こんな店を待っていた!
外苑前駅から千駄ヶ谷方面に徒歩で約4分。各国の大使館や神社仏閣が点在する閑静な一画に、7月4日、あらたな注目店がオープンした。
その名は『An Di』。ベトナム語で”召し上がれ”を意味するモダンベトナミーズレストランだ。
オーナーを務めるのは、銀座の老舗フレンチ『レカン』のシェフ・ソムリエを務めた大越基裕氏。
大越氏は『レカン』退職後、日本初の「ワインテイスター」として、JALのワインアドバイザーやレストランのワイン監修を手掛けるなど、多岐に渡って活躍を続ける人物。「あの大越さんがお店を出すらしい」というグルメで高感度な人々の期待とともに、今回、鳴り物入りでオープンしたのが『An Di』なのだ。
全24席と小体な店内にはリラックスした雰囲気が漂う。コンセプトは「ワイン×ヘルシーな東南アジア料理のペアリング」。大越氏が取り揃えた世界各国のワインに、ハーブや葉もの野菜など自然の恵みをたっぷり使用し、ワインとの相性をより楽しんでもらうために考えられた同店オリジナルのベトナム料理を組み合わせて、スタイリッシュながら気取らずカジュアルに食事が楽しめる空間となっている。
食前酒はなんといっても特製「レモンサワー」がオススメ
それでは、『An Di』のモダンベトナミーズの世界をご紹介していこう。
まずは乾杯の一杯を!同店がアペリティフとしてお勧めしているのが、自家製のレモンサワーだ。
その味の決め手は、愛媛県『大谷農園』が自然栽培で育てる完全無農薬レモンや、季節ごとの旬の柑橘類を、無農薬のサトウキビから作った高知県『上樫森』の黒糖とはちみつなどで漬け込んだ特製シロップ。
オレンジ色に混濁して見るからにおいしそうな特製シロップと、宮崎県『尾鈴山蒸留所』のプレミアム純米焼酎「山翡翠」、そしてソーダを加えて作るレモンサワーは、想像以上に甘さ控えめでスッキリとした味。フレッシュな果実感が前面に出ていて、いやがうえにも食欲が増す味わいに仕上がっている。
そんなレモンサワーにも合うのが、エスニック仕立てのスパイシーな「唐揚げ」(2P)。鶏肉自体にニョクマム、シーズニングソース、コリアンダーシードなどで味付けした後、上新粉と片栗粉をまぶしてカラッと揚げたもの。さらにニョクマム、ニンニク、八角、豆鼓を使ったソースで風味付けしている。
この唐揚げ、ガブリとかじるとジュワーッと肉汁が溢れ、ビックリするほどジューシー。その秘訣は、揚げ方にあるのだそう。揚げ始めに高温でおおかた火を通した後、一旦急激に温度を落として、その後また一気に高温へ。油の中で蒸し上げるような調理方法により、外はバリっと、中はしっとりと、夢のようにおいしい唐揚げに仕上がっている。
この唐揚げに合うワインをオーダーすると、同店ではオーストラリアのオレンジワイン「giallo」をオススメしてくれる。
”giallo”とはイタリア語で「黄色」を意味する言葉。生産者であるアデレード郊外・バロッサヴァレーの『ショブルック・ワインズ』が有機農法で育てたソーヴィニヨン・ブランを100%使用し、極力ナチュラルな製法かつノンフィルターで仕上げたワインは、華やかな香りと、クミンやカルダモンを感じさせる複雑なアロマが特徴。薫り高くスパイシーな揚げ物との相性は抜群だ。
スペシャリテは発酵茶葉を使った「ティーリーフサラダ」
続いては、『An Di』を代表するメニューをご紹介。写真(上)の「ティーリーフサラダ」は、ミャンマーの伝統料理であるお茶の葉のサラダ「ラペットゥ」をアレンジしたもの。
福岡県産の八女茶を使用した発酵茶葉に、緑豆、トマト、キュウリ、カシューナッツ、ピーナッツ、フライドエシャロット、干しエビ、胡麻、パクチーを合わせた盛りだくさんのサラダ。そこにライムを搾り、ホーリーバジルのソースをかけたら、全体をよく混ぜていただこう。
発酵茶葉に顔を近づけただけで、独特の香りがふわっと鼻をくすぐる。茶葉単独の味わいには、酸味やほのかな苦みがあり、まるでものすごく香りの強いお漬物を食べているかのよう。複数の食材によるカリポリシャクシャクとしたリズミカルな食感が楽しく、いつまでも食べ続けていたいようなクセになる味わいのサラダだ。
このティーリーフサラダに合わせたいのが、山形県産の完熟デラウエアを100%使用した『タケダワイナリー』の白ワイン「Sans Soufre(サン・スフル)」。
サン・スフルとは、亜硫酸を使用しないこと。瓶内でワインの醗酵を継続する「アンセストラル法」により、瓶内に炭酸ガスが生じる。ペティアン(微発泡ワイン)に仕上がった、とても爽快感のあるワインだ。また、無濾過のためぶどう由来のにごりや澱が残っており、特有のハーブやグリーンのアロマがこのティーリーフサラダともよくマッチする。
続いては、「エゴマ ノコギリコリアンダー チキンの生春巻き」。鶏ムネ肉とサラダ菜をたっぷり使った爽やかな一品だ。中央のピンク色はミョウガのピクルスで、香り、食感共にほどよいアクセントが加わり、どこか和風のテイストを感じさせる。
こちらの生春巻きは、ココナッツミルクとサワークリームをベースにしたクリーミーなソースでいただく。甘辛酸っぱいスイートチリソースとはまたひと味違った魅力が楽しめるだろう。
同店ではこの生春巻きに対して、ワインではなく秋田県『新政酒造』の「白麹仕込純米酒 亜麻猫スパーク」をペアリングする。
こちらは瓶内二次発酵により、シュワシュワとした自然な発泡が楽しめる活性にごり酒タイプの「亜麻猫」。爽やかな香りと共に「新政」特有の伸びやかな酸味が感じられ、生春巻きのクリーミーかつ酸味のあるソースと混ざり合うときの一体感は格別。さすが!と唸る組み合わせだ。
ベトナムに欠かせない発酵食品「腐乳」を使った絶品肉料理
最後にご紹介するのは、ぜひ食べていただきたい「豚の炭火ロースト、アジアンスパイス風味」。八角、カシア(桂皮)、コリアンダーなどのスパイスと、ニョクマム、腐乳を混ぜた特製のタレに漬けこんだ皮付き豚バラ肉の炭火焼きだ。
腐乳とは、中国やベトナム、ミャンマーなどでポピュラーな豆腐の発酵食品。沖縄の「豆腐よう」に近い味わいで、まったりと濃厚なコクと塩気がある。
タレに5日間漬け込んでその風味を十分に移した豚バラ肉は、複雑なスパイスの香りが調和し、どこか親しみを感じる味わい。たっぷりの葉野菜・ハーブと一緒に食べると最高においしい!
そんな炭火ローストには、いまオーストリアで最も注目を集める造り手の一人、『クリスティアン・チダ』によるプレミアムナチュラルワイン「Kapitel I(カピテルアインス)」をペアリング。
オーストリア原種のツヴァイゲルトにカベルネ・フランを組み合わせ、24カ月間に渡ってじっくり醸造。涼し気で軽やかな飲み口と、独特の生き生きとした酸味、ハーブ香が特徴の赤ワインで、たっぷりのハーブに包んだ豚肉を食べた際には、程よく豚の脂質を中和してくれる極上の組み合わせだ。
現在、同店では約400種類のワインや日本酒を常備。もし、お店のスペシャリテを余すことなく楽しみ、かつそれぞれに合ったアルコールを堪能したいというのであれば、全7品の「コースメニュー」と、それに加えてお店オススメのアルコールを合わせた「ドリンクペアリング」をオーダーするのが断然お得でオススメだ。
「カウンターがあるので一杯だけワインを飲みに来られる方もいらっしゃいます」と語るのは、奥さまの桃子さん。
しっかりフルコースでも、二軒目利用でも。どんなシーンであってもごく気軽に楽しめる、それが『An Di』の持つ魅力。誰もが「こんなお店を待っていた!」と感じる、注目スポットが誕生した。
(撮影/岡本寿)
【メニュー】
コースメニュー 5,900円
ドリンクペアリング 4,900円
(アラカルトより)
唐揚げ2P 900円
ティーリーフサラダ 1,800円
エゴマ ノコギリコリアンダー チキンの生春巻き 900円
豚の炭火ロースト、アジアンスパイス風味 2,800円
レモンサワー 900円
グラスワイン 900円~
※価格は税込
An Di(アンディ)
- 電話番号
- 050-5486-9134
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 火~金
ディナー 18:00~23:00
(L.O.21:00)
土・日
ランチ 12:00~15:00
(L.O.13:30)
ディナー 18:00~23:00
(L.O.21:00)
7/11より21:00-22:00でバータイムお食事のアラカルトのご用意もございます、当日お電話でお問い合わせください
- 定休日
- 月曜日
※その他不定休日あり
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。