世の中のカレー好きほどカレーを食べるほうではないし、カレー専門店は年に2~3回くらいしか行かない。
けれども洋食店のカレーライスは大好きだ。
オフィスのある大阪には行きつけの洋食店が数軒あるが、そこではカレーを食べていることが多い。
洋食については、「お好み焼きとうどんと鮨(たまに洋食)は、近所のがうまい」などど『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)のあとがきにも書いたが、食べ慣れた洋食店の「カレーの味」は、わざわざ定評のフライもののランチセットや名物のハンバーグを他所の街に食べに行くのとは、違う味覚なんだと思う。
カレー専門店には出せない味
また、わたしの地元となる大阪キタやミナミでカレー専門店に行かないのは、カレーが食べたくなるとキタなら北新地の『山守屋』、ミナミなら東清水町の『明治軒』に行って食べるからだ。
この2軒の洋食店は「カレーを食べたくなる」と行く場合と、ランチ時に一人でフラッと入って「なんにしようかな」とメニューを広げ、「やっぱり今日はカレーかな」となる2通りの場合がある。
さらに夜は、ポークカツや今の季節ならカキフライといったグリルメニューでビールを飲み、最後にカレーライスを食べるというパターンも多い。
洋食店のカレーはコックさんがひとつずつ丁寧につくってくれる。
これはわたしだけの印象かも知れないが、カレー専門店のカレーはやたらガツンと効いた辛さ具合やインパクト重視の傾向があって、それに比べると洋食店のカレーはおとなしい。
だからこそ大阪のうどんのように「だしが利いている」味の奥行きや各店の個性が出ていておいしいのだ、と思う。
昭和ひと桁から“キタ”で愛され続ける洋食店
北新地の『山守屋』は昭和8(1933)年創業。
毎日新聞社(現・堂島アバンザ)裏のコロッケ屋台がルーツで、敗戦後すぐに北新地の現在の場所に店を移した。
ハンバーグが名物で、サントリーの会長だった佐治敬三さんが常連で、正月には佐治さんがいる山崎工場まで料理を運んだ逸話がある。
『山守屋』のカレーライスは600円。カツカレーは1,200円だ。
カレーショップでは、ふつうのビーフが650円ぐらいだとするとカツカレーは850円ぐらいだ。トッピングされるトンカツは200円ということか。
もちろん専門店ゆえのサービスなんだろうが、安すぎるトンカツは「どんな肉やねん」と信用できないというわけではないが、あまり食指が動かないのだ。
『山守屋』のカツカレーには、人気グランドメニューのポークカツレツがそのまま載っている。
ポークカツレツの値段は750円で、カツカレー-カレー=600円だから、なるほどつけ合わせの分を引いたそのままの値段なのだろう。明解である。
カレー自体は小麦粉とカレー粉にニンニク、ショウガ、玉ネギを炒めてルウをつくる。
ブイヨンは牛からとったもので、とろみはルウ自体の小麦粉由来。
名物オムライスがあるからこそ味わい深いカレー
ミナミ『明治軒』はさらに古くて昭和元(1926)年創業。
オムライスが絶大な人気で、多くの客がそれに牛串カツ3本か5本、銀串(豚ヘレと野菜の串カツ)のセットを注文している。
この串カツセットはカレーにもあって、串カツだけ先にソースをかけて食べ、ビールを飲んでからカレーに移るというパターンが多かったが、「おすすめメニュー」に「カツカレー」(1,050円)が挙がっていたのでそれを注文。
以前雑誌の取材で聞いたのが以下。
客の8割がオムライスを注文する。大量に注文されるそのオムライスは牛のモモ肉をペースト状に煮込んだものがベース。その時出る肉のスープをカレーに使うとのこと。
小麦粉とカレー粉を炒める伝統的な英国流カレーだが、独特の味わいは大量に出るオムライスがあってのこと。
山守屋
- 電話番号
- 06-6341-2446
- 営業時間
- 11:00~14:00、16:30~20:00、土曜11:00~14:00
- 定休日
- 日曜・祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
明治軒
- 電話番号
- 06-6271-6761
- 営業時間
- 11:00~15:50、17:00~22:00(火曜のみ~21:30)
- 定休日
- 水曜(祝日の場合は翌日休)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。