どうも、料理芸人・クック井上。です!
餃子の発祥が中国だというのは周知の事実ですが、日本に渡った餃子は、日本国内の各地方で独自の進化を見せ、「ご当地餃子」という言葉を生み出しました。しかし、世界には様々な餃子があり、「世界のご当地餃子」があるのはご存じでしょうか?
「皮で餡を包む」そして「焼く・茹でる・蒸す・揚げる」といった加熱調理をした餃子に似た料理は、世界各地にあり、形も日本の餃子のようなものから、小籠包に近いものまで様々。そして、この大都会・東京は本当にあらゆる国のお料理が食べられる街。ありますよー、飛行機に乗らなくても東京に「世界のご当地餃子」が! そんなわけで今日は南米アルゼンチンへひとっ飛び、大江戸線で!
■伝説のサッカー選手も食べた! アルゼンチン料理店『エル・カミニート』の“餃子”
やってきたのは、都営大江戸線赤羽橋駅から徒歩3分の『エル・カミニート』。アルゼンチン在日本大使館の元シェフの方が開いたアルゼンチン料理の専門店です。店内にはアルゼンチンの地図が貼ってあったり、アルゼンチンのサッカー選手のサインが飾ってあったり、まさにアルゼンチン感たっぷり。さぁ、さっそく今回ご紹介したいアルゼンチンの餃子「エンパナーダ」をオーダーしましょう。選手入場!
来ました、こちらが「エンパナーダ」です。大きいけど、なんて可愛いフォルム! 可愛すぎて、ナイフとフォークがあるのにもかかわらず、思わず手で持ち上げちゃいました。手乗りエンパナーダ(笑) なんかこういうキャラクターみたい。
萌えるフォルムと大きさで、テンションMAXです。可愛い、可愛いよ、抱きしめたいよー! あっ、40過ぎたおっさんが、取り乱してすいません。いい大人なんだから行儀よくちゃんとお皿に戻して、ナイフとフォークで食べます。と、ナイフとフォークを持った僕に「是非、手づかみで!」とオーナーシェフ・浅井敬三さんの声。そうなの? 逆に手が正解? 言われる前に正解を叩きだしていたとは。そうとわかりゃ、さっそく手づかみ、いやさ手乗りで、この可愛いエンパナーダちゃんを、いただきまーす!
サクッ! サクサクサク!
なんていい音。ひと口食べたときに、サクっと、耳に心地よい素敵な音色が響き渡ります。中身の餡は、牛肉の挽き肉・ざっくりみじん切りの玉ネギ、ゆで卵、オリーヴなど。塩気は強くないのに、あらゆる素材の相乗効果で、アルゼンチンの赤ワインに負けないうまみのハーモニーが奏でられている…! 南米大陸を感じさせる、優しく大らかな味が感じられます。アルゼンチンワインともベストマッチ! これ、無限にイケる組み合わせだわ。
ほんのり感じられる甘さが非常にいいアクセントになっています。なんだろうか、この自然な甘さは…。
右側、よーく見て下さい。黒っぽい茶色のものがあるでしょ。
レーズンが入ってるんです!!
全体の味付けが濃くないから、レーズンのほどよい甘みがアクセントになっていて、牛挽肉の味を引き立てています! そして何より、赤ワインに合う! ざっくりみじん切りにした玉ネギの歯ごたえがよく、噛めば噛むほどうまみが心地よく広がります。肉汁と玉ネギの汁を吸いこんだ内側の生地がしっとりしてきて、外はパリッ、中はしっとりのコラボレーションが生まれてきます。1個が大きく、ボリューム感を感じますが、オーブンで焼いた生地だから軽く食べられる。これは何個でもイケる!
この生地、どうやって作っているのでしょうか? 「小麦粉と水を使っているけれども配合は秘密! でも、日本のアルゼンチン料理店で生地まで手作りしているところは少ないんじゃないかな。アルゼンチンでも既成の生地が売られているから、家で具材を包むだけでいいの。エンパナーダは家庭で食べるおやつだから、アルゼンチンの子どもなら誰でも食べたことがあるよ」と、浅井さん。
そりゃ秘密だわなー。こんなおいしい生地のレシピを聞いて、記事にしようとした僕が野暮でした(笑) と、店内を見渡すと、とんでもないものを発見! 元アルゼンチン代表、伝説のサッカー選手、ディエゴ・マラドーナの写真&サインが飾ってあるではないかー! なんと、2002年の日韓W杯で来日にした際に、このお店のエンパナーダをデリバリー注文したそうで、送り届けたことがあるんですって。つまり、マラドーナも『エル・カミニート』のエンパナーダを食べたということ! すげぇ~! サッカー好きの僕は大大大興奮!
それにしても、アルゼンチンの子どもなら誰でも食べたことがあるってことは、マラドーナだけでなく、あのメッシも食べて育ったんだろうな…! 想いを馳せていたらとても感慨深く、エンパナーダの味わいが増しました。
エンパナーダの具材は、肉、ハム、魚のすり身、野菜、チーズ、ゆで卵など何でも入れていいそうで、『エル・カミニート』の具材は、アルゼンチン北西地方・サルタ州でよく食べられているものとのこと。また、揚げたタイプのエンパナーダもあるそうです。ブラジルのパステウみたいなものかな?
■南米を食べ歩いたシェフが作る血のソーセージ
『エル・カミニート』は1998年にオープン。シェフの浅井さんは、ホテルオークラでフランス料理を修得したあと、縁あって1983年からアルゼンチン在日本大使館のシェフとして勤務。退職後も南米を食べ歩きながらアルゼンチン料理を学び、トータルで10年ほどアルゼンチンに住んでいたそうです。今食べたエンパナーダも、浅井さんがアルゼンチンにいた10年間で会得した“本場アルゼンチン料理”です!
さぁ、マラドーナも舌鼓を打った、浅井さんの本場アルゼンチンのエンパナーダを食しましたが、せっかくなので、他の本場アルゼンチン料理もいただいちゃおう! ということで、モルシージャ(血のソーセージ)とチョリソー(アルゼンチン風ソーセージ)を追加オーダー。
どちらも豚の耳と背脂を腸のケーシングに入れたソーセージで、上の黒い方がモルシージャ(血のソーセージ)、下の白い方がチョリソー(アルゼンチン風ソーセージ)です。まずモルシージャからいっちゃいましょう。
う~ん、これは滋味深い!
モルシージャには豚の血が注入してあります。レバーパテのような風味と舌触り、そこに細かく刻まれた豚の耳がコリコリした食感が◎! 少し癖のあるソーセージですが、なんとも滋味深い。これもエンパナーダやアルゼンチンワインと合わせて、必ずオーダーして欲しい逸品です。
お次はチョリソー(アルゼンチン風ソーセージ)も。
チョリソーにはチミチュリソース(パセリのソース)をかけて頂きます。僕は自宅でも作るほどチミチュリソースが大好きなんですが、こういう黒いチミチュリソースは初めて見たかも。聞くと、こちらのレシピではバルサミコ酢を使っているんだって! なるほど、普通は白ワインビネガーを使うところを、赤黒いバルサミコを使ったからこういう色なのか! 各家庭・各お店によって、色んなオリジナルレシピがあるんだって。この味、完全にハマりました。
おっ、付け合わせはポテサラかな?
餃子マニアの僕ですが、実ははかなりのポテサラフリークでもあります。相当食べ歩いて、自宅でも「どうすればおいしいポテトサラダが作れるか」と日々、研究している程のハマり具合。こちらのポテサラは、かなり控えめのマヨネーズと、角切りにしたジャガイモを潰しすぎないようにして、優しく和えてあります。自然の素材の味を生かしたさっぱりな味わいでジャガイモ本来の甘味が感じられます。他の具材はニンジンだけというシンプルさもいい。エンパナーダも美味だけど、このポテサラもかなりレベルが高く、手が止まりません!
ぷはー、酸味や渋みは強すぎず、しかしコクのあるアルゼンチンワインを合わせて、エンパナーダ・モルシージャ・チョリソー・ポテサラを堪能しまして、とても満足致しました。
が、エンパナーダとソーセージは、アルゼンチン料理では、いわば前菜のようなものらしい。
マジで? これメインのうまさだよ! アルゼンチンの方は、こうした前菜で食欲を増進させてから、メインの牛肉料理を食べるんだってさ! アルゼンチンの人、よー食うなぁー(笑)
本格アルゼンチン料理を味わえて、お腹いっぱい胸いっぱい。最後にオーナーシェフの浅井さんと記念写真をカシャリ。素敵な笑顔! 今回の『餃子で巡る世界の旅in東京』でも、素敵な餃子に出会えました。サッカー界のレジェンドとも近づけた気分です。そして、世界の餃子や本場の味、何より素敵なストーリーをこうして味わえるのは、浅井さんのような料理人の存在があってこそです。グラシアス、アルゼンチン&エンパナーダ&エル・カミニート&マラドーナ&浅井さん! また来ます!
<メニュー>
エンパナーダ(アルゼンチンの餃子風パイ包み) 540円
チョリソー(アルゼンチン風ソーセージ) 1,200円
モルシージャ(アルゼンチン風 血のソーセージ) 1,200円
ドニャ パウラ マルベック ハウスワイン(グラス) 630円
※すべて税別
編集協力:名久井梨香
撮影:神出暁
過去の餃子旅の模様はこちら
EL CAMINITO
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