最高の焼鳥を提供するために、席数もメニューもしぼり切る
優れた焼き師を多数輩出していることで知られる、中目黒の『鳥よし』。そこで長年にわたり腕を磨いてきた西口和樹さんが独立し、2018年3月26日『とり口』をオープンした。場所は、焼鳥激戦区として知られる五反田である。
桜田通りを進み、目黒川を渡ったところにある『TSUTAYA』裏手という静かな通りだが、入り口わきの窓から見える店内の賑わいから、お客の楽しそうな様子が伝わってくる。
店内は18席のカウンターと、奥に4席の個室。焼き手である西口さんが1人でできる仕事量から割り出した席数だ。
席数もミニマムなら、メニューもシンプル。5,800円の「おまかせコース」のみという潔さだが、このコースには焼鳥10串に副菜10品が付く。最初に、副菜のうちの4品が一度に運ばれてくる。
口開けの、鶏のスープで煮込んだトロトロの「鶏のおかゆ」(写真上)が、空腹の胃をやさしく包んでくれる。
一転して「ソラマメとパルミジャーノチーズのトリュフオイルがけ」(写真上)は、焼鳥店らしからぬ本格イタリアン風の濃厚な味わいの肴で、「こう来たか!」と思わずにんまり。
なかでも最も心を動かされた副菜が「キンカンとリコッタチーズの白和え」(写真上)。皮ごと食べるキンカンの爽やかさ、リコッタチーズのまろやかさ、トッピングしたヘーゼルナッツの香ばしさがひとつになり、至福の味わい。
4品目は「アスパラガスのお浸し 山椒風味」(写真上)。刺激的な香りで、キリッと気分を引きしめて焼鳥を待つ。副菜の完成度の高さに、コースへの期待がどんどん膨らんでいく。
副菜は「名脇役」。主役の焼鳥は王道からはずさない
副菜をプラスしたコース仕立ては、この店を運営する『株式会社JO』の代表、尾山淳さんのアイデア。尾山さんは五反田を中心にブランド『それがし』で多業態の飲食店を運営し、いずれも繁盛させているが、おいしい料理はたくさんあるのに、なぜ焼鳥店の副菜は「鶏わさ」や「鶏皮ポン酢」などの定番が多いのだろうと、ずっと不思議に思っていたという。今までの飲食店運営の経験を活かし、新しいスタイルの焼鳥店を作りたいと構想を温めていた時に西口さんを紹介され、お互いに意気投合。この店が誕生した。
最初の副菜4品を食べ終えると、いよいよ全10本の焼鳥が始まる。
主役の焼鳥は「王道」を貫く。1本目は、やわらかいのに力強いうまみを持つ「もも」(写真上・左)。ひとかじりで湧き出す肉汁にこってりしたたれがからむ、直球のおいしさだ。次の「つくね」(同右)は、やっと串に刺さって形を保っているほどの柔らかさなのに、肉の質感がしっかり感じられる。
▲選び抜いた鳥取県産大山(だいせん)地鶏と滋賀県産淡海(たんかい)地鶏を使用
佇まいの美しさからおいしさが伝わる
焼鳥のおいしさを決める最重要ポイントのひとつが“串打ち”だと西口さんは言う。その言葉どおり、3品目の「ささみ」(写真下)、4品目の「砂肝」はほれぼれする端正な美しさ。
おそらく串に刺した時の姿を綿密に計算してカットしているのだろうし、だからこそ均等に火が通り、理想の食感が実現できる。美しく整ったフォルムは、おいしさの証なのだ。
ドリンクも秀逸。「リッチレモンサワー」(写真上)は、和三盆で煮たレモンとそのシロップ入り。「山椒ジントニック」もさっぱりした味わいが焼鳥によく合う。
満腹なのに、止まらない!副菜マジック
コース後半の焼鳥は「やげんなんこつ」、「ぽんじり」、「ハツモト(肝臓と心臓をつなぐ部分)」、「せせり(首)」と、変化に富んだ希少部位が続く。次第に満腹になってくるが、「カラスミとポーチドエッグ」、「徳島のフルーツトマト」「鶏のフリット」など、クオリティの高い副菜が合間に挟まることで、食べ飽きない。
そして、焼鳥の最後を飾るのは、「手羽先」(写真上)。食べやすいように骨を抜き2つにカットされている。皮のパリパリ感と身のジューシーさを同時に味わえる。
鶏の上品なスープでいただく「にゅうめん」のあと、最後に、季節のフルーツを使ったかき氷(写真上)が登場。マンゴーのピューレとカットした果肉がたっぷりかかっている。かき氷も、専門店のようにシャープな薄さ。最後の最後まで感動が途切れない、見事な構成のコースだ。
尾山さんと西口さん2人のこだわりは、焼鳥をアレンジせず、王道を追求すること。
そして副菜、ドリンク、知識豊富なスタッフの質の高いサービス、この脇役の巧(うま)さが、西口さんの“王道の焼鳥”の確かな技を支え、その魅力を一層光り輝かせている。
【メニュー】
おまかせコース 5,800円
リッチレモンサワー 800円
山椒ジントニック 800円
※価格はすべて税別
とり口
- 電話番号
- 050-5488-0841
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 17:00~23:00
21:30 最終入店
- 定休日
- 不定休日あり
※年末年始を除く
- 公式サイト
- http://www.toriguchi.jp/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。