キャリアに悩むアラサー女子 VS 毒舌漫画家・江川達也
本音トークが炸裂し時には炎上を生む漫画家・江川達也さんによる「お悩み相談コラム」の連載が本稿からスタート! エンターテインメントからグルメ、教育、自治問題など幅広いジャンルに精通する江川さんが今回担当するのはキャリア相談。
第1回目の相談者は、キャリアと結婚の狭間で悩めるアラサー女子、モエさん(34歳)。IT業界のWEB編集者として活躍する一方で、お付き合いして3年目、1年前から同棲中のカレシとの結婚に不安を抱く。そんなアラサー女子の悩みに、江川さんが自身の言葉に酔いしれながらキャリア指南!
なお今回、相談場所として訪れたのは中目黒にある『鴨とワイン Na Camo guro(なかもぐろ)』。山形の自社養鴨場から直送される新鮮な鴨料理とワインを楽しめる隠れ家レストラン。まずは、鴨すきコースの「鴨胸肉の炙りユッケ」と「鴨串焼き」をいただく。
ひっそりと佇むこちらのお店で、こっそり悩みを打ち明けるモエさん。早速、鴨を食べながら、軽やかとは言えないお悩み相談がスタート!
「仕事に悩んだら、ブラック企業で働け!」
―― 私は関西の大学を卒業後、地元のタウン情報誌で編集者として就職しました。2年後に大手企業に転職して数年後には東京の本社勤務に。その頃は、一流編集者になるためにがむしゃらに働いてて、仕事が楽しくて、楽しくて、仕方ありませんでした。仕事で徹夜なんてザラ。けれど、30代で現在のIT企業に転職して、今の仕事は不満もなければ夢もないという感じ。かつてバリバリに働いていた情熱がまったくありません。定時に帰れて、アフター7を映画や買い物にと充実しているんですが、周りの女友達がバリバリ働いている中、これでいいのか悩んでしまうことがあります。
江川:俺は、「仕事に悩んでいる」という若い人には、「マグロ漁船に乗れ!」と常々言っています。いわゆるブラック企業に入って、自分の一番嫌いなことをしろ、と。そうすれば、だんだんとやりたいことが見えてくるから。
そして、モエさんはやりたいことを20代の時にやりつくして、本当にやりたいことが違ったと気づいたんじゃないですか? それが人生なんですよ。世の中には、やりたいことに対して生涯情熱をもってやり続けることができる人もいるけれど、モエさんは自分がぬるい人間だと気づいてしまったんだね。でも、「幸せはぬるま湯にある!」という言い方もできる。前の会社で仕事をやりつくしたと思っているなら、あなたは幸せですよ。
無駄に残業している人もたくさんいる。でもそういう集団に入ってはいけない!
―― このままのモチベーションのまま仕事を続けてもいいのでしょうか?
江川:世の中には、狂ったように残業して、馬車馬のように働いて快感を得ている人たちがいるんですよ。確かに、ハードに働いている人の方が達成感や幸せ感を感じるかと思います。でも、そこに入っていくと、過労死を増やすだけかもしれない。
食べ物に例えると、次から次へとおいしいものを求めて新しい店を開拓していく人がいるとする。食べたことのない味を初めて体験した時は、すごくおいしいと思うけれど、何度も食べると慣れてきて、最初の感動はなくなるじゃないですか。だからこそ、モチベーションが低いのであれば、快楽を求め続けるのではなく、ささやかな人生を幸せだと自分で言い聞かせなきゃ。
やりたいことと会社が求めるものは別だと思え!
―― 仕事上での悩みは、WEB編集の業務は紙の編集と違って数字が全てだと思え! という風潮。会社に求められているものと、自分が表現したいものに乖離があるんです。
江川:モエさんはWEB編集の仕事をしているけれど、メディア業界は確実にWEBに移行している。確かにクソ記事もたくさんあるけれど、価値基準が「数字」に表現されるのは仕方のないこと。
かつて俺が連載をしていた『少年ジャンプ』でも、読者投票が行われて、それで人気がないと連載は終わってしまう。その中で戦わなければいけないんだよ。「やりたいこと」と「売れるもの」は別ものだ、と思うことだね。
『君の名は。』のように知能を下げるものがウケる時代
―― 数字を追え!ということですか?
江川:俺はかつて教師をしていたので、教育について伝えたいものがあった。けれど、教育=説教というイメージが強いから、どんなに伝えようとしても誰も見向きもしない。むしろ世間が求めているのは説教ではなく「快楽」なんだよ。その中でも、圧倒的に知能を下げているものが多いけどね。でも、そういうもののほうが分かりやすいので大ヒットする。最近でいうと映画『君の名は。』とか(笑)
やりたいことと会社が求めていることのギャップはずっと付きまとうもの。だから、60%くらい会社側が求める要素を取り入れながら、残りの40%で自分がやりたいことを表現するくらいがちょうどいい落としどころじゃないかな。
すべてを捨ててから見えてくるものがある! 俺も人気を捨てた
―― 結局は、やりたいことと売れるものの狭間からは逃れられないんですね?
江川:俺は、デビューして漫画が売れた。けれども、売れるものが傑作かというとそうじゃない。俺が訴えたいことは教育というテーマ。売れるものだけを作って、なんのために俺は仕事してきたんだ、と気づいたんです。そこで、このまま人気をとりにいくか、伝えたいテーマを追求するか、と悩んで結局「人気」を捨てた。人気を捨てるっていうのはなかなか勇気が必要だったけれど、すべてを捨ててもいいという気持ちを持つことは大事だと思うよ。
“逃げ恥”のみくりさんみたいに小賢しいと生きづらい
―― 実は、私、今のカレと結婚を意識しているんですが、結婚のメリット・デメリットを分析してしまって、決断ができないんです。
江川:モエさんは、“逃げ恥”のみくりさんみたいに小賢しいんですよ、分析しちゃうということは。小賢しいと生きづらい。むしろバカのほうが生きやすいのは確かだね。
助言としては、今の与えられた環境の中で自分の一番のベストを選択していくことが肝心。選択肢に対して保留をしながら先延ばしにしている状態を「悩む」と言いますが、モエさんは結婚の選択肢に悩んでいる。それは自分の優柔不断さでしかない。決断するか、先延ばしにして悩み続けるか……それはモエさん自身が決めること!
結婚に踏み切れないのは、いらないものが捨てられないということ!
―― でも、女性は子供を産んだら仕事しながら子育てに追われます。それに比べて、男性は母乳も上げられないし、身体的に女性の方がやらなければならないことが多いです。女性にとって結婚や子育ては理不尽なことばかりに思えてしまい……。まだ結婚に憧れが抱けないんです。
江川:「理不尽」というのは、例えば、人間に生まれてきたと思ったら、年中空爆に襲われて生活もままならない、自分では何もできない、そういう状況を理不尽というんだよ。それに比べたら、モエさんは幸せ以上のなにものでもない。
ただ、何事も考えすぎているのかもしれない。もっとシンプルに、「結婚する・しない」「子供を産む・産まない」のように選択していけばいいだけ。確かに、多様性の時代で情報もあふれているから選択肢が多いのも確か。だからこそ、何かを捨てなくてはいけないんだよ。要は、大事なものを残すということは、いらないものを捨てていくということ!
―― 仕事と結婚と子育てを、同じ枠の中に入れて、見比べながら考えていたから、何を選ぶべきかわからなくなっていたんですね。もっとシンプルに……。そうですね。なんだか、吹っ切れました。私、決断します!
一本筋の通った江川さんのアドバイスを聞いて、モエさんの心のアクが取れた様子。 ようやく、絶品「鴨すき」にも箸をつけたようだ。
そんな料理を食べながら悩みを吐き出せば、江川さんが痛快にその悩みを一蹴してくれる。考えすぎて悩んでしまうのはアラサー女子に限ったことじゃない。いらないものは捨てて、大事なものを選択していけば自分の道が切り開けるはず。
江川さんのアドバイスが悩めるアラサー女子の心を軽くしてくれる一矢になれば幸いです。最後に、かんぱーい、モエさんの未来に幸あれ!
【鴨とワイン Na Camo guro】
何からなにまで鴨づくしの料理をいただけるのが『鴨とワイン Na Camo guro』。個室もあって、隠れ家的にも使えるので、ぜひ押さえておきたい一軒。
写真上は先ほど登場した「鴨すき」。ネギやニラ、エノキなどの野菜とつくね、そして厚めに切られた鴨肉を鉄鍋でじっくりと焼き上げて甘めの割り下で味付けしたもの。自社オリジナルのあかね色の濃厚な卵黄をつけていただく絶品料理。
そして2月1日から新メニューとしてラインナップされている「鴨しゃぶ」(写真上)。鴨のガラとカツオからとった黄金に輝くスープに、薄くスライスした鴨肉をさっとくぐらせていただく自慢の鍋。ネギやクレソンなどたっぷりの野菜とともにさっぱりといただくと、心もお腹も満足すること請け合い!
【メニュー】
鴨すきコース 4,000円
鴨しゃぶコース 6,000円(期間限定)
鴨たたき 葱まみれ 1,000円
鴨胸肉の炙りユッケ 1,200円
フォアグラ鴨メンチ 900円
※価格はすべて税抜
鴨とワイン Na Camo guro(なかもぐろ)
- 電話番号
- 03-5725-3378
- 営業時間
- 17:00〜22:00(L.O.)
- 定休日
- 無
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