「山椒は小粒でもピリリと辛い」。ご存じ、小さな体でも才能や気性が優れている様子を山椒の個性的な味で例えたことわざだが、あの小さな実が隠し持つ爆発力ときたらたしかに侮れない。実山椒をうっかり踏みつぶそうものなら、たった一粒から放たれる鮮烈なアロマで、たちまち辺りは濃い夏の香りに支配される。
そんな山椒独自の風味を追求した“刺激系”ラーメン店『SHIBIRE NOODLES 蝋燭屋(ろうそくや)』が2017年10月11日、銀座3丁目にオープンした。
軽快なジャズが流れる昭和レトロ風の店内。カウンター14席の小さな空間を満たす醤(ジャン)と思わしき芳香と、鼻の奥がつんとすぼまるような爽快なフレーバーに、早くも喉が鳴る。「自分の店でも気が付いたら山椒を使った料理ばかり作っていて。それならいっそ専門店にしてしまおうと」と話すのは、店主・片桐豊さん。中国料理一筋20年、国内外の香辛料を試すにつれ“痺れ”の世界観に魅了されていった。
ちなみに店名に“蝋燭屋”と付けたのは、開店前、店を出す場所が“ガス灯通り”という呼び名と知ったから。「古き良きものが好きで。今は電気ですが、その前はガス灯、さらに前は蝋燭の時代。その雰囲気を再現したくて」と片桐さん。“SHIBIRE”と“蝋燭”。一見、無関係に思える店名には、実は古き銀座へのリスペクトが込められていた。
痺れる、だけじゃない。刺激をうまみが下支えする
メニューは「麻婆麺」、「担々麺」、「酸辣湯麺」、「汁無し担々麺」の4種類の麺のほか、「麻婆ライス」や「豚角煮ご飯」も。ほとんどの料理に使う山椒は、種類によって味も香りも変わるからと四川や和歌山などから取り寄せた数種類を、麺は『三河屋製麺』の中太麺/細麺の2タイプを使い分ける。
看板に据えるのは「麻婆麺」(写真上)。特製の醤を豚挽き肉やネギ、葉ニンニク、絹ごし豆腐と炒め、自家製ラー油や漢源山椒と呼ばれる上質な四川産の花椒(ホアジャオ)で香り高く仕上げた麻婆豆腐が、麺を覆い隠すほど乗る。仕上げにはらりと振りかけた花椒が湯気に乗って鼻腔を満たす。
まずは麻婆豆腐をひと口。舌から脳の刺激回路へビビビッと電気が走り、味覚の上限が一気にぶち破られる。目の覚めるような山椒の乱舞。口中が瞬く間に痺れる感覚に支配されるが、それでいて凝縮したうまみが下支えしているため、味も深い。粗挽き豚肉の食感もいい。
内から中太の麺を引き出せば、ふたたび山椒フレーバーが顔を覗かせる。
ゴマの海でさりげなく光る山椒
山椒をよりエレガントに味わうなら「担々麺」(写真上)だ。白ゴマとピーナッツからなるペーストを鶏ガラや豚の背ガラ、貝だしから引いた複雑美味なブレンドスープで溶いたもので、視覚に刺さるような鮮色のスープを一口含むとどうか。
ゴマのパワフルなコクが舌を包み、濃い風味が途絶えることなく鼻腔に飛び込んでくる。息継ぎが間に合わないほどのゴマの海。そこに仕上げの花椒が繊細なアクセントをもたらしている。坦々スープと好相性の細麺、砕いたピーナッツや揚げネギによるメリハリ食感も楽しい。
「担々麺」には、卓上に用意されている “ぶどう山椒オイル”が合うそうだ。一さじ加えてみると、なるほど。青々しい清涼感がたまらなく魅力的で、花椒とはまた異なる風味を楽しめる。
「麻婆麺」「担々麺」「汁無し担々麺」の3種類は3段階の辛さから選べ、さらに“痺れ激増し”や“辛さ激増し”も選択可だ。
電気が走るがごとく刺激的なSHIBIRE体験。店を後にしてなお全身を包む芳香も印象的だ。
【メニュー】
麻婆麺 1,000円
酸辣湯麺 1,000円
担々麺 1,000円
汁無し担々麺 980円
※価格は全て税込
SHIBIRE NOODLE 蝋燭屋
- 電話番号
- 03-6263-2970
- 営業時間
- 月~土 11:30~15:30、17:30~22:00(L.O.21:45)
- 定休日
- 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。