私が子供の頃は焼肉がまだ一般的ではありませんでした。
焼肉と云えば豚肉薄切りに焼肉のタレをからめてフライパンで焼いたのを自分の家で食べるメニュー。卓上のコンロや炭火で焼くスタイルの焼肉と云うのを食べたのは10代も後半になってから。
焼くのが牛肉でビックリ。
ホルモンなんて更にまたビックリ。
ビックリしたなぁもう。
焼肉にまつわる若い頃の思い出は沢山あるのですが、それはまたの機会に。
クセが強くて味が濃かったマトンの記憶
さて焼肉から一歩踏み込んでジンギスカンとなると初めて食べたのはいつだったでしょう。これが意外と早くて小学生の頃なんです。私の父親が味付けされた細切れの羊肉を入手してきて、それを焼いたのを食べた記憶があります。ジンギスカンと云わずにマトンと云っていました。味付けが濃いのとクセがあったのとでちょっと食べ辛かったのが記憶の片隅にあります。同居の祖父(母方)はかなり嫌っていたと思います。それでも結構な頻度で我が家の食卓にマトンが登場していました。父は若い頃北海道にいたらしく、そのせいだったのかどうなのか私の家にはさきいかや鮭とば(そう云う名前だとずっと後で知った)や干し鱈と云った北海道っぽいおやつがいっぱいあったのです。偏食の激しい子供の頃の私でしたが、そう云った海産物系乾物は結構むしゃむしゃ食べていたのでした。我が家でマトンがお馴染みだったのも合点がいきます。
ファーストコンタクトはCKBのツアーで初めて北海道に行った時
ジンギスカンと云う名前と実物がちゃんと合致したのを食べたのはそれからもっとずっと後、クレイジーケンバンドのツアーで生まれて初めて北海道に行った時(21世紀に入ってから)がファーストコンタクトです。ジンギスカン鍋で野菜と一緒に焼く生ラムのウマさに感動し、何人前も立て続けに平らげました。野菜もいっぱい食べられるし、お酒も飲めて、ご飯のおかずにもなると云うオールマイティーさ。それ以来すっかりジンギスカンのトリコになって東京でも横浜でも大阪でも生ラムジンギスカンを食べていました。
ところがここ数年で知り合った北海道出身者の意見を聞くと、あれはあれでウマイけれど昔ながらのジンギスカンのウマさは格別で別格なのだそうです。マジっすか。昔ながらって何。どんなヤツなの。そんな話を聞いてしまうと気になって夜も寝られません。以来ずっと寝不足になっていたのを、先日帯広に行って解消して参りました。
格別なうまさだという「昔ながらのジンギスカン」とは?
私にそのジンギスカンの存在を教えてくれたのは、このdressingの連載にも登場しました五反田『やなわらバー』のマスター。彼は帯広出身です。その彼の帰省とクレイジーケンバンドのツアー日程が重なりまして、いざ帯広へ。案内されましたお店は、正確には帯広市のすぐそばの中川郡幕別町札内にあります。
ちょっと銭湯を想起させるような建物の外観。建物の中央は2階分の吹き抜けになっていて、それを囲むように座敷個室がいくつもあります。冷たいビールで乾杯した後は即本題のジンギスカンスタート。総勢5名でまずはジンギスカン10人前をオーダー。ラムではなく味付けされたマトン肉のジンギスカン。
オーダーごとに枝肉から手切りする羊肉
オーダーが入る度に枝肉から手切りするジンギスカン。少し甘めの醤油タレに漬けられたジンギスカンを焼く。中央の盛り上がったいわゆるジンギスカン鍋ではなく、普通の焼肉のコンロで焼く。あまり火を通し過ぎずに早めの頃合いに食べる。これが私の子供の頃の記憶にあるようなマトンでもないし、ロールされたマトンの味わいとも違う。臭みもなければクセもない、でもちゃんと羊肉だと認識出来る香りがある。軟らかいけれど食べごたえもしっかりあって肉を噛み締めることの幸せに浸る。うまみの奥深さに言葉数が少なくなる。ウマウマウー。昔ながらのジンギスカンとはこのことなのですね。教えてくれて本当に感謝。それにしてもいくらでも食べられるなこりゃ。
一人前350円の驚愕
ジンギスカンには上や特上もあって、それはそれぞれに素晴らしくウマイのだけれど、並のジンギスカンの不揃いながらガッツのある味わいの方が好きだなぁ。更に10人前追加。どんどん食べて満足至極。そしてこの元祖手切りジンギスカン並は一人前何と350円。これでも最近値上げしたそうな。ブラボー。このお店の近所に住もうと一瞬本気で考えました。そうもいかないのでまた何か都合をつけて必ず再訪します。おいしかったです!
御馳走様でした!
<このお店の詳細を知りたい方は続きをどうぞ!>
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