2017年1月、とんかつの名店がひしめく街・高田馬場に新星『とんかつ ひなた』がオープンした。こちらの店は、“とんかつ愛”を語らせたら右に出るものはいない、巷では「とんかつ王子」と呼ばれる眞杉大介さんがプロデュースする板前とんかつ店。
眞杉さんのとんかつへの探求心は、国内にとどまらず、世界中を巡るとんかつ行脚により、年間200食以上のとんかつを食べ尽くすほどだという。そんな眞杉さんのとんかつ愛が凝縮されたお店が『とんかつ ひなた』なのだ。
暖簾をくぐると、ウッディーで温かみのある落ち着いた店内。客席は、すし屋を思わせるような白木が美しいL字カウンターに、ゆったりとした14席を用意する。
『とんかつ ひなた』では、お客の目の前で一つひとつ丁寧にとんかつを揚げていく姿を目で観て楽しみ、舌で味わわせることから、「板前とんかつ」と提唱している。
豚肉の全部位を食べ比べできるユニークなコースを堪能したい
こちらの店で使う豚は、14種のハーブなどをブレンドした薬膳漢方飼料を与えて健康に育った宮城県産の「漢方豚」。雑味や臭みがなく、驚くほどに柔らかい赤身と甘みのある脂が特徴だ。
豚肉の塊を手に、「“漢方豚”は、肉質が柔らかいので一切叩かずに揚げているんですよ」と詳しく解説してくれるのは料理長の新垣定哲さん。手にした「リブロース」は、リブロースの中でもカブリと呼ばれる部分で、豚1頭から4枚ほどしかとれない希少部位だそう。
そんな漢方豚の魅力を存分に楽しませるのが、15時以降・4名以上の予約のみで提供される「食べ比べコース」。「リブロース」、「ロース」、「ひれ」の定番から「しきんぼ」、「とんとろ」「らんぷ」といった希少部位まで、様々な部位を少量ずつ食べることができ、〆のご飯までついて3,500円(税込)というから驚きだ。
とんかつは“立てて”、まずは何もつけず。それから塩で食べるべし!
それでは、「食べ比べコース」を詳しく解説しよう。まず、1皿目に登場するのはとんかつの最高峰の部位と称される肉厚の「リブロース」。脂身もサシも豊富で、うまみたっぷりなしっかりとした赤身の「リブロース」は、このビジュアルだけで食欲を全開にさせてくれる。
と、その前に、“とんかつは立てて食べる”のがこの店の流儀。肉の断面が舌の上に乗るように、とんかつを立てて口へ運ぶのだという。そうすることで、衣ではなく、肉のうまみを舌の上からダイレクトに受け止められるのだ。
まずは何もつけずにそのまま、それから塩で食べると……、とても柔らかくてうまい! そして、脂身が甘い。うまみが強い肉の部分と甘みのある脂の部分が口内で一体となり、目をつぶっていても笑みが溢れ出てくる。
2皿目は、とんかつの代名詞である「ロース」。キメの細かい赤身に、うまみが凝縮されたふちの脂身が醍醐味の「ロース」を口の中に運ぶと、甘い脂の香りがふわっと広がる。「リブロース」よりもしっかりとした肉質で、サクッと歯触りがよく、堪らなくうまい。
揚げ物なのにオリーブオイルをかけて食べるの?
さらに、とんかつを一層引き立てる調味料にも注目したい。卓上には、「塩」が2種類、「オリーブオイル」「ソース」が2種類用意されているほか、「食べ比べコース」には「トリュフ塩」も添えられる。
肉の部位に合わせて調味料で味わいに変化をつけて楽しむ。肉の部位と調味料の相性の違いを、ぜひマリアージュさせて楽しんでほしい。
まずは塩から。「ロース」には右端にある塩「あまみ」を、「ヒレ」にはその隣の「インカの天日塩」で、肉のうまみが一気に口の中に広がる塩と肉のマリアージュを楽しんでほしい。
続いては、「オリーブオイル」。『とんかつ ひなた』のとんかつは口当たりが軽いため、オリーブオイルをかけて食べることで、とんかつがまろやかさを纏って、なんとも言えないおいしさが味わえるのだという。オリーブオイルをスポイトで垂らし、そこにさらにトリュフ塩をつけて食べてみると……。びっくり!
オリーブオイルの濃厚な香りとトリュフ塩によって引き出された肉のうまみが別格である。けれども、とんかつはやっぱりソースで食べたい! そんな欲望を満たすためにも配合にこだわり抜いた「濃厚」と「さらさら」の2種類のソースもきちんと用意されている。
3皿目は、ロースと並ぶ良質な部位の「ひれ」。脂身はもっとも少ないが、赤身のキメはもっとも細かくジューシーな肉質が特徴。しっとり滲む肉汁とほんのりピンク色に染まった肉の絶妙な火の通し加減に、見事な職人技を感じる。
この店でしか味わえない希少部位は絶対食べたい!
4皿目は、希少部位の「しきんぼ」。外モモと内モモに挟まれた部位の「しきんぼ」は、豚1頭から2本ほどしか取れない。
キメ細かい赤身に僅かな脂肪が合わさり、その見た目は「ひれ」と見間違えるほど。うまみが凝縮した赤身とうっすらと断面に滲み出る肉汁は、食べた者にしかわからない豚肉らしい味わいだ。
続いて5皿目は、焼肉でお馴染みの「とんとろ」が登場。甘い香りのある脂身に筋が通った「とんとろ」は、頬から首にかけての脂の多い部分で、一頭から2枚ほどしか取れない希少部位だ。
こちらは卓上の「さらさら」ソースとともに味わってほしい。とんかつに仕立てることで、脂の甘みとぴったりと肉に密着した細かい衣の香ばしさ、フルーティーなソースの香りが織り成す、なんとも口福な瞬間が味わえるはず。
最後の6皿目は「らんぷ」。「らんぷ」は、ロースからつながる腰からお尻にかけての赤身の部位。しっかりした赤身で脂肪が少なく、適度なキメの細かさのある柔らかな肉質に加え、猛々しい豚肉本来の味も楽しめる。
こうした希少部位が食べられるのも、豚を一頭買いする『とんかつ ひなた』だからこその一品だ。
ここで、〆に行く前にお口直しを。桃のような糖度の高いトマトを甘酢で甘めにさっぱりと仕立てた「トマトのコンフィ」が、口の中をすっきりさせ、次の料理へとスムーズにつなげてくれる。
とんかつを際立たせる名脇役にもとことんこだわる
とんかつの名脇役である「キャベツ」にもこだわる。何度も試行錯誤を重ねた結果、丁寧に手切りした後、あえて水にさらさない状態でキャベツ本来のうまみを残して提供しているそうだ。
水にさらすとキャベツの甘みが逃げてしまい、乾燥するとシャキシャキ感が失われてパサパサになってしまうからだ。この時期ならではのふんわりと柔らかい春キャベツには、「さらさら」のとんかつソースをかけて食べるのがオススメ。
とんかつ愛が凝縮された〆のご飯は「ソースかつ丼」でも
なんと! 〆のご飯は希望すれば「ソースかつ丼」にしてもらえる。柚子胡椒をのせてソースを纏った「リブロース」がご飯の上に一切れと、ご飯の下にもまた一切れ隠れている。
とんかつには使用できない腕の部位を使った自家製チャーシュースープと、とんかつをおいしくするために選びに選び抜いたという漬け物。全てを完食する頃には、お腹も心も大満足だが、お腹に余裕のある人はとんかつの単品での追加注文も可能だ。
『とんかつ ひなた』には、最初から最後までとんかつへのこだわりが凝縮された、とんかつ好きのための極上の時間があるのだ。
(撮影/浅山美鈴)
【メニュー】
ロースかつ定食(130g) 1,300円
上ロースかつ定食(190g)1,800円
上リブロースかつ定食(250g) 2,500円
とんとろかつ 単品(50g) 500円
しきんぼかつ 単品(140g) 1,000円
特撰リブロースかつ定食(250g) 3,500円
食べ比べ(全部位)コース 3,500円(要予約・15時より提供)
※価格は税込
とんかつ ひなた
- 電話番号
- 03-6380-2424
- 営業時間
- 11:00~20:00(L.O.)
- 定休日
- 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。