#012 持て成しが生まれる街、北千住
ファシズムに覆われた、どこかの島国のオリンピック招致に使われた時には限りなく胡散臭い言葉に聞こえたが、本来「おもてなし」とは、悪い言葉でも習慣でもない。ホスピタリティと言ってもいい。
酒に酔い、人の情に酔いながら、北千住の街を漂泊する度に、「持て成し」という日本人の美徳について考える。宿場町として栄え、後にはサラリーマンたちの聖地として、立ち飲みからグランドキャバレーまでが立ち並んだ城北の首都、北千住。
東京藝大の千住キャンパスに始まった大学移転ラッシュの中、「持て成し」の街はまた新しい日々を迎えようとしている。
元来、北千住という地名は存在しない。足立区の北千住駅周辺の地域を漠然と指した通称だ。しかも、隅田川の向うに隣接する南千住は荒川区、当然、街の風土も気風も異なる。
『大林酒場』の威厳に満ちた料理とサービスや『丸千葉』の劇場型パフォーマンス。どちらも、張りつめた気の上に成り立つ空間だ。しかし、『大はし』も『天七』も、北千住を代表する有名店には緩やかな空気が流れている。一見にも、初心者にも優しいのだ。無論、それはストイックな立石の哲学とも異なっている。
駅を西口で降りた途端から、名立たる名店がひしめき合う酒都、北千住。今回はそんな街の実力に打ちのめされる、魅惑の3店をご案内しよう。老舗もあれば、最新もある。
しかし、その根底に流れる、優しさに裏打ちされた「持て成し」の情だけは、決して変わることはない。
・東京の東だけのローカルフード、串煮込みとほうじ茶割りに酔う店。
・思い出横丁の名店で学んだ、モツの聖地の若きヌーヴェルバーグ。
・クラフトビールの未来を北千住から開く、10種のタップが並ぶスタンド。
さて、そろそろ城北の優しい酒都、北千住の街に融けよう。
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