どうも、料理芸人のクック井上。です!
CDやレコードのジャケットだけを見て「これ良さそうだなぁ。」と買う事を“ジャケ買い”と言いますが、成功した時は「ほらね!いいと思ったんだよ。」と嬉しくなりますよね。僕は、飲み屋でも同じような事をします。ルールは簡単、ネットの点数などは検索せず、店構えとその雰囲気だけを見て「ここ良さそうだなぁ。」と入ってみる。そして、お酒とそのお店の看板メニューをオーダーし、自分の目利きはどうだったか、鼻が利いたかどうかを楽しむ。僕はこれを“ジャケ買い”ならぬ“ジャケ飲み”と呼んでるのですが、先日、それがドンピシャ大正解だった! 今回は、“ジャケ飲み”で大発見した、名店中の名店をご紹介しますよ!場所はこちら。
『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界へ迷い込んだような雰囲気が最高でしょ? 東急田園都市線の三軒茶屋駅からほど近く、国道246(にーよんろく)号・世田谷通り・なかみち通りに囲まれたこの一角は、通称“三角地帯”と呼ばれ、所狭しと飲み屋が密集しています。ややもすると、大の大人でも、少しお酒が入ると迷子になってしまいそうなくらい細い道が入り組んでいて、まさに大人の迷路。戦後の闇市が始まりの横丁で、今尚、昭和の雰囲気が色濃く残っています。そんな呑助たちの聖地“三角地帯”で、先日、激ウマの餃子を味わえるお店を発見したのです!! 餃子専門店でも、街中華でもなく、赤ちょうちんがぶら下がる居酒屋『ときわ』というお店です。
創業35年以上、ママが一人で切り盛りする『ときわ』
僕は、餃子マニアでありながら、かなりの赤ちょうちんLOVER。ここらで飲み歩くたびに、イチゲンが入るには少しハードルが高そうなこの店構えが気になっていて「ここ、絶対名店な気がする…」と僕の赤ちょうちんセンサーがムズムズしていたのです。で先日、赤ちょうちんが大好きな尊敬する先輩と三角地帯で飲み歩いている時に「どうしてもチャレンジしてみたいお店がるんですが、行ってみませんか?」と誘ったわけです。そうしたらその先輩も「実は、僕も気になっててん!」と嬉しいお返事。いざ、期待と不安を胸に、ドアをガラガラと開けました。
「いらっしゃーい!」と笑顔が素敵な柔和な雰囲気のママ。店内はカウンター席のみで、一番奥の席に長髪のバンドマンらしき中年の男性、一番手前の席には、雰囲気のある都会的で綺麗なお姉さんがいらっしゃいました。先輩とお酒を頼んで、ママとご常連と乾杯。こちらに入ったいきさつを説明すると「あら、そうなのね。ここは、遊びなれた人、飲みなれた“通(ツウ)”な人しか辿り着かないのよ」との返答。なんだかちょっと嬉しい!
こちら、創業35年以上の歴史があり、以前はスナックだったが20年程前に居酒屋になったとの事。最近は若い経営者のオシャレなお店も増えてきた三角地帯の中では、かなり古株だそうで、ママの醸し出す雰囲気、上質な会話を交わすお客筋の良さから、一瞬で名店であることがわかりました。まさに“ジャケ飲み”大成功の巻だったのですが、実は、大感動した一品があったのです。そう僕の大好物の「餃子」です!!
では、ママのさっちゃん! 初訪店時に僕が大感動した激ウマな餃子、それとビール、ちょうだいなぁー! 初訪店の時に、メニューに大きく書いてあった『手作り餃子』の文字を見て迷わずオーダーしたのですが、あまりの美味しさに食べきる前に「もう1枚」と言ったのを覚えています。あの感動を再び!
カウンター越しにさっちゃんが餃子を焼いている。少しビールで唇を湿らせながら待つとしよう…
「はい、餃子どうぞ!」と優しい笑顔のさっちゃん。
キターーー! 見てください、この美しい餃子を(うっとり)
おー、口に入れる前から、ニンニクのいい香り~! たまらん、たまらん、いただっきまーす!
ニンニクがガツンっ! ニンニクの量は、今まで紹介した店の中でも一番多いんじゃないかな。ニンニクは効いているけど、家庭的で優しいという味。くどくなく、口どけのいい餃子です。バランスが良いんですよね。いやー、こりゃビールが止まらないぜ!! 最近“ニンニク不使用”をうたっている餃子が多い中、ニンニク好きの僕としては、『ときわ』の餃子はありがたい。「今は口臭を消すのに、いい商品がいっぱいあるからね~(笑)」と、ママのさっちゃん。そのご意見、僕も激しく同意します。やっぱり餃子はこうでなくっちゃね! 具材は、豚挽き肉とキャベツ、ニラ、そして隠し味に長ネギと干し椎茸をちょいと。皮は分厚めの大判サイズ。4個入りですが、食べ応え十分です。
▲一人前ずつ、ラップで包み冷凍した餃子
僕が「どうやってこの餃子がうまれたんですか?」と聞いてみると、「もともとは自宅で作った餃子が余ったから、お客さんに振る舞ったの。そうしたら『おいしいから、メニュー化してよ!』と言われたのよ」と、ママのさっちゃん。「そのあと、他のお客さんから、『ひと晩冷凍庫で寝かしたほうが、具が引き締まっておいしいよ』って教えてもらったり、最初は干し椎茸入れてなかったんだけど、長ネギと干し椎茸を入れると、餡にうまみが出て、美味しいってテレビで観たのよ。それから入れるようにしたのよ(笑)」と、ママのさっちゃん。あはははは、なんて可愛い、そしてなんて正直な(笑) 聞いてみたらその番組、僕が料理芸人として初めて出させてもらった、朝の生活情報バラエティーじゃないですかー! なんとも“はなまる”なご縁! 番組で見たり、お客さんの助言を聞いたり、そうやって餃子の味が進化したんだー。ママっていうか、料理に研究熱心なオカンみたいだよ、さっちゃん!!
くぅービールが止まらねー! 最近流行りの餃子バルや、或いは声なきニーズに応えた上品な餃子とは一線を画した、昭和とニンニクが香るノスタルジックな餃子が最高っ! 確かに“ニンニク無し”のニーズもあると思うけど、“ニンニクがっつり”のニーズも相当数あると思うんだけどなぁ。ここにくるお客さんは、ほとんど注文するってさ。匂いが気になる人も「いい商品がいっぱいあるからね~(byさっちゃん)」、ですよ(笑) 気にして食べてない人、損してるよ~!
ニンニクの効いた餃子だけじゃない! コロッケもオカンの味で絶品
『ときわ』の名物メニューがもう一つ、それがコロッケ。こちらもメニューに大きく“手作りコロッケ”と書かれています。オープンの時から変わらず作り続けているメニューですって! 注文しないわけにはいかないね。形はよくある小判型ではなく丸型。さっちゃんが子どもの頃、家庭で食べていたコロッケが丸形だったことに由来するそうです。なんか、そういう話って聞いてるだけで心がホクホクしちゃうね。コロッケだけに(笑)
合挽き肉に玉ネギ、ニンジンを炒めて、そこにジャガイモを混ぜて形にして、餃子と同様、ひと晩寝かすんだってさ。そうすると、しっとり水分を含んだジャガイモがほどよい硬さになって、衣がつけやすくなるとの事ですよ。みんなもお家で真似してみて!
さぁ、じゃこちらも、いっただっきまーす! アツアツ、ホフホフホフ…
あかん、涙が出る味や…。サクサクの衣に、ホクホクのジャガイモ、その中から挽き肉の食感と、玉ネギのしっとり感。自然な甘みが感じられて、もうこれは……男が一番求めているオカンの味! チェーン店では絶対に出てこない珠玉のコロッケ! 常連さんがここにしか通わなくなる気持ち、わかるわー。
ちなみに僕は、せっかくのコロッケの衣のサクサク感を消さないために、ソースはコロッケに直接かけないで、お皿の端に垂らして、そこにコロッケをつけて食べる派。そののちの、時間が経ってしっとりしたコロッケの衣も好き派。結局、どっちやねん!
それにしても、餃子とコロッケって、愛情がないと作れないお料理の二大巨頭じゃないかな。色んなお料理が有るけど、居酒屋のようなお店だったら、手を抜きたいところだよ。でも全然手を抜いてない。むしろ手間をかけてる。僕はお料理するからわかるけど、餃子とコロッケって、マジで本当にめっちゃ手間かかるからね。さっちゃんの愛情、絶品やで~! みんな、その辺りを噛みしめて味わってね~!
嗚呼、みんなに伝わったかなぁ、『ときわ』みたいな手触り感のあるお店で飲むお酒のおいしさ、そして和み感。『ときわ』には未来永劫に残り続けて欲しいなぁ。そこの女性も若人も、大人の迷路、三軒茶屋 “三角地帯”に迷い込んで、『ときわ』に辿り着いてみませんか? そして、絶品“手作り餃子”&“手作りコロッケ”に舌鼓を打ちながら、その味とママに癒されて下さい。そこには人生が豊かになる感動や発見、出逢いと和み、そうそう出せない“味”がありますよ。
そうして“通(ツウ)”への階段を一段昇ったらやることは一つ! 行き慣れたお店やオシャレなお店ばかりじゃなく、ネットの点数などは気にせずに、自分の嗅覚だけを信じて暖簾をくぐってみましょう。そう、ちょっとハードルが高そうな昔ながらのお店に“ジャケ飲み”ね!
街の再開発で、昭和な雰囲気の横丁は各地でどんどん姿を変えているし、今では三角地帯もオシャレなお店がどんどん増えている。けど、お店の歴史はすぐには作ることができないし、こういった雰囲気はそうそう出せないよ。こういうお店はみんなのチカラで残さなきゃダメ! 日本中の横丁よ、三軒茶屋の三角地帯よ、そして居酒屋『ときわ』よ、永遠なれ。
【メニュー】
手作り餃子 450円
手作りコロッケ 450円
ビール中 500円
※価格は税込
ときわ
- 電話番号
- 03-3418-2370
- 営業時間
- 火〜土は19時〜、日曜は18時〜
- 定休日
- 月
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。