#013人に優しき名残りの花、西小山
神楽坂、浅草観音裏、渋谷円山町界隈、花街の果ての街角にはいつまでも艶が満ちている。
「しだれ柳に桜の並木 赤いぼんぼり灯りがともりゃ 立会川のせせらぎに うつる島田のあだ姿♫」。
昭和の初めから約30年間、西小山は政財界人や文人たちが遠くからも押し寄せる著名な花街だった。
しかし、改良工事で立会川が暗渠(あんきょ)になり、車道になってしまった頃から少しずつ花街は廃れていき、今は桜並木だけが往時の面影を残している。
平成18年、高架の線路によって品川区と目黒区に分断されていた西小山は、線路と駅が地下に入ることにより1つの街に繋がった。小さな商店街が途切れては続く庶民的な街並は、各方向のアクセスが便利になり、お隣の武蔵小山と共に住宅地としても人気の街になっていく。
かつての料亭跡地はほとんどがマンションに姿を変え、街には庶民的な飲食店や個人商店が連なり、独特の温かいムードを奏でている。
普段使いできる街中華の名店『丸吉飯店』や『らーめん村』、武蔵小山から移転して来た『平和軒』。オムライスで名高い、西洋料理の『杉山亭』。週末にはダンサーたちが押し寄せる、ソウル・バーの『海老重』。日本酒の品揃いで高名な『かがた屋酒店』など、ありとあらゆる住民のニーズが自分の街で叶う。
ここは、一度住んだら、みんなが離れたがらない街だ。
今回は、ムサコの影に隠れがちなニシコの知られざる至宝をご紹介したい。
高嶺の花だったパフェを庶民の味覚にした果物屋さんのイートイン。
クラフトビールとスパイスカレーに舌鼓を打つ女性2人のブックカフェ。
グラタンで飲(や)って〆には手打蕎麦なんて夢が叶う地元民御用達居酒屋。
マンション地下に忽然と広がるソウルミュージック好きのパラダイス。
さて、そろそろ花の名残りを追いかけにニシコの街に繰り出そう。
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