日本酒好き必見! 能登と奈良の限定酒と、のんべえに最高なつまみを扱う日本酒バーが荒木町に誕生

2017年02月23日
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日本酒好き必見! 能登と奈良の限定酒と、のんべえに最高なつまみを扱う日本酒バーが荒木町に誕生
Summary
1.日本酒激戦区・荒木町の隠れ家カフェのような日本酒バー『トーキンラウド』
2.100石酒屋の若き杜氏が醸す「能登末廣 遼」、年間7,000本しか製造されない「倉本」が顔
3.いしるやフグの卵巣の糠漬け「ふぐの子」を使ったつまみを提供

日本酒が飲みたいなら、荒木町へ行け、と言うくらい日本酒バーの多いエリアである。大人の雰囲気あふれる飲み屋街をしっとりと、しかし熱情的に、今宵も美酒を求めて練り歩く。そこに、良い意味で荒木町っぽさのない1軒の日本酒バーを見つけられるだろう。

2016年6月にオープンした『Talkin’Loud(トーキンラウド)』は隠れ家カフェのような風貌。内装はすっきりと、壁にかかったイラストがさりげなく洒落ている。店名は、その世代の人ならピンとくるであろう、かの英国ジャズファンクバンド、インコグニートの曲名や、アシッドジャズ系のレーベル名だ。意味は、「大声で話す」。このこなれた感じもまた良い。

さて、ここでどんな日本酒を飲めるのだろう。

荒木町は地元と話すのは、オーナーの石田太郎さん。日本酒好きが高じて、常連だったという『オール・ザット・ジャズ』で働きはじめたのが飲食の道に進んだきっかけだ。『オール・ザット・ジャズ』では3年修業し、昨年『トーキンラウド』を立ち上げた。

能登をはじめ北陸と奈良のお酒をメインに、東京ではなかなかお目にかかれない日本酒を仕入れている。酒呑みのお祖父様の影響もあり、小さなころから日本酒は身近な存在だったと言う。晩酌はいつも日本酒。仕事を終えて、家族との団らんで、ようやく腰を落ち着けられる。そのお供には、いつも日本酒があったそうだ。

家で飲むお酒だった日本酒をはじめて専門店で飲んだ時、「お米からできているのに、フルーティな味だったり、酸味があったり、色んな味がある」ということに驚いたと話す。米から幾多の味が紡がれる。この面白さを20代の若者にも知ってもらいたいと『トーキンラウド』は誕生した。家族や友人と飲む日本酒の味も、料亭で背筋を伸ばして飲む日本酒の味も、両方を知っている石田さんだからこそ、このスタイルに行き着いたのだと感じる。

しかし、先にも述べたように荒木町は日本酒激戦区でもある。競合店ひしめく中、どのように強みを見いだしていったのか。

「荒木町にある日本酒系のお店は、みんな個性がしっかり立っているんです。同じ日本酒バーでも、一つとして同じお店はなくて、『こういう味が好みなら、あの店が良いよ』、なんて紹介しあうこともあるくらい。ほんと良くしていただいています」と柔らかな表情で語る石田さん。

都内ではあまりお目にかからない北陸、奈良の美酒を飲み尽くす

左から、倉本酒造株式会社「純米酒 倉本」(奈良県)、中島酒造「能登末廣 遼」(石川県)、丸山酒造「無濾過生原酒 織星」(埼玉県)、布施酒造店「純米吟醸あらばしり」(石川県)、櫻田酒造「初桜」(石川県)、櫻田酒造「特別純米酒 大慶」(石川県)、高澤酒造場「しぼり立て生原酒 利右エ門」(富山)だ。確かに目新しいボトルが並ぶ。特に、「初桜」は、その99パーセントがほぼ地元でシェアされているというレアな一本。ファーストコンタクトは水のように軽やかだが、追って、キリっとした辛口の白ワインのような口当たり。どんな料理にも違和感なく馴染む。

『トーキンラウド』の顔としてご紹介いただいたのは、「倉本」と「遼」のツートップ。倉本は年間7,000本しか造られず、ほとんど流通してこない代物だとか。奈良のとある飲食店で食事した際に、「倉本」と出逢い、ぜひうちの顔にしたいと直接酒蔵へ交渉し、特別に卸してもらっているという。

この“こぼれ”が酒の醍醐味でもある。1杯約100mlで500円から800円。1合単位で提供しない理由は、「いろんな日本酒を味わって欲しいから」という思いからだ。

「倉本」はふわっとはなやかな香りが鼻を抜け、米のまるい甘みが舌を包む。一方、「遼」は常温で1年寝かせた熟成酒だ。陽に照らされた透き通った琥珀のような色あい。黒糖のようなコクとすっきりとした喉越しで、はじめて飲む人にも勧められる飲みやすさだ。

能登の酒には、能登の食材を

つまみも、肩肘張らないシンプルなものが魅力だ。まずは、いしるに3日漬けた超濃厚な卵黄がお通しとして、提供される。

いしるとは、能登名産の魚醤のこと。イカやイワシなどを熟成して作られる。フグのいしる干しは、身がほっくりとしていて、いしるの特徴的な香りが後からほんのりと香る。フグのうまみが干すことによって、ぎゅっと濃密になる。いしる漬けのねっとりとした卵黄と一緒にいただこう。

「ふぐの子」を使ったパスタも絶品だ。「ふぐの子」とは、フグの卵巣を糠漬けにした能登名産の珍味だ。フグの卵巣は猛毒のため、一般的にはお目にかかることはない。しかし、糠に3年以上漬けることで、毒が消え、からすみのような珍味として食べられるようになる。毒が消える理由は、未だに解明されていないなど謎も多いが、そのお味は飲んべえを一瞬にして虜にする禁断のグルメなのだ。

ベースはアーリオ・オーリオ・ぺペロンチーノで、そこに「ふぐの子」を組み合わせる。糠の香りは、ガーリックとオリーヴオイルによって中和され、替わりに乳酸菌やアミノ酸など、発酵食品特有のうま味とまろやかさが残る。濃い味付けだが決して重たくなく、「ふぐの子」のプチプチとはじける弾力が軽やかで小気味良い。箸の止まらぬうまさに酒が追いつかないほどだ。

能登の食材と美酒の数々。パンドラの箱を開けてしまったという衝撃と、新たな食の世界に触れ悦びに満ちる。しかも、食後は挽き立てのコーヒーで締めるのも同店流。このギャップがたまらなく、日本酒を飲んだ後のコーヒーがこんなにも体に染み入るものだとは、とまた脳天に悦びが突き抜ける。

「実は日本酒って、万能なお酒だと思っています。師匠の言葉で、「ごはんのおかずに合わないわけない」と僕もその言葉を信じて、色んなことを試しています。赤ワインは牛肉、白ワインは魚介類など、「この料理にはこのお酒」がふさわしいという組み合わせはあるかもしれないですが、そういう点では、日本酒って肉、魚、野菜、スイーツ、どれにも馴染むんです」と石田さん。

あんこ×日本酒、チョコレート×日本酒など、季節やイベントにあわせて、特別メニューも用意するという。先日は、和山椒を混ぜた手作りチョコレートを燗した熟成日本酒でいただくという極上のマリアージュを提案したとのこと。想像しただけでも、甘い余韻に浸れる。スイーツとスピリッツの組み合わせが好きな人にはたまらないのではないだろうか。

全12席。一人ふらっと飲みたい時だけでなく、肝臓の準備が整った2軒目に訪れるのもおすすめ。客の年齢層は、日本酒ビギナーの20代から慣れ親しんだ70代までと幅広い。さらに、「おまかせ利き酒コース」は3時間の利き酒し放題! 銘柄は石田さんに完全にお任せで、わんこそばのように少量ずつ料理と合わせて提供される。13~15種類の日本酒を堪能できるのだ。「『ふぐの子』のパスタ」を含め7品に、食後は熟成酒のお燗とドライフルーツが付く太っ腹なコースだ。

初心者にも飲みやすく、しかし玄人をも唸らせるラインナップは、すでに、荒木町に新たな日本酒伝説を生むであろうと、期待せざるを得ない。

(取材・文/カメイアコ)

【メニュー】
日本酒 500円~800円
フグのいしる干し 680円
「ふぐの子」のパスタ 880円
おまかせ利き酒コース 5,400円(要前日までの予約)
※価格はすべて税込

日本酒バーTalkin’Loud(トーキンラウド)

住所
〒160-0007 東京都新宿区荒木町8
電話番号
03-6380-6836
営業時間
18:00~0:00 定休日 日・祝
公式サイト
https://www.facebook.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92%E3%83%90%E3%83%BCTalkin-Loud-233251397038451/

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