築地で買った食べ物は持ち込み自由! 世界中のナチュラルワインと共に手ごろに楽しめる「ワイン角打ち」

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
♯角打ち【築地】

2018年08月09日
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築地で買った食べ物は持ち込み自由! 世界中のナチュラルワインと共に手ごろに楽しめる「ワイン角打ち」
Summary
1.「築地」本来の魅力を発信する神コスパの「角打ち」を発見!
2.世界中から集めたレアなナチュラルワインが格安で飲める
3.築地場外市場で買った食材は持ち込み自由!

「築地」本来の魅力を伝えてくれる店を発見!【酒旅ライター・岩瀬大二】

ここ数年、築地の場外市場を歩いているとその様変わりに驚く。建物や店が変わっているわけではないのだけれど、雰囲気がどこかエキゾチックなのだ。

原因は、外国人観光客の多さとその築地での過ごし方だ。原因などと書くとネガティブな印象もあるだろうけれど、僕自身はとてもポジティブなことと捉えている。彼らにとって大都市にユニークで上質なものが集まる大規模なマーケットがあることは驚きだ。食と食に関連するテーマパークでもある。彼らの国に近い食材もあれば、オルタナティブなものもある。鮮魚はもちろんだが、カツオ節や海苔に玉子焼き、ウナギのかば焼きにつくだ煮から、さらには包丁あたりも注目されている。

以前、ニューヨークのトップソムリエを案内したが、カツオ節専門店で我々が当たり前だと感じている香りを熱心に、ワインのブラインドテイスティングのようでもあり、香水の調合でもするかのような貪欲さで嗅ぎ分けていたことを思い出す。

その時、彼が食い入るように見ていた包丁の店で、意外にも60を超えているであろう女将さんが流ちょうな英語で対応してくれたことも印象的だった。そう、彼らが求めているのは安売りではない。ここに上質な物、プロが目利きするようなものが集まっているということこそが大切だ。そして彼らにとって発見があること。未知との出逢いといっていい。露店で時にがさつだけれど、だが百貨店クオリティであり、発見ができる場所。それが築地場外市場の魅力。

外国人客のおかげというわけでもないのだろうが、僕たちも気づく。築地場外市場の魅力が、その気軽さと上質の見事なバランスにあることを。そして発見があることを。日本人だってここにくると知らない食材やその生かし方と出逢うことができる。僕たちも安売りを求めているのではない。発見を求めているのだ。そこに目を付けた店がある。2016年11月にオープンした、本来の築地の魅力を伝えてくれる店だ。

ナチュラルワインが主役! しかも値段もお手ごろ

こちらは、店主厳選のワインと食材が買える店であり、角打ちとしても楽しめる店。“としても”と書いたが、酒旅ライターとしてはもちろんワイン角打ち狙いで訪れたのが最初。

ワインはナチュラル系が中心。日本ワインや近年注目されているオレンジワインも多彩に揃う。常時グラスで10種類程度が用意され、500円~1,200円とうれしい角打ちプライスだ。

他にも店主が直接、生産者と交流、飲めば体にすっとはいってくる自然体の日本酒やクラフトビールもある。食材も同様、店主にとって生産者や手掛ける人たちの顔が見えるものがセレクトされている。

店主の岩井穂純さんは、元々は神楽坂の本格フレンチのソムリエやワインの輸入会社に務めるなどワインの専門家。現在もオーストリアワインやナチュラルワインに関しては、プロフェッショナルも通うワイン学校でクラスを持つほどのエキスパートだ。

赤ちょうちん好き、酒場好きにはハードルが高そうにも思えるが、築地場外市場に溶け込む気軽な雰囲気があり、なにより岩井さん自身が「こちら側」の楽しい酒飲み。なんといっても明るいうちから飲めるのがいい。岩井さんのプロフェッショナル目線と酒好き目線がミックスされた解説も楽しい。平日午前中という僕たちにとってはなんともうれしい「危険な時間帯」もいいし、人通りが落ち着く土曜の午後遅めの雰囲気もいい。いずれにしても、店から見える多くの外国人を含めた築地場外市場を行きかう人が極上のエキストラだ。

大注目の「オレンジワイン」からマニアックなワインまで勢揃い!

この日のスタートは、岩井さんの得意分野オーストリアから「スーパーナチュラル 2016」(写真上・左)。手書きポップにあるように不思議で、体にしみこむ塩味が心地よい。海なし国のオーストリア。鮮烈で美しい酸、森や高原のグリーンなイメージがわくワインが多いが、岩井さんによると「土壌的にこのあたりは海だった記憶を持っていて、その影響がいい感じで出ています」。

ちなみに築地らしく魚介だったらどういうものをあわせるか? と聞くと、「貝類ですね。リッチな甘みではなくて、シンプルに海の水がジュっと出てくるようなもの。例えばミル貝や、江戸前ならアオヤギなんていかがでしょう?」。江戸前とオーストリア。築地ならではの結びつきが楽しい。

では、白身魚などにあわせるとしたら? と聞いてセレクトいただいたのはポルトガル(写真上)。僕もワインライターとしてがんばっているのだが、ほとんど聞いたことがない地品種のブレンド、さらに独特の栽培方法を採用しているというかなりマニアックなワインなのだが、飲んでみると確かに複雑さはあるが、白身魚全般やイカなどにすっと寄り添ってくれる優しさが心地よい。海洋国でもあるポルトガルと同じく海洋国の日本の食材が結びつく……これもまた愉快なものだ。

続いてフランスはロワールのソーヴィニヨン・ブラン。こちらは注目のジャンルであるオレンジワイン。これに、つまみとして干し柿、豆腐の味噌漬け、そして赤かぶをあわせてみた。つまみとしてオンリストされているものだけではなく、お店で売っているものはその場で開けて切り分けてくれる。買って帰ろうかなと思っていた赤かぶがこのワインに合いそうだったので切り分けをお願いしたのだ。

オレンジワインと発酵食品はよく合う。自然な風味の食材と同じ風合いのオレンジワインの相性は抜群だった。オレンジワインとつまみ3品で1,300円程度。実にお安い贅沢だ。

築地で買った食材は持ち込み自由!

つまみといえば築地場外市場の店ならではの楽しみが、場外市場で買ったものなら持ち込み自由・無料というものだ。いい具合にお店の前にはマグロ屋さん。土曜日の15時を過ぎ、マグロ屋のお兄さんからは「1パック500円だけど、うーん、2つ500円でいいよ!」。ありがたい。

メバチと本マグロを買って、さて、岩井さん、ワインは何にしよう? 「では赤ワイン。クリストフ・パカレのガメイ。産地はムーラン・ナ・ヴァンです」。

飾らない角打ちでさらりと自然派のビッグネームのワインが登場する。クリストフ・パカレは自然派のサラブレッドである生産者。ガメイというブドウ品種はボジョレー・ヌーヴォーでおなじみだが、彼の手にかかれば実にうまみが強く、鮮やかだけれど、深く長い余韻が味わえる。と、ブドウや産地については、以前僕が書いた記事を参照いただきたいが、このうまみとマグロが実によく合う。レベルの高いワインだがグラスで800円とお手軽。マグロと合わせても1,300円。お上品なのか庶民的なのか贅沢なのか、頭の中はうれしい混沌。

目の前で買ったパックのマグロとボジョレーの逸品を楽しんでいて、岩井さんが築地場外市場という場所を選んだ理由に納得した。

「築地場外市場は、安売りではなく良いものを求めて世界から人が集まります。日本を含めて世界中のワインに築地の食材を合わせて楽しんでいただきながら、その良さを伝えることができます。同時に日本人にとっても世界のワインを知ることになり、知らなかった日本に出逢うチャンスでもあります。それも気分よく角打ちとして楽しみながら」

さて、こちらの店の名前だが…

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