第二十夜:美容家 井田実穂子さん
今回の案内人は、20年以上にわたり美容業界で活躍する井田実穂子さん。父方、母方ともに祖母は料理の先生、お母様は茶懐石料理を手がけ、お父様も飲食業を営むという、美食家一家に生まれた彼女は、子どものころから食べることと料理をすることが大好き。子どもの頃からお父様に連れられ、焼鳥、餃子、屋台をめぐっていたこともあり、20代に入ると自然にはしご酒の道へ。今回はいつもの福岡を飛び出し、彼女の熊本遠征にお供した。
■高速バスに乗って1時間45分。福岡・天神から熊本へ出発!
福岡から熊本へは、博多駅から新幹線で30分ちょっと。けれど、JR熊本駅から繁華街は少し距離があり、時間に余裕があれば、高速バスが便利でお得。片道2,060円だが、往復だと3,700円(片道1,850円)、4枚綴りの回数券の場合6,580円(1枚あたり1,645円)となるため、2人で行く場合は回数券を購入しよう。
▲修復中の熊本城が見える
西鉄天神高速バスターミナルから博多バスターミナルを経由し、いざ熊本方面へ。1時間45分ほどで、1軒目に訪れる店の最寄りのバス停「通町筋」に到着した。
今回、井田さんが熊本を訪れた1つの目的は、熊本のワインショップ『Quruto(クルト)』を営む古賀択郎さん(通称:コガタクさん)に会うこと。
「コガタクさんがかつて東京・幡ヶ谷で営んでいた『Kinasse(キナッセ)』にほんの一瞬だけお邪魔したことがあったんです。そのときにいただいたワインがすごくおいしくて、今でも記憶に残っているんですよね。彼が熊本でワインショップを開いたことは知っていたのですが、少し前に私がワインのことですごく困ったことがあって、それを解決してくださったのがコガタクさんでした。そのときの対応に心を鷲掴みにされて…。今では神様、仏様、コガタク様と呼ばせてもらっています(笑)」
そんなコガタクさんに会うため、そして、コガタクさんおすすめの熊本の熱いお店を訪れるため、今回、井田さんは熊本を訪れたのだ。
■ワインショップ『Qurto』でショッピング&情報収集
「通町筋」のバス停を降り、上通アーケードを歩くこと約5分。アーケードを抜けた並木坂と呼ばれるエリアに、コガタクさんが営むワインショップ『Quruto』はある。
熊本出身のコガタクさんは、広告代理店勤務を経て2009年に東京・幡ヶ谷でワインバー『Kinasse』を開業。約7年間の営業の後、昨年3月に熊本に戻ってきた。その直後、熊本地震が発生。予定していた時期からは遅れたものの、昨年9月、ナチュラルワインと日本のワインを販売する『Quruto』をオープンさせた。“キナッセ”も“クルト”も熊本の方言をイメージさせる言葉。コガタクさんの熊本愛が感じられる。
「『Quruto』はコガタクさんのエッセンスが散りばめられたステキなお店。ワインのことが詳しくない私は、ボトルがたくさん並んでいると目が回ってますます選べなくなってしまうけれど、ここは信頼あるコガタクさんがセレクトしたワインたちだから、安心して選ぶことができます」
このときも、自宅用にとボトルを数本購入し、送ってもらうことに。
「福岡にあったら通っちゃいますね。コガタク定期便とかやってくれないかなぁ」
と、井田さんは笑った。
▲コガタクさんが運営するナチュラルワインと日本のワインのアーカイブサイト「winy」もチェック!
この日はコガタクさんセレクトのお店をめぐる予定。コガタクさんの仕事が終わるまで、近所のお店で待つことになった。
Quruto(クルト)
- 電話番号
- 096-240-5326
- 営業時間
- 13:00〜19:00
- 定休日
- 日・祝
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
■待ち合わせやアペロにぴったり! 気軽に利用できる『上乃裏惣菜コルリ』へ
『Quruto』から徒歩2、3分。この日の1軒目は、2013年2月よりコガタクさんと「満月ワインバー熊本」を共催してきた笹原圭悟さんのお店『上乃裏惣菜コルリ』である。
日本ワインが充実した和食処『瑠璃庵』(同ビル2F)の2号店で、『瑠璃庵』の料理人が仕込んだ本格的な和惣菜を中心に、キッシュやテリーヌなど洋の雰囲気も取り入れたカジュアルな料理を提供。
日中はテイクアウト専門だが、18時以降は笹原さん自らカウンターに立ち、イートインもできる。2階の『瑠璃庵』は“和”をコンセプトとした店だが、1階の『コルリ』は、“和”から少し自由に、笹原さんが“今”興味があるものが散りばめられた空間で、クラフトビールや海外のナチュラルワイン、ビオのチーズなどを提案している。
▲「大阿蘇鶏とゴボウの煮こごりテリーヌ」(300円)、「季節野菜と高菜の種、ミモレットのおひたし」(500円)、「苺とビーツ、水切りヨーグルト」(700円)など、地元の素材を使ったメニューが充実。グラスワインは800円〜。
以前から来てみたかったと話す井田さんは、「『Quruto』でワインを選んでいたら、早く飲みたくなっちゃって」と、さっそくグラスを1杯注文。一歩入った瞬間から「ここは絶対に居心地がいいお店だ!」と直感し、メニューを見た瞬間、すべてをオーダーしたくなったとか。
「和のお料理がワインに合うようにアレンジしてあって嬉しい限り。おだしがとても好きなので、和のテイストが感じられるお料理が気軽につまめて、大好きなワインを気軽に飲めるなんて、最高です」
仕事終わりのコガタクさんとの待ち合わせは、この次のお店の予定だったのだけど、その居心地の良さから思わずゆっくりしてしまった私たち。コガタクさんが迎えにきてくれたので、慌ててお会計を済ませ、次なるお店に向かう。
上乃裏惣菜コルリ
- 電話番号
- 070-5271-3496
- 営業時間
- 12:00〜24:00(イートインは18:00〜)
- 定休日
- 火曜・不定
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
■冨永シェフの人柄を感じる優しい料理に感動!
『コルリ』から約100m。1つ目の角を曲がると、次なる目的地『Peg』に到着した。
ここ『Peg』は2015年8月にオープンした自然派ワインと料理を楽しむビストロ。東京やフランスなどで修業を積んだ冨永博美シェフが一人で接客から調理をこなしている。
「個人的には魚系のメニューがイチオシです。冨永シェフの食材の組み合わせがなんともユニークで、毎度、口にしては唸ってしまいますね。モリモリ食べて、ボトルでガンガン飲みたいお店です」と、コガタクさん。
手書きのメニューを見ると、天草の天然真鯛や菊池のえこめ牛、大津の香心ポーク、玉名牧場のチーズといった具合に、地元・熊本県産の食材をメインに使っている。
コガタクさんのおすすめに従って、魚介系のメニューをオーダーした。
▲「熊本天草天然真鯛とニューサマーオレンジ&人参のサラダ」(1,350円)と、「熊本芦北シャクのフリット」(800円)
▲「のびのびとした発想が実に素晴らしく、これからもっと進化すると思います」とコガタクさん(写真中央)
「シェフのセンスを感じる空気感がとても気持ち良いですね。もちろん、お料理もワインも言うことなし。シェフが一人でされているから、今日はあまり長くお話できなかったけれど、今度はカウンターに座ってゆっくりお話してみたいですし、シェフの優しさを感じるお料理をまた食べにきたいですね」と、井田さんも大満足の様子だ。
Peg(ペグ)
- 電話番号
- 096-227-6494
- 営業時間
- 18:00〜23:00
- 定休日
- 月曜・不定
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
■大阪から熊本へ。他谷シェフの集大成となる“食堂”へ
『Peg』から歩くこと3分。今年1月にオープンしたばかりの『ワイン食堂 トキワ』到着。向かって右側にある扉を開け、階段を上がる。
大阪から移り住んだ他谷憲司さんが奥さまと切り盛りするこちら。他谷シェフはイタリア修業などを経て、大阪・長堀橋の『bistro a vin DAIGAKU』に開業当初から勤務し、2011年よりオーナーシェフとして活躍された方。奥さまのご実家がある熊本の街が好きになり、ご自身の集大成となるこの店をここ熊本にオープンさせた。とはいえ、他谷さんご一家が熊本に移り住んだのは、コガタクさんとほぼ同時期の昨年3月。4月に熊本地震に遭い、オープンは予定よりもかなり遅れたそうだ。
▲コガタクさんにセレクトしていただいたワインで乾杯!
「大阪で有名グルメガイドにも掲載された人気店『bistro a vin DAIGAKU』で約10年間腕を振るった他谷シェフの集大成的な食堂です。ベーコンエッグやポテトサラダといった肩の力が抜けた“くずし”メニューも絶妙ですし、ナチュラルワインにも造詣が深く、身をゆだねたくなる新進気鋭のお店ですね」と、コガタクさん。
▲「土佐あか牛のビステッカ」(2,600円)、「鶏肝ワンダフルマリネ」(400円)、「熊本アサリと青のり、ワカメのヴィスビオ」(900円)
地元の食材に限らず、関西時代からお付き合いのある生産者から届けられる食材も使われており、九州では珍しいメニューも少なくない。これまでになかった味わいは、地元客からの注目を集めている。
▲「初めて訪れたけど、他谷ご夫妻の温かなおもてなしに、懐かしさを覚えました」と井田さん。階段が急なので、帰りは特にご注意を
ワイン食堂 トキワ
- 電話番号
- 096-240-5252
- 営業時間
- 18:00〜23:00
- 定休日
- 水曜・不定
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
■熊本のワインラバーが夜な夜な集うワインバー『tetra』
時計は22時を回っていた。熊本から福岡方面への終バスは22時09分。もう間に合わない。最終の新幹線は23時17分。これならあと1杯くらい飲めそうだ。
この日の〆に訪れたのは、『ワイン食堂 トキワ』から徒歩5分の場所にあるワインバー『tetra』。これまでのはしご酒では移動にタクシーを利用することも多かったが、今回は全て徒歩数分で行ける距離にあり、熊本の底力を思い知らされる。
コガタクさんによると、ここ『tetra』は、熊本のワインラヴァーが夜な夜な集うバーだそう。老舗のワインバーの移転に伴い、寺本崇さんがこの空間を引き継ぎ、2016年11月より『tetra』として営業している。
「ワインはナチュラルなものばかりで、状態チェック、温度管理などもバッチリ。ついつい杯を重ねてしまいます。深夜2時ごろまで営業しているので、まだまだ帰りたくない楽しい夜に決まって足が向かう貴重な存在ですね」と、コガタクさん。
ふと、井田さんを見ると、とても幸せそうにワインを飲んでいる。ま、まずい。終電に間に合いそうにない。
「昨日熱中症だったんですけど、1軒目の『コルリ』さんでスイッチが入ってしまって。実はその時点で、日帰りはないなって思ってたんですよねぇ」
慌てて宿を確保し、楽しく飲んでいると、仕事を終えた他谷さんや笹原さんが合流。熊本の夜はさらなる盛り上がりを見せた。
後日、『tetra』さんの感想を聞いてみると、
「オーセンティックなバーかと思いきや、寺本さんの軽快なトークに終始笑っていましたね。途中でコガタクさんがいなくなっちゃったけど、他谷さんや笹原さんがきてくれて幸せでした。何を飲んだのか、どんな話をしたのか、全く覚えていないけれど、楽しかったことだけは身体が覚えています(笑)。『tetra』さんは〆にもいいけれど、次にお邪魔するときは、記憶のあるうちに来てみたいですね」
と、ご満悦だった。
「熊本はあまり行く機会がなかったけれど、ここ最近、友人たちから『熊本楽しいよ』『おいしいお店あるよ』という話をよく聞くようになっていたから、今回、熊本を訪れることができて本当に嬉しかったです。今回、コガタクさんに教えてもらったどのお店も気負いなく、私のような初めての客も自然体で行けそうな雰囲気でした。一方で、それぞれに個性があり、秘めた熱量を感じるお店と人々に魅了されっぱなし。これは定期的に通わないとですね」。
今回は、井田さんが愛するナチュラルワインのお店を巡ったが、今年で3回目を迎える熊本のナチュラルワインの祭典『ナチュランネ熊本2017』の日程が2017年10月22日(日)に決定した。会場は昨年と同じ早川倉庫(熊本市万町2-4)。詳細はこれから発表されるので、Facebookページをチェックしよう。
tetra
- 電話番号
- 096-355-0655
- 営業時間
- 19時台~翌2時L.O.
- 定休日
- 水曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。