東京・白金台の白金商店街の一角に店を構えるワインレストラン「Ordi-verre(オルディヴェール)」。
マンションの地下1階という立地ながら、エントランス前にはテラスが設けられ、ほどよい開放感。さりげなくアンティークが配置された店内は木目でシックにまとめられ、心地よくリラックスできる雰囲気に満ちている。
客席は4席のカウンターを含めて16席。小ぢんまりした空間でありながら天井高は3.5mあり、ほどよい開放感と親密感が同居する。
「固苦しくなく、ナチュラルな雰囲気の店にしたくて」と話すのは、同店のオーナーソムリエ、戸田健太郎さん。戸田さんはイタリア料理の料理人から、ワインの魅力に次第に惹かれ、ソムリエを志す。丸ビル『オザミトーキョー』のソムリエを経て、『ミシュランガイド東京 2009』より一つ星に輝いている有名フレンチ『ル・ブルギニオン』に2007年よりマネージャー兼ソムリエとして10年近くキャリアを磨いたのち、満を持して独立した。
格付けボルドーから気鋭の自然派まで、幅広いワインのラインナップ
『オルディヴェール』の主役は、戸田さんが入念にセレクトしたワイン。エントランス脇の一角にはウォークインセラーがあり、200種以上のワインをストック。
ボルドーやブルゴーニュのクラシックタイプのワインと、気鋭の造り手による自然派ワインを両方充実させており、幅広い楽しみ方ができるのが大きな特徴だ。70年代のボルドーの古酒を記念日に開けることもできれば、注目のニュージーランド生産者のビオワインを試すこともできる。オンリストされていないものもあるため、戸田さんに相談すれば、好みに合う、ベストの一本をチョイスしてくれる。よほどのワイン通でない限り、ソムリエとのやり取りはとかく緊張しがちだが、戸田さんの気さくで温かな接客は、お客をホッとくつろがせてくれる。
▲ソムリエ・戸田さんのセレクトワイン。
左から「シャトー・グリュオー・ラローズ 1975」 「シャンボール・ミュジニー ダニエル・モワンヌ・ユドロ 1978」 「サトウ・ワインズ ピノ・グリ ラティピック 2015」 「シャトー・レスティニャック ヴァン・ド・フランス・ブラン・“レ・ブリュム”2016」
『シェ・イノ』出身の若手シェフによる、ワインに合う素材派フレンチ
料理は6,000円と8,000円の日替わりのコースが主体。素材を生かした本格フレンチだ。
戸田さんの頼もしい相棒としてシェフを務めるのは飛松裕之さん。福岡の『メゾン ド ヨシダ』を経て東京・京橋のグランメゾン『シェ・イノ』、系列店の日本橋『ポンドール イノ』で計5年間修業した後渡仏。ブルゴーニュにある有名店で魚料理、肉料理を任される。30歳と若手ながら、戸田さんの選ぶボルドーやブルゴーニュの古酒にもぴたりと寄り添う、重厚な味わいのクラシックな料理も得意だ。「しっかりとしたフランス料理でワインを存分に楽しんでほしい、という共通の思いがありますね」(飛松さん)。
たとえば前菜の「鴨胸肉とフォワグラのテリーヌ 柿のサラダとパンデピス」(写真上)。鴨肉とフォワグラの濃厚な風味が重なり合い、ふわりと香るスパイスが絶妙なアクセント。鴨につられてつい、重厚な味わいのボルドーやブルゴーニュの赤ワインを合わせてしまいそうだが、戸田さんがすすめる1本は遅摘みのブドウで作られた、酸もしっかり感じられる甘口の貴腐ワイン「シャトー・レスティニャック “レ・ブリュム”」。濃厚なフォワグラと鴨の風味に、上品な甘さと酸味が溶け合い、至福の味わいに。先入観にとらわれず、戸田さんのセレクトに身を委ね、未知のおいしさとの出逢いも楽しんでみたい。
8,000円のコースから、アミューズの「リンゴとセロリのムース コンテチーズとヘーゼルナッツ」(写真上)。
リンゴとセロリのピュレに生クリームを合わせてムース仕立てにし、クレソンとレッドキャベツのスプラウトを添え、コンテチーズをたっぷりと削りかける。ふくよかな味わいの秋らしいワインに合わせるイメージで作られる。
主菜「うずらのファルシー ソース ヴァンジョーヌ」(写真上)。豚足とキャベツを詰めたうずらの肉をキャベツで包み、フランス・ジュラ地方特産の長期熟成ワイン、ヴァン・ジョーヌ風味のソースを合わせた。付け合わせには鳥取産の海藻農法で育てたニンジンとネギ、ジャガイモのピュレを添えて。
料理のもう一つの大きな特徴は、戸田さんの出身である鳥取産の食材をメインに使っていること。二人で食材を求めて、鳥取まで旅したこともあるそう。ときには自身が修業したブルゴーニュの思い出を料理で表現することもある。料理に合わせ、器も鳥取の窯元の和食器や、フランスのリモージュ焼を自在に組み合わせている。
時間帯ごとに楽しめるサービスを
コース料理は20時半までで、22時まではアラカルト、22時からはワインバー営業と、時間帯によって楽しみ方が変わるのもユニークだ。ワインバータイムには「パテ・ド・カンパーニュ 鳥取県産酔っ払い鹿のテリーヌ」など、ジビエを使った魅惑的なアラカルトが並ぶ。帰宅途中にぶらりと立ち寄り、アラカルトとグラスワインを楽しんでいくお客も。奥のカウンター席で戸田さんと会話を楽しみながら、ひとりグラスを傾けるのもいい。
「ワイン初心者の方も、気軽に足を運んでほしい。ワインと料理で、幸せな時間を過ごしていただいて、人と人の輪が繋がればうれしいですね」という二人。息の合った若手ソムリエとシェフがタッグを組み、今後どんな表情を見せてくれるか楽しみな店だ。
撮影:平瀬夏彦
【メニュー】
コース(18:00~20:30) 6,000円(その日のおまかせのコース)、8,000円(プリフィクスコース)
アラカルト(20:30~22:00) 2,000円~
バータイム(22:00~フードL.O.24:00) パテ ド カンパーニュ 鳥取県産 酔っ払い鹿のテリーヌ 2,000円 ほか
グラスワイン 9種 1,000円~
ボトルワイン 6,000円~
※価格は全て税抜
※サービス料は別
Ordi-verre(オルディヴェール)
- 電話番号
- 03-6874-3380
- 営業時間
- 月~土 18:00 ~25:00(金曜日は26:00まで)
- 定休日
- 日曜、第3月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。