若いグループがノリで作ったお店とは思って欲しくない
2017年9月29日、25歳のオーナー中尾太一さんによる本格ビストロ『Bistro Plein(ビストロ プラン)』が南青山の一等地にオープンした。「前職からの同世代の知人ら4人で独立」と聞くと若い人のノリで作ったと思われることもあるが、実際は全く異なる。
中尾さんは「飲食業界が楽しい場所になること」「飲食業界を目指す人を増やすこと」を高校生の頃から夢見てきた。
まずはそれを自ら実践するために自身の店を出すことを決意。そのためのステップとして『星野リゾート』の「軽井沢ホテルブレストンコート」で料理人として研鑽を積み、その後グループ全体の飲食部門をマネジメントする統括部で4年間、スープ専門店『Soup stock Tokyo』などを展開する『株式会社スマイルズ』のレストラン事業部で2年間、食の最前線を学んだ。また、学ぶだけではなく同時に、独立に必要な資金500万円を自力で集めたというのも中尾さんの独立に対する強い意気込みを感じる。
フレンチレストランとビストロのいいとこ取り
『ビストロ・プラン』にはシェフの他にソムリエとパティシエがいる。一般的に「ビストロ」とは、ふらっと立ち寄れるカジュアルな店のことをいい、ソムリエだけでなくパティシエまで専属で常駐しているケースは珍しい。
「価格やボリュームはビストロのまま維持しつつも、食材と人にこだわった料理と心温まるサービスを提供していきたい」と中尾さんは言う。このサービス精神は間違いなく『星野リゾート』仕込みである。
食材への強いこだわり
料理をするうえで一番大切にしていることは、食材にこだわるということだ。
看板メニューの「pleinとっておきのオヤサイ」(写真上)で使われている野菜には、こだわりの長野県・蓼科と茨城県・筑波の有機農園の野菜のみを使用している。どれもその日に届いたばかりの新鮮なものばかり。
食べ方は3種類。まずはシンプルにフランス産の岩塩をつけて素材の味を感じ、続いて赤ワインビネガーのドレッシングでさっぱりいただき、最後に土に見立てたほうじ茶と焦がしたオリーブをちりばめた特製マヨネーズをつけ、自然をイメージして楽しむ。もちろんマヨネーズも自家製で、白ワインビネガーを使用することで、ワインのあてになるよう作られている。まさかこの植木鉢の土ごと食べられるという驚きの料理に、仲間との会話もはずむ。
「海の幸をそのまま煮込んだアクアパッツァ」(写真上)に使用する魚は、築地で卸業を行う『星野リゾート』時代の同僚の目利きで直送してもらっている。
その日に入った良い魚(写真上・金目鯛とホウボウ)のみを送ってもらっているため、中尾さんですら何が届くかわからない。自分のことをよく知る友人だからこそ成し遂げられる連携である。調味料をほとんど使用しないアクアパッツァは、素材の味が格段に引き立ち、上品な味わいとなる。
牛、豚、鳥を使った「本日の厳選肉 三種盛り合わせ(200g)」(写真上)はどれも低温調理でじっくりと焼きあげるため、うまみがギュッと閉じ込められている。なかでも豚肉は、一週間に数十頭しか世に出回らないという栃木県産の「あさの豚」を使用している。また200gとあるが実際ははるかにそれ以上のボリュームがある。良い意味でビストロらしい大雑把さと、中尾さんのホスピタリティーを感じずにはいられない。
グランプリ受賞暦をもつ若手パティシエが作る魅惑のデザート
食後のデザートを作る佐藤有希さんは専門学生時代、若手パティシエ日本一を決める「軽井沢スイーツ博コンクール2011」にてグランプリを受賞した経歴を持つ。
人気メニュー「チョコレートのコンポジション ヴェリーヌ仕立て」(写真上)は店名でもある”plein(プラン)”=溢れる という言葉をイメージした。いざ食べようとスプーンを持つと、誰もが驚くに違いない。金属製に見えるこのスプーン、実はチョコレートでできている。他にも遊び心がいくつもあり、味だけでなく楽しさをも加速させてくれる。中尾さんもデザートに関しては一切口を出さないほど、佐藤さんを信頼している。
ちょっと贅沢をしたいとき、まず最初に思い浮かぶお店に
「目標は、ちょっと贅沢をしたいときに、まず最初に思い浮かぶ店になることです」と中尾さん。
若さばかりが先に注目されるが、素材、味、雰囲気、サービスはそれ以上にフォーカスされるべき実力を持っている。私たちの行きたいお店リストの上位に『ビストロ プラン』がランクインするのも、そう遠くないだろう。
【メニュー】
pleinとっておきのオヤサイ 1,300円
海の幸をそのまま煮込んだアクアパッツァ 2,500円~
本日の厳選肉 三種盛り合わせ 2,900円~
季節のヴェリーヌ・チョコレートのコンポジション ヴェリーヌ仕立て 900円
※価格は全て税別
Bistro Plein(ビストロ プラン)
- 電話番号
- 03-6452-6077
- 営業時間
- 水~土 17:30-23:30(23:00 L.O.)、日 17:30-22:00(21:30 L.O.)
- 定休日
- 月曜、火曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。