訪れたのは京都市・北区、大徳寺の近く。静かな雰囲気の住宅街の路地裏に、ひっそりと佇む店が一軒。少し前までカフェとして使われていた古民家を改装して、2018年2月3日に誕生したのが、今回ご紹介する町家フレンチ『bistro Chic(ビストロ シック)』だ。
京都らしさのある町家の玄関にかかる青い暖簾が目印。
靴を脱いで入店すると、畳の間にカウンターとテーブルが配された小さな空間が広がっている。「いらっしゃいませ」と気さくに声をかけてくれたのが、同店を営むオーナーシェフの石橋賢さんと奥様の杏奈さんだ。
京都出身の石橋さんが、料理の道をスタートさせたのは東京にあるポルトガル家庭料理店『マヌエル コジーニャ・ポルトゲーザ』から。シュラスコを主体とした系列店で修業したのち、地元へ帰郷。その後、ビストロやブラッスリーなど、様々な業態の飲食店で腕を磨いたのち、独立することとなった。
『ビストロ シック』のコンセプトは「国産ジビエ×自然栽培野菜」。
「ポルトガル料理店でジビエ料理に携わったのが最初。その後に勤めた飲食店でも提供する機会が多々あり、突き詰めていくほどにジビエの魅力にハマっていきました」と石橋さん。
同店で主に扱うジビエは、京都美山産の鹿や猪。時には岩手県産のツキノワグマや国産のウサギやハト、鴨も加わる。独自のルートより骨付きの状態で仕入れているが、石橋さんにとってジビエの魅力は"扱いにくさ"にあるとか。
「野性味ある赤身の味わいがジビエの魅力ですが、クセが強すぎると皆様に敬遠されますし、和らげすぎると個性がなくなってしまうため、バランスを考えながら調理しないといけません」。
さらに、野生の動物は肉質が硬くパサつきやすいのが難点。
「ここでは骨付きの状態でドライエイジングさせますが、ウェットエイジングで保湿。不必要な水分を蒸発させて、必要な水分を内側へ閉じ込めることでパサつきを軽減するようにしています」と石橋さんは語る。
そんな自家熟成させたジビエと自然栽培の野菜を合わせ、初めての方にも食べやすいフランス料理を提供する『ビストロ シック』のメニューを、夜のコースからいくつかご紹介していこう。
まずは、エントリーの一皿目「赤ワインの漬け鮪とそのソース 丹波産えんどう豆とポワソンのジュレ、山芋のソース 紫蘇の香り添え」(写真上)。白・緑・赤のコントラストが群青色の器に映える、さながら小宇宙のような一皿に感嘆の声が上がることは間違いない。
鮪は、日本酒に梅干を入れて煮詰めた煎り酒に、鮎の魚醤、ナツメグ、バルサミコ酢を加えたタレを使用。さっぱりとした風味は、料理のスターターとして、また暑い季節に食欲が落ち気味な人にもぴったりだ。黄緑色が美しい丹波産えんどう豆は、日本料理の技法を取り入れて魚のジュレで巾着風に。ほくほくした食感と爽やかな味わいをジュレが包み込み、山芋のソースと一緒になってつるんとお腹に入っていく。
続いて、メインの肉料理「美山産 鹿腕肉の赤ワイン煮込み 発酵葡萄風味」(写真上)。美山産鹿腕肉を、香味野菜や赤ワインビネガーなどのマリネ液に3日間漬け込んだのち、保湿させて6時間ほど煮込む。
口の中に入れると、ほろほろと柔らかくとろけていくがパサつき感は一切なし。赤ワインソースの深みのあるソースと相まって、噛むほどにうまみが広がっていく。
デザートは「タルトタタン(2018年4月バージョン)」(写真上)。リンゴを使ったフランス伝統の焼き菓子を、ビストロシック風に再構築したもの。リンゴのアイスクリームに、リンゴの皮を煮出して香りを抽出した泡が添えられている。
コースを通して、口に入っていきやすいさっぱりとした後口のもの、食欲を刺激するうまみの強いものと、バランスも考えられて構成されており、食べ終わったあとの満足感はひとしお。「分かりにくい場所にありますが、僕にしか作れない調理を追求していくことで、‟あえて”足を運んでいただける店にしていきたいですね」。
ディナーは要予約、ランチは予約なしでもウェルカム。京都らしい趣のある空間で心温まるサービスを受けながらいただく新星フレンチは、忘れがたき時間のひとつとなるに違いない。
<メニュー>
お昼のコース 3,500円~
夜のコース 6,000円~
※価格はすべて税別
bistro Chic
- 電話番号
- 050-5493-2826
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- ランチ 12:00~15:00
(L.O.14:00)
ディナー 18:00~22:00
(L.O.21:00)
- 定休日
- 不定休日あり
不定休
店休はHP、インスタグラム、FBを確認ください。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。