新宿から中央線で約4分と好立地な場所、中野。中野ブロードウェイを中心にレトロな雰囲気を残す街は、近年、サブカルの聖地として根付いている。漫画やアートなど国内外のアーティストも集まる、そんな中野に新しいフレンチレストランがオープンした。
中野駅南口から徒歩2分。高級小料理屋を思わせる白い入り口が見える。ここが、2017年1月11日にオープンしたフレンチレストラン『松㐂(まつき)』だ。中に入るとオープンキッチンと一枚板のカウンター。白を基調とした奥行きのある空間で、キッチンのタイルや椅子、照明に洗練されたこだわりが感じられる。
シェフは藤澤進大郎さんと侑子さんのご夫妻。それぞれが人気店や有名な神楽坂の『ビコック』、代々木八幡の『ル・キャバレ』でシェフを務めていた経歴を持つ。店の雰囲気に酔いしれながら、どんな料理が出てくるのか期待が膨らむ。早速、プリフィクスコース(スープ、前菜、メイン)とオススメのワインを紹介しよう。
おすすめのプリフィクスは満足感たっぷりで絶対オーダーしたい!
こちらは野菜のスープ「スープ・オー・ピストゥー」(写真上)。色鮮やかな野菜は、茨城県つくば市を拠点に自然農業野菜の販売や卸売り、個人宅配、配送を行う『ポム・ド・テール』から送られてきたもの。人参、小松菜、大根、白いんげん豆に生のプチトマト、カリッと焼いたベーコンが顔を覗かせる。
岩手県産のホロホロ鳥からとったスープは、サラサラとした口当たりながらも白湯スープのような鶏の濃厚なうまみが感じられる。そこに野菜の甘みが加わり、バランスの良い味わいとなっている。ひと口頬張れば、煮込んで甘みの増した野菜がホロホロと口の中で溶ける。ベーコンの塩気がスープ全体にまとまりを生み出している。上に乗ったフレッシュなプチトマトは濃厚なスープに酸味を足してくれるスパイスのような存在だ。
“しっかり食べるスープ”という印象で、料理の一つとして確立した力強い一品である。「まず、食事をするために心と体を整えてもらいたいんです」と藤澤さん。とびきりおいしいスープで体と心を温め、次の料理へ心が躍る。
続いて、前菜の「アスパラガスのエチュベ」(写真上)。太く肉厚でツヤのあるアスパラガスだ。こちらは長崎県壱岐市の壱岐の島このみ農園の許斐民仁(このみ たみひと)さんから仕入れたものだ。視覚も喜ぶ、美しいグリーンのアスパラガスは、鶏のフォン(だし)を吸わせ、蒸し焼きしている。焼く前にアスパラガスにオリーブオイルを絡めてコーティングし、フォンの旨みをぎゅっと閉じ込めているこだわりの調理法だ。ナイフを入れると皮の弾力を感じ、中から瑞々しい断片が見える。口に入れるとシャキッとした食感と甘みが広がる。
ペコリーノ・ロマーノとオリーブオイル、塩の味付けは、素材のうまみを引き出す絶妙な量で調整されている。定番のメニューでも、ストレートにきちんとおいしいのは、二人の織りなせる技なのかもしれない。
魚も肉もメイン料理は手の込んだ絶品メニュー
プリフィクスでは、メイン料理は魚もしくは肉をチョイスするが、今回は特別に2品をご用意していただいた。肉料理は「ブランッケットドヴォー」(写真上)。「ゆきまる」という岩手県産のジャージー牛の雄の仔牛を使用した料理で、スープ同様、ホロホロ鳥でだしをとっている。そこにジャージー牛が加わり、鶏、牛のだしをベースにクリームソースを作っている。ジャージー牛は、仔牛ゆえの淡白な味わいで柔らかな肉質が特徴だ。肉と野菜に添えられているのはバターライスだ。お米をクリームソースに絡めて食べれば、バターの香りが広がるリゾット風のクリーミーな味わいが楽しめる。
魚料理は「スズキのポアレ、フヌイユ」(写真上)。カリッと焼かれた香ばしい香りに食欲が湧いてくる。ソースは、白ワインにベルモットを加えて煮詰め、生クリームとフェンネルで味を整えている。皮はカリッと香ばしく、白身はしっとりとしており、程よく脂が乗っている。ソースを絡めて食べれば、そのおいしさに思わず笑みがこぼれる。軽く散りばめられた岩塩もいいアクセントになっている。
自然派ワインとのペアリングも楽しもう!
自然派ワインも20種類ほど取り揃えており、料理ともにおいしいワインも楽しめる。藤澤さんの今季のおすすめは、ラベルも印象的なソルガ・ブラン2015(ラ・ソルガ)だ。ラ・ソルガ(写真上・左から3番目)は2008年にアントニー・トルテュルによって立ち上げられたワイナリーで、オーナーであるアントニーはまだ30代前半という若さ。もともと大学で化学を専攻していたが、2001年にトゥールーズで起きた化学工場の爆破事故を目の当たりにし、近代化学に疑問を持ち、自然と共に生きる農業の道に進むことを決意したそうだ。りんごや洋ナシ、蜜等を想わせる熟れた香りにハーブのニュアンスがあり、微炭酸。香り同様に熟れた甘酸っぱくジューシーな果実味とまろやかな酸とホロ苦さが心地良い印象だ。また、アントニーがロックバンドをしていたこともあり、ラベルがロックなテイストで面白い。
ご主人の進大郎さんは、調理科のある高校に進み、そこから料理の世界へと入っていった。その経歴は長くフレンチを中心に歩まれている。「小さい頃から台所に立つのが好きだった」と話す。
街の定食屋さんのような存在でありたいというコンセプトで、しっかりとおいしい料理を気軽に楽しめる店だ。
メニューは、随時、二人でアイディアを出し合って決めるそうだ。今はお客の反応を見つつ、コースのメニューなど試行錯誤している時期だと話す。
そうそう、気になったのが、テーブルにセッティングされた可愛いグラス。こちら、侑子さんのコレクションでパリのアンティークのグラスだ。
お気に入りのコレクションのグラスは、席に着いた時に気持ちをほっこりさせる。この遊び心がさらに料理を楽しめるアクセントになっている。また、店内の半分はゆったり食事ができるように床をあげ天井も低くしており、入り口側はカジュアルに使えるように天井も高くハイチェアにしているそうだ。
店内も藤澤さん自らデザインに関わり、キッチンのタイルの形やカウンターの木材、椅子までデザイナーさんとともに考え、作ってもらったというこだわり。「座る席によって景色や雰囲気が変わるので、席替えしても楽しいですよ」と藤澤さん。店内の雰囲気に酔いしれながら、料理とお酒を楽しむ至福の時を体感できる。それが『松㐂』なのだ。
【メニュー】
メニュー
プリフィクスコース(スープ、前菜、メイン) 4,500円
ワイン(グラス) 900円〜
※価格は税込
松㐂(まつき)
- 電話番号
- 070-3274-3730
- 営業時間
- 18:30~24:00(L.O.23:30)
- 定休日
- 不定休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。