一年を通して国内外から観光客が多く訪れる京都で、最近ブームの一つとなっているのが「朝食」。「こんな贅沢なものを朝から」「有名な料亭がプロデュース」「京都らしいおばんざいがたくさん」など、心をひきつける趣向が各店で凝らされている。
そんな中、祇園に2017年4月にオープンした『喜心』は、まさに日本らしい朝食を食べることができる一軒だ。
“お母さん”の朝食のような愛情たっぷりの朝食
こちらの『喜心』は、お母さんが家族のために作るような心のこもった「京都の朝食」を日本と世界へ届けたいという思いからプロジェクトをスタート。
京都の名店『草喰なかひがし』の主人である父、中東久雄さんのもとで料理を学び、現在はニューヨークを拠点に日本の食文化を発信し続け、国内外からも注目を集めている三男・中東篤志さんが料理監修を行った。
のれんをくぐると広がるのは、カウンター10席とテーブル6席からなる空間。シンプルでスッキリとした和モダンな店内では、落ち着いた気分で食事ができそう。カウンター越しに、料理人が作る様子を眺めることができる。
メニューは、向付、ご飯、汁もの、めざし、漬物からなる2,500円のコースのみ。ちなみに、朝食と言っても、7時30分~14時まで食べることができるのがうれしい。
まず向付として供されるのが「汲み上げ湯葉」(写真上)。「朝一番で召し上がるものだからこそ、まずは濃厚な甘みで目を覚ましてもらいたい」と、中京区の『ゆば工房 半升』で作られる3種類の大豆を使った湯葉を使用。
醤油などをかけなくても、濃厚で滋味あふれるコクと甘みを堪能できる。添えられたフレッシュのヤングコーンはパリポリとした食感が心地いい。
ふんわり炊き立てご飯はそのままでもおいしい! 卵かけご飯も最強の朝食
おかわり自由のご飯は、『草喰なかひがし』と同じく、おくどさん方式を採用。ゲストが入店してから、山形県産「つや姫」を『湖東焼・一志郎窯』で生まれた土鍋で約15~20分間かけて炊き上げる。
ご飯が炊きあがると、料理人が土鍋の蓋を取って中を見せてくれる演出も。ふわりと立ち上がる湯気と甘い香りに食欲が刺激される。
飯椀にちょこんと盛られたご飯は、水分をたっぷりと含んだもちもちとした食感。食べている間はずっと弱火で蒸らされているため、2杯目はふっくらとした味わい、3杯目はコシがしっかり、4杯目はパリパリとした香ばしいおこげと一緒に……と、味と食感の変化を楽しみながら味わえる。
プラス350円で卵をトッピングして、卵かけご飯にアレンジしてみるのもオススメ。京都大原の美しい自然に囲まれた『山田農園』で、平飼い飼育された有精卵「野たまご」を熱々のご飯にオン。
ぷっくりとした艶やかな色の濃い黄身は、見るからに美味しそう! チョンとお箸で潰してご飯と絡ませれば、優しい甘みに箸が進むこと請け合い。
汁物は3種類から選択可能。写真上は「京白味噌の豚汁」。昆布と熟成豚肉を煮出してとっただしに、京都上京区の『しま村』の白味噌をといた一品だ。
すっきりとした甘みと、だしの滋味深い味わいが五臓六腑に染みわたり、起き抜けの身体をやさしく起こしてくれる。口に入れるとたっぷりの水分が広がるグリルした新タマネギ、シャクシャクとした食感の九条ネギなど具材もたっぷり入っているため、満足感はひとしお。
その他、魚の混合だしとエビ・アサリのうまみをたっぷりと堪能できる和風海鮮トマトや、ベジタリアンに人気の野菜のポトフもあるので、お好みでどうぞ。
おかずは素材の味を存分に引き出したシンプルなお料理
錦市場にある『山市商店』のウルメイワシを使っためざしもシンプルで美味。
こちらのイワシの丸干しは、新鮮なイワシの瑞々しさを生かすよう柔らかく干されているのが特徴で、炭火で時間をかけて焼くことで、ふっくらとした味わいに仕上げている。
自家製の漬物は、京都の種麹屋『菱六』の麹で漬けた自然な甘みとコリコリとした食感を堪能できるベッタラや、春キャベツとキュウリの浅漬けなど季節によって変わる。
「朝から日本酒もおすすめしています」とお酒好きにうれしい情報も! 例えば、伏見の『松本酒造』が作った「Kocon(ココン)」は、キレのよいスッキリとした一杯。和食との相性がよく、キリリと冷えた冷酒で楽しめば、ほろよい気分で幸せな一日をスタートできそう。
「ごはん、味噌汁、焼き魚、メザシ、漬物という、まさに定番の日本の朝食。豪華な食材を使ったり、品数を多くしたり、過度な手を加えたりせず、吟味して選んだ食材が持つおいしさを、一つ一つ丁寧に調理しています。そのおいしさをより多くの方に味わっていただきたいと思います」と語る、料理担当の中村りょう子さんと石上和嗣さん。
「器を手に取るという日本ならではの食文化も、私たちが伝えたいことの一つです」とお二人。例えば、ご飯をよそう飯椀は、数ある中から選ぶことができる。手にとると、どれもしっくりと優しくなじみ、口をつけるとそのなめらかさにうっとり。
土ならではの素朴な風合いや自然な色味が、ご飯を引き立てる。「どれにしよう?」と迷ってしまうことは間違いないが、その時間もいとおしい。
『喜心』の朝食は14:00までだが、今後は料理人が魅力的な食材に出逢う場所になったり、食を通じた観光体験のきっかけになったり、京都・人・食・観光などをつなぐ仕組み作りに取り組み、『喜心』に人が集まる場所にしたいとも。京都を訪れたら、何はともあれ『喜心』に足を運んで、豊かな一日のスタートをここから初めてみてはどうだろうか。
(撮影/前田博史)
【メニュー】
朝食 2,500円
※価格は税抜
喜心
- 電話番号
- 075-525-8500
- 営業時間
- 7:30~13:30(L.O.)
- 定休日
- 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。