日本きってのギャルソン、熟練のソムリエ、新鋭シェフの化学反応に期待大
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トレンドというものが、行ったり来たりと弧を描くように進んでいくものなら、今年注目すべきなのはクラシカルな料理かもしれない。そんなことを予感させるレストランが、2018年3月、神楽坂にオープンした『レストラン アロム(Restaurant AROMES)』だ。
この店を仕切るのは、『ペリニィヨン(現 銀座レストランドンピエール)』や『ル・ブルギニオン』など名店の支配人を経て、『オー グー ドゥ ジュール』の代表取締役を務めた岡部一己さん(写真下・左)。業界の中ではサービスの神様と称賛されるほどの、日本きってのギャルソンだ。
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フランス料理の楽しさやカッコよさを取り戻したい――オープンにあたっての店のコンセプトを訊くと、岡部さんの口からは、こんな言葉が出てくる。
「ショーのように華やかなコース料理が次々と出てくる店もいいのですが、ここでは、会話を楽しみ、料理を楽しみ、それに合わせてワインを楽しむ場所というスタイルを追求していきたいと考えています。臨機応変な対応が必要なので、実は店としてはこちらのほうが難しいのです。ただ、信頼できるスタッフが揃ったので、この店ならできるかなと思っています」
岡部さん自身、フランス料理の醍醐味は「多くのスタッフが力を合わせることで、おいしいものができあがること」と言うように、こちらの『アロム』でもチームワークが魅力だ。ソムリエは『オー グー ドゥ ジュール』時代の片腕、糸澤晃さん(写真上・右)に任せた。かつての店を知っているお客からすれば、にんまりしてしまうような強力なタッグだろう。
そして、シェフに抜擢したのが弱冠29歳の永瀬友晴さん(同中央)。
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永瀬シェフ本人は「まさか声をかけられるなんて思ってもみなかった」と驚きを隠せずにいたが、岡部さんは「仕事が丁寧で勢いがある」と信頼を寄せる。
キャリアの長さは違っても、志向する料理は一致した。それは、フランス料理らしいフランス料理とでも言えばいいだろうか。「平成生まれのシェフが、時代に逆行するとしても、現在のクラシックを築きあげる先駆者になっていったら、おもしろいと思いません?」と岡部さんは付け加える。
味わい深く香り高い、絶妙なハーモニーを奏でる絶品の数々
料理に関しても、”チームワーク”がキーワードになっている。永瀬シェフは「厨房だけで料理が完結するわけではなく、ソムリエ、ホールなど全員で完成させていくプロセスは、他の店ではなかなかないので楽しい」と意欲的だ。
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「たとえば、『鴨のグリル』(写真上)は、皮目にハチミツを塗って焼くこともできます。これでもおいしいのですが、ワインと合わせるときにもう少しフルーティな香りがあったほうがしっくりくるということを、ソムリエの糸澤さんとチェックし合いながら詰めていきます」とシェフ。
店名がフランス語で「香り」を意味するように、この「香り」が、店のテーマにもなっている。ブルゴーニュ・ワインの香り、料理の香り。そして、それらが重なり合ったときの香り。
「料理には、必ずどこかに香りを潜ませています。バジルソースにローズマリーに似たカキドオシを加えてアクセントにしたり、ニンジンにオレンジオイルを足したり。ワインの香りと合わさったときに、おもしろさが出てくるようなスタイルが理想です」。
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「北海道サロマ湖から届いた帆立貝のポアレ」(写真上)では、プリプリとした肉厚なホタテを使い、2種類のソースで仕上げる。コンソメを少し効かせたトマトのクラリフェ、焦がしバターのソースであるブールノワゼットに加え、新芽でクセがないクレソンのサラダが香りのハーモニーを奏でている。
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「コンソメスープ」(写真上)は、早春はモリーユ茸、晩春にはタケノコ、秋だったらキノコと具を変えていく。年中提供する定番でありながら季節感を忘れない。
クレソンやタケノコなどは長野の大鹿村から直送されたもの。わざわざ都市部から訪れるお客が絶えない料理旅館を経営する元同僚が送ってくれるという。夏には鮎が直送される予定だというから、今から楽しみだ。
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フォークだけで身がほぐれるほど柔らかい「和牛頬肉の赤ワイン煮込み」(写真上)は、シンプルにフランス料理のおいしさを引き出した逸品。手間ひまをかけ2時間じっくり煮込んでいる。
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熟練ソムリエの技にほれぼれ。400種もの優秀なワインが格安で楽しめる
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店の横に設えられているセラー室(写真上)には、約400種のワインを常備。内訳はフランスワインが8割、なかでも、ブルゴーニュ・ワインが半数以上を占めていることが特徴だ。そのほか、カリフォルニア、オーストラリア、ニュージーランド産などが揃う。
ワイン好きの方にはこれだけ優れたボトルが揃っているだけでたまらないだろうが、さらに驚くのが、その価格。ワインのインポーターである『株式会社ヴィノラム』が親会社だけあって、「え、この値段でいいの?」という料金で提供されている。
あまり多すぎて選べないのでは? と心配する方もいるかもしれないが、熟練のソムリエがいるので安心。たとえば、今回の取材の際につくってもらった料理3品に合わせて、ソムリエの糸澤さんに選んでもらうと、すぐさまこちらの3本(写真下)をセレクト。
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まず「帆立貝のポアレ」は、海の香りとソーヴィニヨン・ブランのミネラル感とを合わせ、フランス・ロワール地方の「サンセール」。生産者はアルフォンス・メロ。
続く「コンソメスープ」の手長エビは、シャルドネと相性がいい。さらに深みのあるダブルコンソメを使っているので、シャルドネの中でも風格のある、バンジャマン・ルルーが手掛けた「ピュリニー・モンラッシェ」。
「和牛頬肉の赤ワイン煮込み」には、南仏コート・デュ・ローヌの生産者レイモン・ユッセグリオ・エ・フィスが手掛けた「天使の分け前(La Part des Anges )」。
シラー(酸味が強めでスパイシーな風味をつくるブドウの品種)やグルナッシュ(甘みの強い風味をつくるブドウの品種)などをブレンドしたバランスの良い赤。こんな感じでオススメの一杯が小気味よく出てくる。
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『アロム』のワインは、種類の豊富さはもとより、コンディションの良さが何よりもセールスポイントだと糸澤さんは言う。
「ワインのコンディションに気を遣って温度管理が可能なリーファーコンテナを使うところも増えていますが、実は、船で赤道直下を通るときに結構温度にブレが出てしまうのです。そこで、うちではオリジナルのコンテナを作り、プラスマイナス1度の状態で輸送されたものを提供しています」
理想とするのは、“大人の遊び場”
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メニューはコースだけでなくア・ラ・カルトも充実。ワインリストはなく、セラーからソムリエと一緒に選ぶか、お任せするというスタイルは、一流店ではかえって珍しくなったかもしれない。けれども、岡部さんは「だからこそ、“大人の遊び場”として、お客様に楽しんでもらえる店を目指したい」と言う。
そんな大人の遊び方を神楽坂が地元の方もできるように、年中無休で、深夜2:00まで営業しているところも嬉しい。
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店のレイアウトも秀逸。ヨーロッパなどの名店には、バーカウンターで軽く飲みながら待ち合わせ、奥のダイニングに移動して食事をするというところが多いのだが、さほど大きくない店でありながら、このスタイルを実現しているレストランは、日本では珍しいだろう。
入口付近にあるカウンター席は、バーのように気楽に飲める雰囲気を持ち、その奥にあるダイニングルームをちらっと見ることができる。
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少しゆっくりとしたいときには、ダイニングルームに移ればいい。黒板の雰囲気が、パリにあるビストロの風情を感じさせる。
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さらに奥に進むと、プライベート感が高まる。カーテンで仕切ることも可能で、半個室として使える。
与えられるのではなく、おいしい料理、おいしいワインを自らの好みで選んでいく。もちろん要所要所、一流のサービスマンがさり気なくフォローしてくれる。
仕事帰りに一杯飲んだり、ワインを中心にア・ラ・カルトをつまんだり、ディナーコースをしっかりと食べたり、その後のバーとしても使ったりと、さまざまなシチュエーションで使いこなすことができる店。
訪れるお客の気分やシチュエーションに合わせて変幻自在に姿を変え、かゆいところに手が届く貴重な店は、新店ラッシュの神楽坂の中でも、独特な輝きを放っている。
撮影:榊 智朗
【メニュー例】
ディナーコース
Dinner Menu Aromes(7品) 6,800円
Dinner Menu Bouquet(9品) 9,000円
ア・ラ・カルト
シェフ特製野菜のテリーヌ 2,200円
和牛頬肉の赤ワイン煮込み 2,800円
フランスシャラン産 鴨胸肉のロースト 4,200円、 (ハーフ) 2,600円
北海道サロマ湖から届いた帆立貝のポアレ 1,200円
※上記価格は全て税抜
※メニューは、食材の仕入れ、季節によって変わります。
レストラン アロム
- 電話番号
- 050-3313-7545
- 営業時間
- ランチ:11:30~15:00(L.O.13:00)、ディナー:17:30~24:00(L.O.21:30)、バー:17:30~24:00(L.O.22:30、ドリンクL.O.23:30)(お待ち合せや、2件目に。ワインだけでも大丈夫です。)
- 定休日
- 毎週水曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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