初めてホルモンを食べたのはいつだったか。高校3年生の時にバイトしていた店の先輩方と一緒に焼肉に行った時か、大学に入ってから友人達と焼肉に行った時だったと思います。家では殆ど食べたことがありません。野菜炒めの具として味付けホルモン(「こてっちゃん」ね)が入っていたかいなかったかくらい。ホルモンは外食でのみ食べる特別なものでした。
そしてやはり一緒にビールを飲む。冷たい生ビールを焼肉の煙にまみれながら飲むシアワセは何物に代え難い。余談ですが、私は若い頃はビール一辺倒の人間でした。他のお酒を飲むと即座に泥酔してしまって何度もヒドイ目に遭いました。ビールだったら何杯飲んでも不思議と大丈夫。
それが45歳を過ぎたある日突然ビールが進まなくなりました。神様から「お前が一生の間に飲めるビールの割当量はもう終わったのだ」と云われたような感じ。同じ要領で煙草の割当量も終了です。1日3箱ペースだったヘビースモーカーの私がいとも簡単に禁煙出来たのはそんな経緯があったから。人生はちょっとしたきっかけで大きく変わるものです。
閑話休題。ホルモンに話を戻します。ホルモンを食べるようになってからもディープでマニアックな部位はずっと敬遠しておりました。それがクレイジーケンバンドで全国各地にツアーに出るようになって、色々な食体験を通じて「レアなホルモンもどんと来い」にレベルアップ。
一番インパクトがあったのは岡山でした。「ヨメナカセ」。漢字ですと嫁泣かせ。心臓の血管、フエとかハツモトと呼ばれる部位の岡山での呼称です。ホルモンの世界は奥深く幅広いのだと勉強になりました。
ホルモンは牛だけではありません。豚のホルモンも素晴らしいのです。その素晴らしさをダイナミックに教えてくれたのが名古屋の栄にある『がんこちゃん』。マスターがウチは「とんちゃん屋」と申すくらいですから看板メニューはやはり「とんちゃん」。豚の大腸です。「味噌とんちゃん」と「塩とんちゃん」があります。このお店に来たなら最初にまず「とんちゃん」を焼く。最初に注意点を。気の利いた排煙設備などありませんので、焼き始めたら店内は煙で真っ白になります。お着物や持ち物に煙がたっぷりと沁み込みますので予めご注意ください。
焼き網の上に「とんちゃん」を一気にどひゃーっと置いて、暫く焼いてぷるんと丸まってきたらもう食べ頃。ひと口食べたら新しい自分に生まれ変わっている。ウマい。ヒジョーにウマい。「味噌とんちゃん」の実直な濃厚さに加え、「塩とんちゃん」のモダンで明快なスパイス遣いが秀逸。これは牛だの豚だのを超えて世の中のウマいホルモンの筆頭格であろうと確信するのであります。そして更に感動は続く。コブクロです。これにも塩味と味噌味があります。このコブクロの食感が素晴らしいのです。途中まで強靱な弾性を感じていたのが、ある閾値を超えたところで一気にサクッと弾けるような歯応えに変わる摩訶不思議さ。その一瞬は爽快感すら覚える絶品なのです。味噌味も塩味も味わい深さに文句ナシ。ワタシの「世界ナンバーワンコブクロ」はこれです。そして他にも逸品揃い。ミノもハツもレバーもウマい。そしてサガリなんてもうたまらなく愛しい味がする。ウマウマウー。
このお店の実力はこれだけではありません。野菜もとんでもなくスゴイんです。タマネギ、シイタケ、キュウリ、キャベツ、焼くのも生のも漬物なのもみんな最高。更に魅惑の「がんこ汁」(根菜たっぷり)とご飯にロースを焼いたのを乗せて食べたりなんてしたらもう満足至極、幸福絶頂。お酒も色々あってもうここは高天原。お肉を焼いた煙が雲のように思えちゃいます。何より気持ち良いのがお店のマスターの心意気。メニューに対する愛情と自信に溢れています。だからワタシ達は安心して焼いて食べるだけ。『がんこちゃん』ブラボー。またゆっくりと伺いますね。美味しかったです! 御馳走様でした!
がんこちゃん
- 電話番号
- 052-251-8123
- 営業時間
- 18:00~22:30L.O.
- 定休日
- 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。