パサつきがちな鶏胸肉が生まれ変わる! 調理技法「ブライニング」とは?
鶏胸肉を驚くほどジューシーにしてくれる、「ブライニング」という調理技法をご存じだろうか?
「ブライニング」とは、海水に近い濃度の水に肉を漬け込むことによって肉の筋繊維をやわらかくし、筋細胞内に水分を吸収させるというテクニック。
この技法は、パサつきがちな鶏胸肉にも応用可能。鶏胸肉が本来もっているよりも多い水分量を保持させ、加熱したときにもパサつかず、しっとりジューシーに仕上げてくれるのだ。ブライニングをすることによって、焼いたときの”水分量の損失”は15%近く削減されるとも言われている。
このテクニックを応用すれば、いつもの鶏胸肉が見違えるほどにおいしくなり、まるでプロのような味わいに仕上げることが可能。ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。
気になる「ブライニング」をさっそく実践!
「ブライニング」で使用するのは、水と塩だけ。塩は海水に近い濃度になるよう、水の量に対し3%の塩を入れる。
基本的には、この2つの材料を混ぜ、鶏胸肉を2時間漬けておくだけ!
ただ、ブライニングした鶏胸肉を使って作る料理によっては、香味野菜を入れてもOK。和食ならショウガのスライス、洋食ならスライスニンニクやネギなどを入れれば、肉をやわらかくしながらも風味漬けと臭み取りの役割も果たしてくれる。一石二鳥のテクニックなので、作りたい料理に合わせて使い分けるのがオススメ。
それではさっそく、ブライニングの基本レシピを見ていこう!
■材料(作りやすい分量)
・鶏胸肉 … 1枚
・水 … 1000ml
・塩 … 30g
■作り方(調理時間:5分 ※漬け込み時間は除く)
① 密封容器に水、塩を入れて混ぜ、塩を溶かしたら鶏胸肉を加える。
② 蓋をし、冷蔵庫に2時間おく。
③ ②の鶏肉を取り出し、キッチンペーパーなどで水気をふき取る。
水気をふき取ったら、あとはいつもどおりに調理するだけでOK! まずはフライパンでソテーして食べてみてほしい。いつもよりもふっくらジューシーに仕上がった鶏胸肉のおいしさを、ストレートに感じることができる。
それでは、ブライニングの基本を押さえたところで、オススメのアレンジレシピを紹介していく。
【1】パサつき知らずでカリッとジューシー!「鶏胸肉のハーブレモン風味から揚げ」
鶏胸肉でつくるとパサつきがちな唐揚げも、「ブライニング」した鶏胸肉を使えばしっとりジューシーでやわらかな仕上がり。すでに塩味がついているため、ハーブを揉み込むだけでも十分においしい。衣に粉チーズを入れて、香ばしく仕上げているのもポイントだ。
鶏胸肉のジューシーさを存分に楽しめるよう、揚げる際はひと口サイズには切らず、豪快に丸ごと1枚に衣をまぶして仕上げるのがオススメ!ひと口噛む度に溢れ出る肉汁をぜひ堪能してほしい。
■材料(1人分)
・ブライニングした鶏胸肉 … 1枚
・タイム … 1本
・パセリ … 3g
・[A]小麦粉 … 大さじ2
・[A]片栗粉 … 大さじ1
・[A]粉チーズ … 大さじ1
・レモン(くし切り) … 適量
■作り方(調理時間:20分 ※鶏肉を休ませる時間は除く)
① Aの材料をすべて混ぜておく。
② タイム、パセリはみじん切りし、鶏胸肉の全体にすり込んで20分おいたら、①を全体にまぶす。
③ 鍋に揚げ油(分量外、適量)を180度に熱し、②をキツネ色になるまで4〜5分ほど揚げ、最後に火を強めて10秒ほど揚げ、カリッと仕上げる。
④ ③を1.5cm幅に切り分けて器に盛り、レモン、パセリ(分量外、適量)を添える。
【2】驚くほどにふっくら! 卵黄をからめて食べる「ふんわり鶏胸肉の親子丼」
鶏胸肉で作るとパサつきがちな親子丼も、ブライニングした鶏胸肉を使用すれば驚くほどふっくら! やわらかな仕上がりになる。
とは言え、煮すぎはかたくする原因となるため、鶏胸肉の煮込み時間は2〜3分程度を目安にするのが上手に作るポイント。
食べるときは、卵黄を鶏胸肉とご飯によく絡めて。ふんわりとろ~りの至福の味わいを堪能してほしい。
■材料(1人分)
・タマネギ … 1/4個
・青ネギ … 適量
・ブライニングした鶏胸肉 … 100g
・卵 … 1個
・[A]だし汁 … 60ml
・[A]醤油 … 大さじ1/2
・[A]きび砂糖 … 大さじ1/2
・[A]酒 … 大さじ1/2
・ご飯 … 150g
・卵黄 … 1個
■作り方(調理時間:10分)
① タマネギは薄切りする。青ネギは小口切りする。ブライニングした鶏胸肉はひと口サイズのそぎ切りにする。卵は溶きほぐす。
② フライパンにAを入れて強火で熱し、煮立ったら中火にしてタマネギを加えひと煮立ちさせる。
③ 鶏胸肉を加えて火が通るまでさらに2分ほど煮る。
④ 溶き卵を中心からまわし入れたら蓋をし、30秒〜1分ほどおいて半熟状態になったら火を止める。
⑤ 器にご飯を盛って④をのせ、中央に卵黄をのせる。
【3】レンジ加熱でもしっとり! 火を使わない「濃厚胡麻ダレバンバンジー」
鶏胸肉はレンジ加熱するとパサつきがちだが、ブライニングした鶏胸肉ならしっとりとジューシーな食感をキープできる。レンジ加熱でパサつかせてしまった経験がある人なら、きっとこの違いに驚くことだろう。
やわらかな仕上がりの鶏胸肉には、濃厚な胡麻ダレがよく合う。濃厚ながらもトマトやキュウリの清涼感で後味はさっぱり、暑い夏にオススメのアレンジだ。
■材料(作りやすい分量)
・ブライニングした鶏胸肉 … 1枚
・トマト … 1個
・キュウリ … 1/2本
・長ネギ … 8cm
・[A]白練りゴマ … 大さじ2
・[A]酢 … 大さじ2
・[A]醤油 … 小さじ2と1/2
・[A]砂糖 … 小さじ2
・[A]ラー油 … 小さじ1/3
・[A]おろしショウガ … 小さじ1/2
■作り方(調理時間:10分)
① 耐熱皿にブライニングした鶏胸肉をのせてラップをし、600Wのレンジで5分加熱したら冷水にとり、細かくほぐす。トマトは暑さ5mmの輪切りにする。キュウリは太めの千切りにする。長ネギはみじん切りする。
② Aは混ぜ合わせる。
③ 器にトマト、キュウリ、鶏胸肉を盛り、Aをかける。
鶏胸肉が驚くほどジューシーに仕上がる「ブライニング」の方法とアレンジレシピを紹介した。特別な材料や技術がなくても、まるでプロが作る料理のような味わいに仕上げることができるので、ぜひ試してみてはいかがだろうか。
■プロフィール
五十嵐ゆかり(管理栄養士・料理研究家)
1987年生まれ、千葉県出身。ゆるく気軽に取り入れられるグルテンフリーレシピや減塩でもおいしく作れる料理のコツなど、日々の暮らしに取り入れやすい健康レシピを提案している。美容や健康にうれしい要素を取り入れたレシピを得意とする。企画、レシピ・商品開発、執筆、メディア出演、講演、イベント出演、料理教室など、多方面で活動中。魅力発信☆むつざわ未来ラボの一員としての出身地の千葉県長生郡睦沢町のPR、PAKUTASOフリー素材モデルとして福岡県大刀洗町のPRに携わるなど、地域活性化活動にも取り組んでいる。
著書に「食材の栄養素を最大限に引き出す便利帖」や「発酵いらずのちぎりパン」、「塩レモンでつくる基本のおかず」など。
ブログ:http://lineblog.me/igarashiyukari/
Twitter:https://twitter.com/igarashi_yukari
HP:http://foodcreativefactory.com/
フードコーディネート・スタイリング:金英貨(ヨンハ)