草には昨年末、地方グルメなど日本各地の魅力をまるっと体感できる商業施設『まるごとにっぽん』がオープンするなど、外国人観光客をターゲットにしたお店は急増している。
実際に「ぐるなび」が蓄積する最新の飲食店データから、浅草エリアと台東区エリアにおける、近年のもんじゃ焼きを提供する店舗数推移を見てみたい。2012年には浅草エリアと台東区エリアともにまだ16店だったもんじゃ屋が、2016年には浅草エリア26店、台東区エリア33店とここ4年で約2倍にももんじゃ焼き屋が増加しており、東京スカイツリー開業が影響していると言えそうだ。
カマンベールチーズもんじゃ発祥の店?! 創業35年の『六文銭』
創業35年というこちらのお店でも、他店との差別化としてインバウンドに力を入れており、メニューは英語・中国語・韓国語の3ヶ国語対応。
「とくに台湾をはじめ中国のお客様が多くなりました。欧米のお客様は『ジャパニーズパンケーキ』と呼んで、お好み焼きのほうが好きな方が多いのですが、中国をはじめアジア圏のお客様は、もんじゃをより好んで食べる印象ですね」
そんな『六文銭』で一番人気のメニューは、丹波さんが「おそらく発祥はうちだと思う」という1998年スタートの「カマンベールチーズもんじゃ」。テッパンの上で白いカマンベールが溶けるなか、キャベツがしんなりと絡んでいく様は、香りもあいまって食欲を刺激する。
夏でも人気のもんじゃ焼きメニューは「カレーもんじゃ」
暑い夏は鉄板を使うもんじゃ屋は、客足が遠退くのでは? と伺うと……、やはりここは東京イチの観光名所、ほかエリアのもんじゃ屋では考えられない答えが返ってきた。
「夏休みは観光客が増えるので、逆に混むんです(笑)。とくに夏はカレーもんじゃが出ますね」
なんとこちらのカレーシリーズは、チキン・ビーフ・ポーク・シーフード・トマトの計5種類(864円)。とくにトマトが溶け出しうまみの増すトマトカレーが人気なのだとか。ほかにも、自家製ドレッシングでさっぱりいただける生野菜サラダも定番人気とのこと。
<メニュー>
・カマンベールチーズもんじゃ 1026円
・カレーもんじゃ 864円
・生野菜サラダ 864円
※価格はすべて税込
六文銭
- 電話番号
- 050-3468-8012
- 営業時間
- 月~日 11:00~22:30
- 定休日
- 無
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
下町っ子にとって、もんじゃ=おやつ! 浅草のもんじゃ屋は通し営業が多い
また、浅草のもんじゃ屋を語るうえで注目したいのが、“通し営業”のお店が多いこと。
今回紹介する3店舗も、アイドルタイム(飲食店での通称:一般的にランチとディナーの間でクローズする時間帯)を設けず、ほぼ終日営業している。
浅草寺から徒歩1分ほど。入口の引き戸を開けると駄菓子ブースが迎えてくれる、タイムスリップしたかのような店『ひょうたん』。こちらの店主・浜崎さんに浅草で“通し営業”のお店が多い理由を聞いてみた。
「下町の人間にとっては、もんじゃ=昔の子供の“おやつ”なので、間食やおやつタイムも通し営業しているお店は多いですね。もともと江戸末期に、子供たちがだしで溶いた生地を使って鉄板に文字を書いて覚えながら食べていた「文字(もんじ)焼き」がもんじゃ焼きと呼ばれるようになったとか。浅草がもんじゃ焼き発祥の地とする説は多いです。このお店は創業25年ほどですが、私は小さい頃から、駄菓子屋でもんじゃ焼きを食べていた世代。その頃は具がほとんど無い、ルーが大半のようなもんじゃで、当時は味も付いていなかったので、置いてあるソースなどを使ってかさ増ししたりして……(笑)」
駄菓子屋の奥のもんじゃ屋さん『ひょうたん』
まさに『ひょうたん』は“駄菓子屋さんの奥のもんじゃ屋さん”がコンセプト。外国人には「駄菓子」を何て説明するのかを伺ったところ、英語では「CHEAP CANDY(チープキャンディ)」がしっくりくるのだとか。
「“もんじゃ=おやつ”という感覚で、遊びながら食べて欲しいので、うちではできるだけお客様ご自身で焼いていただくようにおススメしています。そのほうが、もんじゃ焼きは楽しめるので」
もちろん、焼くのが苦手な人はスタッフが手伝ってくれる。
コツは人差し指に力をいれて、一気に剥いで食べること!下町っ子ならではの「おこげ煎餅」もトライしたい
こちらでは、皆に愛されるもんじゃ焼きの代表的なメニュー「明太もちチーズ」を。
絶妙な焼き加減になるよう温度調節のアドバイスもいただき、「人差し指に力をいれて一気に剥ぐのがポイント」と言われるがまま、鉄板から直接ヘラを使って口に運ぶ。桜エビの食感と、プチプチとした明太子の濃厚なうまみがたまらない。余った生地をうすーく伸ばして、おこげ煎餅を作って楽しむのも下町っ子ならではの楽しみ方。
またこのお店のもうひとつのおススメが、昔ながらのそば麺がカレーとマイルドに馴染む「カレー焼きそば」。油でコーティングしていないため、鉄板の上でお酒とだしを加えて、麺をほぐしていく。カレー仕立ての汁を流し込むと、香りのついた煙は一気に店内を駆け巡り、周りのお客さんの胃袋まで刺激していた。
<メニュー>
・明太もちチーズもんじゃ 1,296円
・カレー焼きそば 1,080円
※価格はすべて税込
江戸もんじゃ ひょうたん(えどもんじゃ ひょうたん)
- 電話番号
- 03-3841-0589
- 営業時間
- 11:00~21:00、LO20:00
- 定休日
- 定休日 第2・4火曜(GW・盆時期・年末年始は営業)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
月島とは違う! 独自の成長を遂げる、浅草のもんじゃ
最後に伺ったのは、(論旨とはズレてしまうが)「お好み焼き」もおいしい、西浅草の『七五三』だ。ここは「今半通り」という食通にはファンも多いグルメストリートにあり、その通りの先には東京スカイツリーの上半身も見られる、穴場スポット。
名物女将・西原さんも、「“もんじゃは東京”“東京というともんじゃ”とされるほど、ここ10年くらいでもんじゃ屋が軒並み増えた」という。話を伺うと、月島のもんじゃ街とは大きな差もあるようだ。
「月島にはもんじゃ振興会があって、協同で街づくりをして、一斉にもんじゃ街が作られていったため、ソースなどの食品メーカーとの契約があったり……とも聞いたことがあります。浅草では個人店が多いこともあり、独自で見つけ出した食材や味わいが際立っていくのではないでしょうか」
差別化・オリジナリティを追求したメニューが揃う『七五三』
そう話してくれた『七五三』の人気もんじゃは、15年連続で雑誌やテレビで取り上げられている不動のメニュー「特製カレーコンビーフもんじゃ」。
コンビーフのうまみがカレーに溶け出すことで、もんじゃの一体感が高まり、この組み合わせはクセになる。新潟から取り寄せているこだわりの丸餅は、鉄板のうえでも蒸されるようにカタチを留めながら、口に入れたときにモチっとした食感を披露することも忘れない。
またこちらでは、特別に契約を結んでいる平田牧場の三元豚を使った「とんてき」(キャベツ付き)など、希少なメニューも少なくない。三元豚は、穀物のみを与えて育てるため、レアな状態でも食べられるとあって、外国人・日本人問わず人気のメニューだ。
<メニュー>
・特製カレーコンビーフもんじゃ 1,580円
・とんてき(キャベツ付) 980円
※価格はすべて税込
浅草 七五三(しちごさん)
- 電話番号
- 03-3847-5753
- 営業時間
- 火曜〜日曜12:00~23:00、月曜のみ17:00-23:00
- 定休日
- 定休日 月曜の昼
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
東京随一の観光スポットとして、観光客によって再びもたらされた浅草の「もんじゃ焼きブーム」。差別化・オリジナリティを追求した浅草のもんじゃ屋は、食通・玄人の舌も満足させるクオリティのお店ばかりのようだ。老舗のこだわりを残しつつ、切磋琢磨されレベルアップしている浅草のもんじゃ屋をあらためて訪れてみるのはいかがだろうか。
(取材・文/藤井存希)