中野・ウマすぎて一週間に三度も通った隠れた名店! ごく普通の大衆中華の顔をして、大当たりの店とは?

【知られざるいい店のすゝめ】あの口コミサイトに載っていない店。地元民しか知らない店。裏通りや駅から少し遠くにある店……。街にはまだまだ知られざる店がある!街と店と絡み合ってきた人生の中で食の賢人・松浦達也が辿り着いた珠玉の一軒を紹介する。

2017年03月29日
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中野・ウマすぎて一週間に三度も通った隠れた名店! ごく普通の大衆中華の顔をして、大当たりの店とは?
Summary
1.西武新宿線・鷺ノ宮駅近くにあるごくありふれた大衆中華の店
2.賢人・松浦達也氏が店を見つけてから一週間に三度も通ったというその理由とは?
3.日本酒と密接な関係性がある店名だけに、中華に合う日本酒が大量に、かなり偏り気味にラインナップ

事前に情報もなく、見知らぬ店ののれんをくぐるときの、期待と不安が入り交じる高揚感――。その気持ちは、店を出るときには達成感や充足感に変わっていることもあれば、残念感に打ちのめされていることもある。だがその振れ幅こそが、外食の本質だ。思いもよらぬ喜びを味わうために一定のリスクはつきものであり、だからこそ、当たりを引いたときの歓喜は大きい。

初めてこの店の前を通りがかったとき、思わず「えっ」と二度見してしまった。店頭には品書きや写真が掲げてある。それだけなら、ごくふつうの大衆中華料理店だ。ちらりと中を覗くとそこそこ大型の液晶テレビもある。ところが看板の店名がどうもおかしい。中華料理にまつわる言葉ではないし、地名とも関係がない。人の名前でもなさそうだ。しいて言えば、日本酒のまわりでは聞くことのある固有名詞だが、店頭の品書きとはあまりにかけ離れている。

となれば、確かめなければなるまい!

そう思って、のれんをくぐった。それから1週間でついつい3度も訪れてしまった。というのも、この小さな大衆中華料理店は、飲食物――特に料理があまりに「まっとう」なのだ。例えば、品書きには「オーダーを頂いてから作りますので、多少時間がかかることをご了承下さい」と添え書きが振られている。全16席というこぢんまりした店なのに、ラー油は手作り。仕込みに手のかかる品も多い。麻婆豆腐なども大衆店仕様ではなく、豆板醤がきちんと辛く、仕上げの花椒がしっかり舌にしびれる。ごはんがほしくなる、まっとうな麻婆豆腐なのだ。

↑単品の麻婆豆腐(700円)。

食べ物メニューは「一品」「定食」「おつまみ」が三本柱。麻婆豆腐やホイコーロー、レバニラ炒めといった大衆中華の定番は「一品」で700~800円。ライス、スープ、小皿のつく「定食」で880~980円。「おつまみ」は300~600円の範囲。全16席の小さな店には一人で定食だけ食べに来る学生もいれば、グループ酔客もいる。ここは大衆中華食堂であり、大衆中華酒場でもある。

そしてこの店にはまっとうな酒がある。例えば、ビール好きから絶大な信頼を得るこの一本。最近では置かれた店が増えた印象もあるが、それでもこのビールのある店にいい店は多い。

↑つい店への信頼が増してしまう、安定の赤星(サッポロラガービール)

だがこの店の本領はここから。そしてその本領は店名と密接な関わりがある。

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