ペルーは、スペイン系、アフリカ系、日系が融合する他民族国家。現地で食べられる食事も、グローバルな食文化の交わりで、まさに美食。ペルーは今、世界中が最も注目する美食の国といえるだろう。そんな「ペルー料理」をカジュアルに、サンドイッチというスタイルでいただけるお店がある。
それがランチタイム限定で営業している神宮前のペルーサンドイッチ専門店『サングチェリア・クチ』である。2013年にオープンしたペルー料理レストランの『べポカ』の1階に、ランチのみの時間で営業している。
オーナーの西村春子さん(右)は、「ペルー料理は日本人の味覚にしっくり合うけど、新しさのある魅力的な食材や味の組み合わせを楽しめる料理です。今日はどこで食べよう、イタリアンかな、フレンチかな、それともペルー料理かな…というくらい、ペルー料理をポピュラーにしていきたいという思いがあります」と話す。
『サングチェリア・クチ』の店長でペルー出身の仲村渠(なかんだかり)夏江さん(中央)は、「もっと多くの人に、ペルー料理を知ってもらうため、よりカジュアルなスタイルでサンドイッチ専門店を開きました」と言う。
『べポカ』のシェフであり、共同オーナーの仲村渠ブルーノさんが監修したサンドイッチは、どれも現地では深く愛されているメニュー。特に一番人気の「パン・コン・チチャロン」は、朝食やブランチに食べるものだとか。日本で例えるなら、納豆や味噌汁といった朝食の定番メニューなのだ。
チチャロンは、ごく少量の水で茹でた豚からにじんだ脂で、さらに揚げるという独特な調理法で作られる。蒸し揚げの状態になり、中はふわっと柔らかく、外側はカリっとしている。味付けは塩のみと非常にシンプルだが、豚が自分から出た脂をぐっと吸い上げるので、うまみが凝縮してとてもジューシー。
そして、チチャロンに必要不可欠なのは、サツマイモのフライとサルサクリオージャである。フライにしたサツマイモは、濃厚な甘みとねっとりとした舌触り。これが意外にも豚肉にとっても合う。さらにうまみを相乗させるのがサルサクリオージャ。赤タマネギ・レモン・ペルー唐辛子・コリアンダーを使ったマリネで、この酸味とスパイスの香りが豚肉、サツマイモを上手くまとめあげる。
どれも個性の立った具ではあるが、これが融合した瞬間、「知っているのに、新しい」そんな味に出逢えるだろう。
サンドイッチに使用するパンは、現地ではパンフランセスと呼ばれるペルーのフランスパンが一般的だが、日本にはないため、近いものを探し仕入れを行っている。バゲットとは違い、クリスピーではあるけれど、密度が濃く、もっちりしているのが特徴とのことだ。
現地の味に近づけるため、日本での食材選びの目は厳しい。だからこそ、日本にいるペルー人のお客さんに「おいしかった」と言ってもらえることが何より励みになると仲村渠夏江さんは言う。ペルー出身の彼女にとっても、また懐かしい母国の味なのだ。
半分くらい食べたところで、「唐辛子ソース」を加えていただく。ロコトという辛い唐辛子を使用し、日本人向けにクリームと合わせてマイルドに仕上げている。クリーミーだが後からしっかり刺激がくる。味に変化を与え、これまた食が進む。
ペルーの人が「朝食として食べる」所以が少しだけ理解できた気がする。豚肉、サツマイモで腹持ちが良く、酸味・塩味・甘み、そして豚肉のうまみ、辛みと味覚の要素をほとんど含んだ非常に良くできた料理なのだ。
一度食べてハマったという常連さんも多く、客層は老若男女問わず幅広い。休日は遠方から母国の味を求めて訪れるペルー人も多いという。本場の味を堪能するなら、ぜひランチタイムは「サングチェリア・クチ」、ディナータイムは「べポカ」へ。ペルーの生んだ奇跡の味をファッションの町、神宮前でオシャレに堪能してみては。
(取材・文/カメイアコ)
【メニュー】
パン・コン・チチャロン1,000円(スープorサラダ付)
インカコーラ300円
※価格はすべて税込
サングチェリア・クチ
- 電話番号
- 03-6804-1377
- 営業時間
- 11:45~15:00(L.O.14:45) 定休日 日曜、月1回月曜(不定期)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。