神戸市営地下鉄西神・山手線、県庁前駅より北へのぼると、日本庭園や国指定重要文化財の異人館、旧ハッサム住宅がある「相楽園」が見えてくる。その正門から北西に3分ほど歩いた住宅街に、2017年4月19日に誕生したのがフランス家庭料理店『Mirabelle(ミラベル)』だ。
同店を切り盛りするのは、ともに兵庫県出身のオーナーシェフ・藤原義大(よしお)さんと奥様の美也子さん。
藤原さんは、姫路市のフランス料理店を経て、23歳の時にフランスに渡り、『ミッシェルロスタン』といった名店で研鑽を積む。帰国後は、湯河原にある『ホテル ラ シェネガ』、地元の兵庫県に戻ってからは、今はなき三宮のレストラン『ボンヌ・ビエール』などでフランス料理を手掛けてきた。
フレンチの敷居を低くしたアットホームな雰囲気が魅力的
これまで重ねてきた経験を活かして、自分流のお店を持ちたいと思ったことから満を持して独立することとなった。
「住宅街にあるため、入りやすく馴染みやすさにこだわりました」と、店内は明るくナチュラルにコーディネート。フロアとキッチンを隔てる鮮やかなオレンジ色の壁面が目を引き、足元はヨーロッパの街並みを思わせる石畳調に仕立てている。
「私の家でもそうだったのですが、子供が小さいうちは外食の選択肢としてフレンチを避けてしまいがちですよね。だから『ミラベル』では、フレンチの敷居を低くして、小さなお子さまを連れて来やすい家庭的な雰囲気にしたいと思いました」と奥様の美也子さんは言う。そんな藤原さん夫妻の思いをカタチにした、アットホームなお店で食べられる料理をピックアップしてご紹介していこう。
野菜も魚も肉も生産者のこだわりが見えるものを使用する
まず、『ミラベル』で使用する野菜は、兵庫県内を中心とした契約農家が育てた有機、無農薬、減農薬栽培など安全性にこだわり、子供にも安心して食べさせられる野菜を扱う『はっぱや』から主に仕入れている。
一方、魚類は淡路島の福良漁港から直送されるものを使用。「活け越し」といって定置網漁でとれた魚を生け簀で一晩泳がせてから締めており、ストレスの少ない、身の引き締まったものを使用している。
鶏肉は、専門店から仕入れる朝挽きの鶏がメイン。なんといっても新鮮なため、おいしさはもちろんのこと、鶏ガラからとるスープは、アクが出にくく、独特の臭みが少なく、優しい味に仕上がる。
プリフィクススタイルで好きな料理をチョイスしよう!
「迷う楽しみ、選ぶ楽しみをどうぞ」とランチ・ディナーともに、前菜とメインはそれぞれ2~3皿から、お好みの一皿ずつをチョイスするプリフィクススタイルを採用しているのが特徴。
写真はランチで、日替わりの前菜のひとつ「初夏の野菜のテリーヌ」(写真上・右)。朝挽き鶏の挽肉をベースに、新ニンジン、新タマネギ、ヒラタケ、ズッキーニ、新ゴボウを組み合わせた色鮮やかな一皿だ。湯煎ではなくオーブンで焼かれているため、野菜の水分がほどよく抜けて、野菜が持つ甘みや、シャキシャキ・シャクシャクといった食感など、それぞれの個性が見事に発揮されている。
ランチのメインは「牛ステーキ トマトとバジルのソース」(写真上・手前)。ステーキにはフラップミートと言われる希少な部位を使用。赤身主体で、ほどよく霜降りの入った肉質は、タレやスパイスに馴染みやすいという。その牛肉が絶妙な火加減でロゼ色の状態に焼き上がっており、赤身のうまみをたっぷりと堪能できる。トマトとバジルソースは爽やかなあと口で、これからの季節にもぴったりだ。
さらにランチにセットされるバゲット(写真上・左)にも注目してほしい。こちらは、同じ神戸の和田岬にある下町情緒あふれるレトロな笠松商店街の『BOULANGERIE MAISON MURATA(ブーランジェリー メゾン ムラタ)』から仕入れたもの。本場パリの名店で腕を磨いた新進気鋭のパン職人、村田圭吾さんが作るバゲットは、外はカリッと、中はモチモチ、かむほどに味わい深くなり、そのまま食べてもおいしいし、藤原さんの作るソースとの相性も抜群だ。
素材の味をしっかり感じる料理は丁寧に調理していることの証
一方、こちらはディナーの前菜「バルバリー種の鴨とゴボウのサラダ」だ。秋田県の郷土料理「鴨鍋」からヒントを得てフレンチ風にアレンジ。スライスした鴨と、ニンニク風味で味付けした柔らかな新ゴボウを交互に重ねており、鴨とゴボウを一緒にして食べると、噛むほどに溢れ出す鴨のうまみと甘み、ゴボウのシャクシャクした食感や強い香りが、一体となって口の中に広がる。
ディナーのメインでチョイスした「鳴門の鯛のクリーム煮」。約5時間かけて魚のアラからだしをとり、一緒に煮込む野菜の味をスープに染み込ませている。このだしに生クリームを加えたスープで調理された鯛は、ホクホクとした鯛の食感や甘みがしっかり浸透しており、優しさと深みが同居する。
どの料理にも共通して言えるのは、素材の味が生かされた味わいだということ。そんな料理に合わせて、ワインはスペイン、チリ、フランス、イタリアのものをセレクトしている。
またカジュアルに楽しんでもらいたいため、グラスワインはランチタイム300円~、ディナータイム500円~、ボトルは3,000円前後~とリーズナブル。ご紹介したランチ、ディナー以外に、アラカルトも多数ラインナップされているので、ちょっと小腹が空いたら訪れるような使い方もできる。
和やかな藤原さん夫妻の人柄が、そのままアットホームなお店の雰囲気となっているため、おいしい料理に舌鼓を打ちながら、心くつろぐ時間を過ごせそう。お友達や同僚同志はもちろん、小さなお子様がいる家族、両親との団らん、3世代で訪れてもくつろげる『ミラベル』へぜひ足を運んでみてほしい。
(取材・文/茶野真智子、撮影/前田博史)
【メニュー】
ランチ 本日の二皿 1,500円
ディナー 本日の二皿 2,800円
豚のリエット 800円
あわじのスズキのカルパッチョ 1,200円
自家製塩豚の春キャベツ煮 1,500円
フランス産ひな鳥のロースト 1,800円
グラスワイン ランチタイム300円~、ディナータイム500円~
※価格は税抜き
Mirabelle(ミラベル)
- 電話番号
- 078-599-8171
- 営業時間
- 11:30~14:00、17:30~21:00
- 定休日
- 不定休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。