注目度急上昇中!「NYワイン」の魅力【ワインナビゲーター・岩瀬大二】
ワインの世界でよく使われる言葉に「テロワール」というものがある。狭義でいえばそのワインを生む、土壌や気候、地形ということだが、酒旅ライターであり、業界でも旅情派と半分あきれられた感じでいわれる僕は、もっと広義、いや「義」なんて偉そうなことではなく気分的に、その土地の光、風、人、食、酒場、ライフスタイル、そして空気感なんていう、数字でも化学・科学でも実証できそうもない要素まで含んでもいいんじゃないかなあと思っている。だから現地のワイナリーを訪ねる旅は楽しい。それを存分に感じられるから。
NYはワイン生産量年間約1億7,500万本という一大ワイン生産地
そんな旅の中で、まさに広義のテロワールを強く、強く感じられた場所がニューヨークだ。
すると必ず帰ってくるのはこの言葉だ。「ニューヨークでワイン? 造ってるの?」。知られていないのも仕方がない。3、4年前はワイン愛好家でさえも「?」を連発するほど、ニューヨークのワイン事情は日本では伝えられていなかった。
でも、実は、ニューヨーク(以下NY)州は、全米では断トツのシェアを持つカリフォルニア州が別格の1位にはなるが、ワシントン州に続く全米3位、年間約1億7,500万本という生産量を誇り、約400ものワイナリーが個性を競う一大ワイン生産地だ(数字は2015年)。近年、日本でも入手できるし楽しめる店も増えてきて、業界、愛好家の間でも注目度が上がっている。
いくつかの生産エリアがあるが、東北部、カナダや五大湖に近い、氷河期に形成された大小11の湖からなるフィンガー・レイクスとニューヨークシティからほど近いロングアイランドが中心地。
その2つのエリアを訪問することができ、様々なワインをテイスティングする機会を得たが、その土地自体が高品質なワイン造りに適しているという実感とともに、広義のテロワールで、特にライフスタイルというか人生そのものというか、なんだかアメリカの近代文学や、ロックソング、それはブルース・スプリングスティーン、ボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクル、そして、ビリー・ジョエルのリリックにあるような物語、その登場人物たちとの親和性だった。
だって、訪問したワイナリーのオーナーのポロシャツ、その背中に書かれていたのは“I’m in a New York State Of Wine”。それはロック好きならニヤリとするであろう、ニューヨーカー、ビリー・ジョエルの名曲“New York State Of Mind”のフレーズのアレンジ。余談だけれどこの旅で、ビリー・ジョエルのマディソン・スクエア・ガーデンでのライヴを生で見ることができたのだけれど、この曲をニューヨークで聞ける喜びで涙し、このワイナリーの風と陽ざしを思い出し、また涙したことを思い出す。品質の良さはもちろんだけれどニューヨークのワインと物語の親和性もまた魅力。
さて、その2つのエリアで出逢ったワイナリーの中から強く印象に残ったワイナリー&ワインを紹介しよう。
この記事にはまだ続きがあります
今すぐ続きを読む
プレミアム記事をすべて読むには、ぐるなびプレミアム会員登録が必要です