#003 自然に寄り添う静かな革新、中目黒
目黒駅は品川区にあり、品川駅は港区にある。そして、目黒銀座が存在するのは中目黒駅だ。2003年に目黒区総合庁舎が中央町から中目黒に移転し、中目黒、通称・中目は目黒区の中心駅になった。東横線の降車駅の中でも、比較的早い時期から若者たちが住み始めた中目・祐天寺辺りには、数多くの飲食店、バー、居酒屋が林立する。特に、東横線高架下は飲食店の密集地帯だった。しかし、高架下の耐震補強工事が始まり、リバーサイドがビルに変わり始め、中目の風景もまた大きく変わり始めている。
駅周辺には、ティッシュを配るガールズバーの女性たちや、黒服の客引きたちが闊歩している。今すぐ喧噪を飛び出して、山手通りを246側と、駒沢通り側に歩き出してみよう。そこには、生産地から直送される海と山の幸、上質な短角牛をリーズナブルに供する真の隠れ家がある。自然派のワイン、ヴァン・ナチュールだけを取り揃え、角打ちだってできるワイン通垂涎のストアもある。果実酒と野菜料理に心を癒される、料理研究家が営む飲み食い処もある。もちろん、3軒とも、この街の知られざる秘宝だ。
塩むすびで〆る隠れ家割烹。
すべての食材が生産者から直接届けられるため、2週間顔を出さないと、メニューのほとんどが変わってしまう。それは自然の恵みに敬意を表し、美しい四季の国、日本の旬を大切にしている料理人だからこそ成せる技だ。チェーン店ばかりの山手通り、ピザ屋と焼肉屋の階上に広がる岩手の自然に、客たちはきっと胃袋を鷲掴みにされるだろう。東北岩手出身の板長マサルさんが、故郷の食材に再び向かい合った瞬間から始まった味覚のオペラは、今もまだ進化を続けている。
濃紺のストライプに迎えられて階段を上がると、雁行する2本のカウンターが目に入る。
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