どうも、料理芸人のクック井上。です!
突然ですが、「温故知新」とは誰の言葉かご存じでしょうか?
これは、中国・春秋時代の思想家である孔子の言葉で、「過去の事実を研究し、そこから新しい知識や見解をひらくこと。故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」という意味の有名な言葉ですが、そんな「温故知新」を体現する中華料理店が埼玉県の川口にあります。しかもそこの店主は、正真正銘、孔子の末裔!! 川口にいるとは…、行くしかないでしょー!
このコラム『餃子で巡る世界の旅in東京』初、東京から飛び出しての取材です。2500年前の浪漫に触れられると思ったら、東京なんて小さい、小さい! 東京から飛び出して、いざ孔子の餃子を喰らおうぞ。
やってきたのは、JR西川口駅から徒歩3分ほどのところにある『異味香(イーウイシャン)』。お店の前に立っている方が、恐れ多くも孔子73代目の山田慶忠(よしただ)さんにあらせられるゾ。(ははぁー)
孔子の末裔は名前付けにルールがあるそうで、73代目の人は名前に「慶」という字を使わなくてはならなかったそうです。親の思いを込めてとかそんなんじゃなく、きっちりルールがあるのか…。流石、孔子家!
と、ここでお知らせ。孔子の末裔は、今や世界に200万人ほどいるそうです。多いなっ!「孔子の末裔とはすごい!」と思っていたのに、200万人は多すぎでしょー(笑)
ここで一枚の写真をご覧下さい。慶忠さんのお父様、先代の店主です。
孔子感、強っ! 髭の長さとか、孔子の絵とそっくりだ。遺伝子受け継ぎすぎです(笑)僕は以前、訪店した時にお会いしましたが、こんな“仙人”のようなお姿をされてるのに、明るくてユーモアがあって、名物店主さんでした。現在は引退されて、息子さんの代にバトンタッチしたというわけですが、店内にはいつもこの仙人スマイルの写真が飾ってあり、僕らお客を温かく見守ってくれます。
本場中国にはない! 『異味香』のオリジナル餃子は具材がなんと16種類も入っている!
ユニークなお店なだけに語るポイントが多すぎる! そろそろ本題に入らねば。まずは10人いたら9人が食べるという「煎人(せんにん)餃子」をいただくと致しましょう。
「煎人餃子」はBIGサイズ。大判で、長さ10cmほど。普通の餃子の2~3倍はある大きさです。それ故、焼き上がりまでは10分ほどの時間かかります。ゆっくりじっくり、ビールで喉を潤わせながら、2500年の歴史に思いを馳せると致しましょう。
とかなんとか言っている間に、いい香りと共にやって参りました「煎人餃子」!
▲「煎人餃子」
ドーンっと大きい、迫力満点の餃子です。「醤油などつけずに、そのまま召し上がってください」との事。いや、そもそも醤油などの調味料がテーブルに置いていないんですけどね(笑)。
▲「いっただきま~す!」
なんだ、なんだ? 確かにタレをつけなくてもしっかりうまみがある…、そんな事より“おいしい”だけじゃない、なんとも複雑かつ深い味わいだ。そして溢れる汁がとてもジューシー。と言っても肉汁だけの餃子みたいなジューシーさではなく、とてもさっぱりとしていて、しつこさがない。材料は何と何なんだろう…?
うーん、わからん、とても深い! って、それもそのはず。「煎人餃子」は、豚挽き肉、ハクサイ、ニラ、シイタケなど定番の具材から、エノキ、香菜、卵、春雨、ナス、インゲンなど、なんと全部で16種類の具材を使っているんですって。いや、16種類は、わかるわけないでしょー(笑)
16種類の具材が味を殺し合うことなく、“十六味一体”となって奏でるハーモニー! 大体、ナスやインゲンって、普通は餃子に入れない材料ですよ。どうやって思いついたんだか。これが2500年の歴史の成せる発想と味か…。
そしてそれだけじゃない。湿気などにより餡の味が変化するので、日々の研究の結果、季節によってはもっと具材が増えて18種類になるそうです。むむむ! さらに味を重ねますか。そりゃ “おいしい”という4文字ではとても表しきれない、とんでもなく複雑で深い味わいの餡に仕上がるわけだ。
ここまで餡にこだわっているからには、もちろん皮も抜かりなく自家製です。小麦粉と強力粉、薄力粉を絶妙な配合で混ぜ、熱湯を使って1時間近く練るんだとか。規格外の大きさに材料の多さ、そして皮は手作り…。どこまでも餃子へのこだわりがハンパない孔子73代目!
ちなみに、とってもジューシーで肉汁などが溢れてくるかもしれないので、汁を受け止める小皿を下に持って食べるのがオススメ。お皿にこぼれたうまみたっぷりの汁もジュルりと飲みほしてくださいね。
「川口B級グルメ大会」で優勝を獲得した絶品シューマイも食べるべし!
そして、もうひとつのハズせない看板メニューがこちら、「彩の国黒豚焼きシューマイ」です。「煎人餃子」の複雑な味わいと打って変わって、「彩の国黒豚焼きシューマイ」は、黒豚のうまみと玉ネギの甘みをダイレクトに味わえる一品です。
埼玉県の町おこしの一環で、埼玉県産黒豚を使ったメニューを開発することになり、誕生したメニューだそうです。以前は、干しエビなども入れていたそうですが、より黒豚のうまみを生かすために、あえてシンプルにしたとのこと。
その結果、2010年に開催された「川口B級グルメ大会」では優勝を獲得! 誰もが認めた絶品シューマイは自信の一品だそうです。
見るからに、パリッとした香ばしい焼き目が最高ですよね!!
蒸してから一旦冷凍し、その後もう一度焼くスタイルなので、焼き目のついたシューマイになるってわけ。もちろん、本場中国には焼きシューマイというメニューはありません。『異味香』の完全オリジナルメニュー。
ということで、いっちゃいましょう!
うひょー、うまみすごっ!
店主の狙い通り、黒豚と玉ネギのうまみと甘みが相まって噛むごとに訪れる至福のひと時。そして表面のカリっとした焼き目の食感。もう言うことなしのおいしさ。口当たりが軽いから、何個でもいける! これ、素材の埼玉県産黒豚が上質なんだわ。
テイクアウトもできるので、お土産に買って帰るのもよし。これは子どもも喜ぶ味だと思うので、お子さんがいらっしゃる方は、必買ですよ! お土産あるだけで、家族って笑顔になるしね。
元々は、水餃子専門店としてオープンしていた!?
続いて紹介するのが、餃子から焼売ときて、もう一回餃子に戻って、“翡翠(ひすい)餃子”とも呼ばれる「海鮮水餃子」(写真上)。緑色の正体はニラですが、他にもモンゴイカのすり身と卵、ショウガを使った餃子です。中国にこういう餃子があるのかと思いきや、こちらも『異味香』の完全オリジナルメニューだそう。
現在は100種類以上のメニューがある『異味香』ですが、平成3年にオープンした当初は水餃子専門店だったとか。というか、先代の孔子72代目、通称“仙人”が、この「海鮮水餃子(“翡翠(ひすい)餃子”)」を作りたくてお店を始めたそうですから、そうと聞いたら食べないわけにいきません。この水餃子に対する自信とかける思い、いざ受け止めん!
うわ、これは絶品だわ。モンゴウイカの優しいうまみとニラの香り、そして生姜の風味がベストマッチ! タレにも工夫があって、意識して食べないと単なるポン酢のような味ですが実はレモン入り。鼻から抜ける爽やかでフルーティな香りがイカとこれまた合う! 確かに、この「海鮮水餃子(“翡翠(ひすい)餃子”)」に絶対の自信を持っていたというのが理解できます!
いや~、どうすれば、このいう餃子が生み出せるのか、仙人に聞いてみたかったなぁ。
まだまだある! 『異味香』完全オリジナルメニュー
そして最後にご紹介するのが、夏にオススメの「エビマリー」(写真上)。エビマヨとカリーが合体して「エビマリー」、ネーミングセンス炸裂! エビをつけ合わせのレタスで巻いて食べるのが◎だそうです。
他の飲食店で食べたエビマヨがおいしくなかったのを機に、「おいしいエビマヨを作ろう!」と思い立った慶忠さんが考案したんですって。常連のお客さんに食べてもらって反応を見るなどし、試行錯誤の末に完成した、孔子73代目のオリジナルメニュー、いっただきます!
あかん、これは絶品だわ。めちゃめちゃビールに合うねー(いつのまにオーダーしてたんだよ!)衣はサクっ、中のエビはプリっ&フワっ食感でたまらん。
これ、日本の天ぷらの手法をヒントに実現したそうです。衣がおいしく纏っているソースは、マヨネーズ×カレー粉×ハチミツ×ニンニク…などを加えた、なんともクセになる味わい。あのエビのお菓子より“やめられない止まらない”というやみつきの味なんですが、いい仕事をしてるのがレタスのシャキっとした食感。エビ・衣・ソース・レタス、それぞれに役割が違うけど、この計算しつくされた相性ね! もう、歯と舌と鼻が大満足。そして大事な事なんで再度言いますが、ビールとの相性が抜群で最強です!
いやー、恐れ入りました…。って、急に思い出したけど、ここ埼玉の西川口ですよね?銀座や赤坂の一等地にある、一人何万円もする高級中華のお店じゃないですよね? 中華に、天ぷらの和のテイストも、カレーというエスニックなテイストも取り入れてて、流石の一言なんですが…
「他のお店とは違うものを出したいという思いがありますので、和食や洋食の要素など何でも取り入れています。他にもオリーブオイルやローズマリー、ハニーマスタードなどを使ったメニューも多数ありますよ」と慶忠さん。
そう、お店は場所じゃない! 金額じゃない! 実は、店内には芸能人のサインがずらりと飾られています。それも食通のビッグネームだらけ! 埼玉県の西川口駅という、都内からは若干外れた地域ですが、こんなにも芸能人が訪れる理由は、他では食べられない味だからではないでしょうか?
また近くに「さいたまスーパーアリーナ」があるので、終演後の出演者やスタッフの打ち上げ場所にも使われるとか。西川口にあっても、おいしいお店は見つかっちゃう! おいしいものを食べつくしているであろう食通のビッグネームが、足繁く通っちゃうってわけです。
▲最後は、慶忠さんと、仙人の奥様であり慶忠さんのお母様とパシャリ
今まで相当な餃子店を食べ歩いてきましたが、『異味香』はオリジナリティの要素が際立っています。しかし、ただ奇をてらっているのかというとそうではなく、しっかりと基本を活かしつつ、けれども固定観念は取り払って、さらにその先にある可能性を体現しているのだと感じました。そう、それこそが、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る「温故知新」! 過去の事実を研究し、そこから新しい知識や見解をひらくという、孔子の教えそのものだったのです!
伝統的かつ独創的な料理を生み出した孔子72代目である“仙人”のスピリットはしっかりと息子の孔子73代目へ、そして初代の孔子の教えと血は、約2500年がたった今も、脈々と受け継がれているのです。
ぜひ皆さんも、餃子や焼売をはじめとする伝統的かつ独創的な料理、そして約2,500年のロマンと「温故知新」を味わいにいらして下さい。
(撮影/寺元博昭)
異味香
- 電話番号
- 050-5487-1693
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 17:00~翌1:00
(L.O.24:30)
日・祝日
17:00~24:00
(L.O.23:30)
金・土
17:00~翌2:00
(L.O.1:30)
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- 月曜日
※月曜日は祝祭日の場合は営業致します。(17:00~24:00)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。