「あのうどん屋が居酒屋をやるらしい」。オープン前の数カ月、うどん好きたちの話題を最もさらったのは『うどん酒場 香川一福』だった。
池袋西エリアの繁華街の一角。昼はうどん屋、夜は〆にうどんを用意した居酒屋へ変わる。うどんは、オープンからわずか1年で『ミシュランガイド 東京 2017』の「ビブグルマン」となった、神田で人気の讃岐うどん屋『香川一福』の共同代表・新井榮培さんと岡田章さんが監修。
料理は池袋に本店を構える、大人気のオリエンタルビストロ『アガリコ』を国内外に展開する飲食店のヒットメーカー・大林芳彰さんがプロデュース。
『香川一福』と『アガリコ』の2つの店がそれぞれの得意領域を携え、昨年ごろから注目を集める新興業態「うどん居酒屋」に乗り込んだ形だ。
1階は元蕎麦屋だった造りを残しすっきりと洗練されたカウンター空間に。
製麺室がある地下1階はインダストリアルな印象も加え、植栽で彩られた大テーブルを中心に半個室も用意されている。
躍動する麺、細胞に染みるだしは健在!
「池袋には長くいるけれど、ここにはうどん文化がない。僕ね、九州で夜遅くまでうどん屋が開いているのを見ていいなと思ってたんです。そういう〆うどんの文化を池袋にも根付かせたい。今、うどん居酒屋の波も来ているしね。岡田さんと新井さんの、あのうどんで勝負したくて声をかけたんです」と大林さん。
その大林さんが愛情を込めて「クラフトうどん」と呼ぶうどんは、食べ慣れている人ならひと目でうまさを確信する艶を放つ。熟成がぴたりとはまったときなど驚くほど伸びやかで、軽く、弾むように口中で躍動する。心地いい押し返し、舌への絡まり。幅1cmにも満たない小さな白い世界に秘められた食感のグラデーションに、ただ圧倒される。
麺の個性を映し出す透明なだし。主役に寄り添う穏やかな仕立てで、すっきりとキレのいい後口だ。昆布やサバ節などいたってシンプルな素材からなる計算し尽くされた塩味とうまみのバランスに、ひと口ごとに細胞に吸収されていくような爽快な感覚を覚える。
本場の名物料理を大林流にアレンジ!
一品料理の目玉に据えた、骨付きの特大モモ焼きには驚かされた。香川の名物料理として知られる骨付き鶏。本場ではどちらかというとかぶりつきたくなるような力強い肉質であることが多いが、こちらのモモ焼きときたら、とにかくジューシーで柔らか!
椎茸や香辛料に漬け込み風味を倍増させた長崎の銘柄鶏・雲仙しまばら鶏は、火入れの際、蒸気を当てることで皮目はパリッと香ばしく、身肉は一般的な「モモ焼き」をはるかに超え、まるでミディアムレア仕立てのポワレのようにしっとりし、身離れもいい。
大林さんが東北地方を旅しているときに出逢った野菜の氷結料理にヒントを得た「氷結ピーマン昆布和え」は、心地いいシャリシャリ食感と昆布の塩気が混ざり合うユニークな小鉢。口内をリセットするような清涼感が箸休めにうってつけだ。
他、品書きには「鶏皮ポン酢 のりまみれ」「からすみチーズ」「トロトロ牛モツ煮込み」など、〆のうどんまで長く楽しんでもらえるように、と緩急の効いたメニューが並び、いずれも少量というのも大食漢ではない我が胃にはうれしい心遣い。
昨今盛り上がりを見せるうどん居酒屋。池袋の夜をさらに楽しくしてくれそうだ。
【メニュー】
氷結ピーマン昆布和え 290円
生ガキ出汁ジュレがけ 310円
特大!モモ焼き 1,200円
かけうどん 小430円/中500円
極レモンサワー 500円
※価格は税抜
うどん酒場 香川一福 池袋店
- 電話番号
- 03-5962-0873
- 営業時間
- 11:00~16:00、17:00~24:00(L.O.23:30)
- 定休日
- 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。