パリのvins vivants(※1)シーンにおいて、もはやレジェンドと言ってもいい男、ピエール・ジャンク(※2)。
彼がヴァカンス前の今年7月にオープンした新店『ACHILLE』(アキッレ)に先日ようやく顔を出すことができた。『HEIMAT』(ヘイマット)時代以来の久々の再会を喜ぶ。遅めの開店祝いにロレンツォ・コリーノ師(カーゼ・コリーニ)のACHILLE 2007を贈った。振り返ってみれば、私がロレンツォ師とそのワインに出逢ったきっかけを作ってくれたのはピエールだった。『VIVANT CAVE』(ヴィヴァン・カーヴ)時代にピエールがCENTIN 2007を飲ませてくれていなかったら、私はロレンツォ師に出逢えていなかった(あるいは出逢いが遅れていた)だろう。
『ACHILLE』の料理は、これまでいくつものレストランを手掛けてきたピエールの軸に全くブレの無い、「素晴らしい素材ありき」のまさにcuisine brute。
私の言うcuisine bruteとは、『飾り気のない見た目ではあるが、手を加えすぎていない、brute(=ありのまま)な料理』のこと。ワインも私好みのストライクゾーンど真ん中のものがたくさん並んでいる。
この日はオーヴェルニュのワインの造り手オーレリアン・ルフォール(※3)との会食だったので、オーレリアンを待つ間、アペリティフで始めようとするものの、一本を選ぶのが難しく、迷いに迷った結果、Aurelien LEFORT, OccitDuReste 2014を選択。
その後、オーレリアンが合流し、鯖の生春巻き的な前菜と合わせて、オーレリアン自身がイチオシのAurelien LEFORT, PRimA 2016で食事をスタート。
これは、ボージョレのガメイで仕込んだボージョレ・ヌーヴォ。フリーランのジュをベースにしていて、ブドウ果実自体は現在もマセラシヨン中。数週間後に絞って、後々また別のキュヴェ(2015年のキュヴェEpinesに相当)としてリリース予定。
続いて、マトウダイの丸ごとオーブン焼と、Aurelien LEFORT & Patrick BOUJU, Pifou 2015。
オーレリアンとパトリック・ブジュ、2人の合作。オーレリアンの古木ガメイのキュヴェSerum 2015とパトリックのキュヴェLulu 2015のブレンド。数本確保しておいて、しばらく取って置きたいワイン。
そして最後の〆の一本は、冷蔵庫の右下にそっと置いてあるのを見つけて、飲みたいなあ(でもさすがにこれはピエールのプライヴェートストックだろうなあ)と思っていたら、なんと最後にピエールがプレゼントしてくれた、Samuel BOULAY, Amme 2007。我が家以外では、なかなかお目にかかることのできない甘口白の最高峰の一本。
最近の造り手の近況、造り手の代替わりの話などをして、気づけば終電の時間となってしまった。
わざわざ行きたいと思わせるくらいのワインが充実したお店がなかなかない今日のパリにおける唯一の例外。
▲オーベルニュの期待の造り手、オーレリアン・ルフォール
<予算>
満足いくくらい食べて飲んで、100ユーロでおつりがくるくらいです。
全てアラカルト。
単品15ユーロ~、魚料理は2人前からで49ユーロ~66ユーロ。
※1.直訳すると「活き活きとしたワイン」となるが、自然派ワイン、ナチュラルワイン、ヴァンナチュールとほぼ同じ意味として使われる
※2.ピエール・ジャンク氏はこれまでに『Racines』(ラシーヌ)、『La Cremerie』(ラ・クレムリー)、『 VIVANT CAVE』(ヴィヴァン・カーヴ)などのワインビストロをオープンしてヒットさせ、それまでパリではあまり飲まれることのなかったナチュラルワインを根付かせた人物の一人
※3.日本での表記は「オーレリアン・ルフォー」とされることが多い、オーベルニュ地方でカルト的人気を誇る造り手
Restaurant ACHILLE(アキッレ)
- 電話番号
- 01 48 06 54 59
- 営業時間
- 19:00~0:00
- 定休日
- 日・月
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。