The Best of Dish 2016
「毎日がヴァレンタインデーだったらいいのに」という歌詞は、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」の切ないエンディングだ。そして、12月の雨の日に亡くなった大瀧詠一さんと同じように、僕はクリスマスが終わっても、一年中クリスマスソングばかり聴き続けている。
今年もポーグスとトム・ウェイツを聴きながら、今年のひと皿を振り返ろう。ただ、東へ西へ食の極みを追い続けた今年は、最上のひと皿を決めるのは酷な選択だ。そこで、全体を1つのコースと考えて、仮想上の今年イチレストランをご紹介したい。
おすすめが1度に楽しめるアミューズ
前菜は中野『蔡菜食堂』の「おつまみセット」だ。焼鳥の名店『バードランド』が銀座に移る前、17年間にわたって和田利弘さんの右腕として働いた蔡さん夫婦が営む小さな中華食堂。
店に入った途端に目に入るホワイトボードには、その日のお勧めがいっぱい。
迷っていると「まず、おつまみセットを頼んでみたら」とアドバイスされる。
たった500円のおつまみセットには、その日のベストが5〜6品盛り付けられている。気に入ったメニューは、改めてひと皿注文してもいいし、これだけでも紹興酒が進むひと皿だ。
化学調味料を使わず、素材そのものの味を引き出す優しい上海家庭料理で最上のコースを始めよう。
<メニュー>
おつまみセット 500円
ねぎワンタン 400円
青菜炒め 850円
トマト卵炒め 1,000円
ボトルワイン 3,500円
甕出し紹興酒 ボトル 2,300円/グラス600円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
蔡菜食堂(サイサイショクドウ)
- 電話番号
- 03-5385-6558
- 営業時間
- 17:00~L.O.22:30
- 定休日
- 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
メインディッシュは、至高の質と究極のホスピタリティー
栄えあるメインは立石『宇ち多゛』の「てっぽう・ボイル1本ずつお酢」だ。平日の口開けから短い時間しか出逢えないひと皿。通常、コブクロと共に盛られる「シンキ」のボイル・ヴァージョン。
ボイルとは、レバ刺し禁止後に登場したレバーのボイルだ。この何でもない串が、極上のフレンチ店で出逢うペーストの如くうまい。もちろん、テッポウのとろけるうまさは言うまでもない。
このひと皿に出逢いたくて、今年は何度も川を渡った。
昔、何度か訪れていた『宇ち多゛』との突然の再会は、今年いちばんの熱狂の季節を連れて来た。ストイックにうまい臓物とストレートの焼酎を求める列は、僕にはたまらなくロマンチックに見えた。
多くの先輩方との会話も、素晴らしいスタッフとの交流も、今年を忘れ得ぬ1年にしてくれた。『宇ち多゛』さん、来年もよろしくお願いします。
<メニュー>
煮込み 200円
もつ焼き(2串) 200円
お新香 200円
梅割り/葡萄割り 200円
ビール(大瓶) 600円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
宇ち多゛
- 住所
- 店舗の希望により住所・電話番号は掲載不可
- 営業時間
- 14:00~19:30頃(売切仕舞)、土曜 午前中(不定)~14:00頃(売切仕舞)
- 定休日
- 日・祝
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
〆のスープは、東と西の幸福な出逢いが生む
食前ではなく、食後のスープは今年いちばんの魅惑、岩本町『アンドシノワーズ』の「バンブーシュート・スープ」だ。次から次へ、見たこともない仏領インドシナ(ベトナム・ラオス・カンボジア)の料理が並ぶコースの終盤を飾る一見地味ながら忘れられない一品。
ラオス北部で食べられている、擂りおろしたタケノコをベースに豚肉と緑の野菜、カボチャを加えたスープだ。フクロタケや山菜も入り、パーサックというラオス魚醤で仕上げる。
徹底的に煮込まれる西洋世界のスーブとは対極にある、サッと仕上げられた清浄で潔い東洋のスープ。餅米と合わせて食べれば、そのまま極上の〆にもなる。
未知の食との出逢いを運んでくれた『アンドシノワーズ』。
予約困難のプラチナシートに、来年は何度座れるだろう。
Indocinoise(アンドシノワーズ)
- 住所
- 〒101-0032 東京都千代田区岩本町 ※詳しい住所は申し込み時にお知らせ
- 営業時間
- 予約メールアドレス:info@indochinoise.com
- 定休日
- ※詳しい情報は申し込み時にお知らせ
- 公式サイト
- http://indochinoise.com/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
コースの最後を飾るのは、パティシェの可能性を提示する革新のデザート
そして、デザートは今年最初に出逢った衝撃。
奥渋の果て、富ヶ谷『PATH』の「メレンゲのキューブ」だ。原太一シェフの料理に寄り添いながら、食のジャムセッションを奏でるパティシェは後藤裕一さん。パリの『キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ』でシェフパティシェを務めた後、帰国。
朝食から夜の立ち飲みまでが楽しめる『PATH』で、日本フレンチの歴史を書き換えた。
もちろん、デザートもたくさんの驚きと新鮮な味覚に彩られている。皿の真ん中にスッと立つメレンゲのキューブ。割ってみると、シャルトリューズ風味のアイスとイタリアンパセリ入りのオイルでマリネされた生姜に包まれた苺が現われる。
素晴らしいコース、秀逸なペアリングを〆るデザートの1皿目。この後にもう1皿、素晴らしい出逢いが待っている。
今この時も進化し続けている『PATH』の未来を見つめ続けたい。
<メニュー>
ダッチパンケーキ 1,200円
自家製ハムとカマンベールのサンドイッチ 980円
京都醸造の生ビール2種 800円
夜のコースは5,800円(+4,200円でワインペアリング)
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です。
PATH
- 電話番号
- 03-6407-0011
- 営業時間
- 8:00~15:00(L.O.14:00)、18:00~24:00(L.O.23:00)
- 定休日
- 月曜・月一回日曜休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。