#008 2つの顔を持つ優しき魔界、学芸大学
十字路の真ん中で悪魔に魂を売り渡して、凄まじいギター・テクニックと歌を手に入れたという伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソン。まだギターをバリバリに弾きまくっていた時代の若きエリック・クラプトンが当時のバンド、クリームで18番にしていた「クロスロード」は彼の代表作だ。
学芸大学駅の改札からわずか1分、学大十字街の入口に立つ度に、耳元に「クロスロード」のリフが聞こえてくる。東横線沿線らしいおしゃれ商店街の真裏にひっそりと存在する、昭和のまんまのスナック街。
昼間はごく普通の住宅街に見える街角が、夜はそのまま飲み屋横丁に変容する街。自由が丘と中目黒や代官山に挟まれた、一見おとなしい街。学芸大学は昼と夜、2つの顔を持っている。
学芸大学の駅前には、ロータリーもバスターミナルもない。改札口を出たとたんに、東口も、西口も、いきなり細い賑やかな商店街が始まる。果物屋や飲食店、お茶屋さん、アパートや一戸建ての住宅が混在する生活感あふれる街には、まだまだ人の手垢に汚されていない宝石のような空間が存在する。
もちろん、今回紹介する店たちも知られざる至宝だ。
武蔵小山の著名なパン屋と、三軒茶屋のバーガー好きの聖地から独立した2人が作った肉好き感涙のダイナー。自由ヶ丘の名店で修行した、九州の才媛が取り仕切る旬の味覚に満ちたカウンター。まさに悪魔に魂を売っても通いたい学生アパートに潜む2軒のバー。
さて、そろそろ学芸大学の未知の顔を探しに行こう。
肉のうまさにひれ伏すハイウェイ沿いのパラダイス
立石と並ぶ大衆酒場ホッピングの聖地、武蔵小山。その中心とも言える『牛太郎』の隣りで異彩を放つ、人気ベーカリー『nemo』。
近年、渋谷ヒカリエにも出店し、その人気は高まるばかりだ。今や本店になった武蔵小山店には、買ったパンばかりでなくアラカルトで旨い料理を出してくれるカフェも併設、いつも満員のお客たちで賑わっている。
そんな『nemo』の人気コーナーで、6年間に渡りホールを仕切っていた安田太一郎さん。炭火焼のハンバーガーで人気が高いグルメバーガーの名店『ベーカーバウンス』の厨房にいた小出裕也さん…
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