ポルトガル料理の名店『クリスチアノ』が”煎餅もんじゃ”の新店をオープン!
視界を遮る高い建物がなく、平坦な路地裏のそこかしこにカフェやビストロ、レストランが点在する人気のスポット、代々木公園エリア。
なかでも、2010年にオープンしたポルトガル料理店『クリスチアノ』に続いて、エッグタルト専門店『ナタ・デ・クリスチアノ』、タイ料理店『パッポンキッチン』、そしてポルトガル魚料理『マル・デ・クリスチアノ』といった話題店を次々と手掛けてきた佐藤幸二シェフは、同エリアの魅力増に貢献した立役者の一人といえるだろう。
そんな佐藤氏が今年3月、人気ビストロ『PATH』の向かいに新店をオープンした。真っ白い暖簾のかかった入口には、テイクアウト専用のお惣菜がすらり。なんとここは和食のお店。その名も『おそうざいと煎餅もんじゃ さとう』というから、意外性は十分だ。
ショーケースには、おにぎりやフランクフルトといった食事のメインになるものから、旬の野菜を使ったサラダや揚げ物、佐藤シェフの奥さまの故郷、愛知県西尾市の郷土料理「煮た」など、やさしい味の家庭料理が常時約20種類ほど並ぶ。
そして、ショーケースの右脇にもんじゃ店の座敷へと抜ける細い通路が。その壁面には、これまでの店舗同様、及川キーダさんによる洒脱なイラストが描かれていて楽しい気分になる。
「タイもんじゃ」に「ロシアもんじゃ」! 全く新しい無国籍もんじゃを堪能しよう
それでは、注目のもんじゃ焼きメニューをご紹介しよう。「海鮮」や「チーズ」、「たらこ」といったスタンダードなタイプのほかに、同店では日替わりで「本日の変わりもんじゃ焼き」を7種類ほどラインナップする。ここにぜひ注目を!
そこには、ヨーロッパやアジア、オセアニア各地の風土が持つ魅力を料理という形で表現し、古今東西の発酵食品を自在に使いこなしてきた佐藤シェフならではのミラクルワールドが広がっている。
まずご紹介するのは、変わり種シリーズのうちの一品「ロシアもんじゃ」(写真上)。牛すじ、赤キャベツ、ネギやセロリに加えて、茹でたビーツがゴロゴロと入ったピンク色のもんじゃは前代未聞。
てっぺんに見える緑色のスパイスは、ふわっと広がる甘い芳香が特徴で、インドカレーには欠かせないカスリメティとマスタードシード。いったいどんな味になるのか、興味深々!
「もんじゃは、おやつ感覚で食べる関東地方のソウルフード。目的は”食欲”じゃなくて、延々と鉄板をつつきながらおしゃべりをしたり、お酒を飲んだりするリラックスした時間なんです」と語る佐藤シェフ。
とはいえ、もんじゃをある程度おいしく仕上げるには多少のコツが必要。ディナータイムには、注文した全てのもんじゃをお店側で焼いてくれる(※ランチではセルフサービス)ので、手さばきのコツをじっくり眺めて研究してみるのもいい。
同店で提供するもんじゃは、町屋や浅草などの地でポピュラーな「煎餅もんじゃ」。ドーナツ状の”土手”を作る月島風と違って、液体部分をパリパリの煎餅状に焼き上げてから、それをつまみにゆっくりと残りのタネを焼いたり、こねたり、団子状に仕上げて楽しむスタイルが特徴だ。
焼き方としては、まずは鉄板にじゅわ~っと生地を落とし、手元に具材の部分を、後方に液体部分を流し込んだら、ヘラを使ってリズミカルに具材を刻んでいこう。
全ての中身が均等なみじん切りになるまで刻み、ある程度火が通って全体が煮詰まったところで、上から白ゴマと黒ゴマ、白コショウをまんべんなく振りかける。
そして、仕上げにサワークリームをたっぷりと乗せれば調理は終了。ボルシチさながらの「ロシアもんじゃ」が完成。
この間に、鉄板後方に流してパリパリの煎餅状に焼き上がった生地を、ヘラで一気にはがし取っていく。粉は、系列店『ナタ・デ・クリスチアノ』のエッグタルトと同様の配合で、国産の超強力粉と薄力粉、全粒粉の微細粉をミックスしている。
これぞ、“煎餅もんじゃ”!お好みの食べ方でどうぞ
パタン、パタンと1回から2回ほどたたみ込んだ煎餅はお皿へ。つまんで食べてみると、具材のだしがきいたソース煎餅のような味わいでとても美味。手でちぎっておつまみにしてもよし、あるいは、仕上がったもんじゃのふりかけとして使ってもよし。お好みでアレンジをどうぞ!
このピンク色の「ロシアもんじゃ」、切りイカや干しエビといったもんじゃの定番食材に加えて、生地全体にスパイスの風味やマイルドな牛すじのコクが染み渡っていて、実に奥深い味わい。
トッピングのサワークリームにより、いわゆるチーズもんじゃのようなこってり感がありつつも、酸味、甘み、歯ごたえ、香りのバランスが絶妙で、もはやファストフードの粋を超えて、かなり高級感のある料理へと昇華している。
そんな「ロシアもんじゃ」と合わせたいのは、キリリと冷えたポルトガルの微発泡ワイン「ヴィーニョ・ヴェルデ」。“緑のワイン”を意味するだけあって若々しい飲み口が特徴で、樽香やブドウの果実感はかなり淡く、とても爽やか。とくにオリエンタルな料理には非常にマッチするのでオススメだ。
そしてもう一品、徐々に蒸し暑くなるこれからの季節にぜひトライしてほしいのが「夢の国タイランドもんじゃ(以下、タイもんじゃ)」(写真上)。
エビ、ナス、パクチーといったタイならではの食材に、バイマックル(コブミカンの葉)やパクチーラオ(ディル)、パクチーファラン(ノコギリコリアンダー)、焼き米、自家製の海老味噌などを合わせてあり、エスニック好きにはたまらない味となっている。
実はこの「タイもんじゃ」で重要な役割を果たしているのは、ナス。同店が福岡県柳川市から産地直送で仕入れているという「中島ナス」は、ナンプラーやパクチーの強烈な風味にも負けない豊かな味わいで、細かく刻んでもなお弾力とうまみが残る。
この「中島ナス」が食べられるのは都内でもここだけ。お惣菜のナスにも同じものが使われているそうなので、ぜひ味の違いを確かめてみて。
このタイもんじゃには、ホッピーを添えて、下町気分を盛り上げてみたい。う~ん、暑い季節にピッタリの最高な組み合わせ!
ほかにも「エポワスチーズと生ハムもんじゃ」や「シラトリ(醗酵鶏と白子)」、「納豆ゴルゴンゾーラもんじゃ」「蕗味噌と赤魚酢もんじゃ」など、変わり種シリーズは気になりすぎるメニューぞろい。新作も続々と用意されているそうなので、要チェックだ。
もんじゃが焼きあがるまでのおつまみに、お惣菜も充実
もんじゃが焼けるまでの間、お惣菜をつまみに一杯やりながら待つのが同店オススメの食事スタイル。写真は上から時計まわりに、「ほうれんそうの白和え」「大根の煮た」「ウスター団子」。お惣菜は単品注文のほか、3種盛り、5種盛りからお好みのものをチョイスできる。なお、店内は、テーブル3卓のみなので、来店時は必ず予約してほしい。
佐藤シェフが作る店は、ほかのどの店にも似ていない。それは、”この街にこんな食事シーンを作りたい”という強くて明確なイメージが佐藤シェフのなかにあるからだ。
かつて、昭和の街角を歩けば、どこにでもあったお惣菜屋さんや駄菓子屋さん。そんななつかしい食の姿を、世界各国の無国籍テイストを織り交ぜて再現してみせた『おそうざいと煎餅もんじゃ さとう』。昨今話題の集まる富ヶ谷エリアが、老男若女にとってますます魅力的な街になっていくのは間違いない。
(写真/岡本 寿)
【メニュー】
ロシアもんじゃ 1,400円
夢の国タイランドもんじゃ 1,500円
深町(蛤)もんじゃ 1,400円
発酵羊挽肉もんじゃ 1,400円
紀州梅干しもんじゃ 1,200円
惣菜3種盛り 900円
惣菜5種盛り 1,500円
※価格は税抜
おそうざいと煎餅もんじゃ さとう
- 電話番号
- 03-6804-9703
- 営業時間
- 12:00~15:00、18:00~22:00(お惣菜は9:30~22:00)
- 定休日
- 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。