日本酒ツウでフリーアナウンサー「あおい有紀」が“和酒”の魅力を発信!
いま空前の和酒ブーム! 日本全国津々浦々、日本酒や焼酎、日本ワインなどの“和酒”が楽しめる店が増加している。けれども本当においしい魅力的なお店は? そのお店のお酒や料理はどう楽しめばいいの?
唎酒師、焼酎唎酒師、一級フードアナリストなどの資格をもち、大のお酒好きとして各メディアで活躍中のフリーアナウンサー、あおい有紀さんがオススメする「とっておきのお店」を訪れ、じっくりとその魅力を紹介。今回は、東京・四谷にのれんを掲げる鮨の名店に伺った。
予約のとれない寿司の名店『すし匠』総本山の魅力とは?
今回、訪れたお店は予約が取れない人気の鮨店『すし匠』です。こちらは江戸前のお鮨のすばらしさはもちろん、日本酒の品揃えが充実していて、日本酒ツウの方々にとっても憧れのお店。私も、系列のお店には何店舗か伺ったことがありましたが、総本山ともいえる四谷の『すし匠』はなかなか予約が取れず、いつか伺いたいと思っていました。
四谷の『すし匠』は路地裏にあり、入口も奥まっていて、引き戸を開けるときは緊張でドキドキでしたが、鮨職人の勝又啓太さんが笑顔で迎えて下さり、ホッとしました。京都の『嵐山 吉兆』で修業された勝又さんは『すし匠』の二番手で、親方の中澤圭二さんが2016年にハワイの『ザ・リッツカールトン・レジデンス ワイキキ・ビーチ』に店を出して以来、こちらの総本山を任されています。
店内はカウンター席が中心で、余分な飾りがなく、落ち着いてゆっくりお鮨を楽しめる空間がいいですね。
ネタケースには、ていねいに仕込みを済ませたこの日の旬の素材が美しく並んでいます。見ているだけでお酒が進みそうで、つい見入ってしまいます。
“鮨王子”と呼ばれる老舗酒蔵の社長との縁がきっかけ!?
さて、『すし匠』については、日本酒「日高見」の『平孝酒造』の平井孝浩社長からいろいろお話を伺っていたので、私自身も親近感をもっていました。平井社長は“鮨王子”と呼ばれているほどお鮨が好きな方で、お鮨に合う日本酒まで造ってしまったほど。蔵にはお鮨のカウンターを造り、鮨職人さんもたくさん訪れています。『すし匠』についても、17店もある系列店の系譜図を全部知っていて、それぞれのお店のスタッフ全員の名前まで言えるそうなので、そのマニアぶりがお分かりいただけるでしょうか。
久しぶりにお会いした勝又さんは、以前「日高見」の試飲会でお会いしたご縁がありました。勝又さんは、私の出ていた番組をずっと見てくださっていたとのことで、お会いしたのは数年ぶりでしたが、話が弾みました。
おつまみと握りを交互に提供する独特のスタイルを体験してみよう!
そんな『すし匠』は予約がなかなか取れない鮨の名店。おつまみと握りを交互に出すという独特のスタイルが特徴的です。今回は人気のメニューをいくつか作っていただきました。
ますはアワビとウニの蒸し物「いちご煮」(写真上)。肌寒い日の一品目として出すことが多い、青森・八戸の郷土料理です。“いちご”の由来は蒸しあがったウニが、木苺に似ているからだそう。
こちらは「あんこうの茶碗蒸し」(写真上)。アンコウの身とあん肝入り。茶碗蒸しの地と、あんかけのあん地にはアンコウの骨でとっただしを使い、まさにアンコウ尽くし。上にもあん肝をのせてあります。ちなみに、あん肝の握りは1年中提供していますが、これはアンコウを無駄にしないようにという考えがあるからだそうです。
『すし匠』を代表する名作「あん肝スイカ」。醤油を加えただしで煮て、そのまま煮汁に2日間漬けて味をしみこませたあん肝の上に、スイカの奈良漬をのせてあります。あん肝とスイカ、風味と食感のコントラストが感動の一品です。
「蛤の握り」。九十九里産のハマグリをさっとボイルし、煮詰めたハマグリのだしに漬けて冷まし、味をしみこませます。一般的な煮ハマグリと比べて加熱時間が短いため身が縮まず、歯ごたえも柔らかく仕上がっています。酢飯は米酢を使った白シャリです。
マグロのトロヅケ。青森・津軽海峡産の大型の本マグロのトロを2週間寝かせて熟成させ、ヅケに。熟成により、余分な脂を落としながら旨みを引き出しています。
提供直前に細かく包丁を入れることで空気に触れさせ、うまみがぐっと上がるのだそう。酢飯は赤酢の赤シャリで。
お鮨に寄り添う、人気の日本酒銘柄を幅広くラインナップ!
『すし匠』での楽しみはすばらしいお鮨とおつまみなのですが、お酒の種類が充実していることも魅力です。日本酒は鮨の味を邪魔しない銘柄1種類でいい、という考え方のお鮨屋さんもあるなかで、「日高見」を中心に、ほかにもスッキリとしたタイプのものからうまみのあるタイプまで、人気の銘柄を幅広く揃えています。
鮨店の中で、これだけ職人の皆さんが日本酒のことに詳しくて、積極的に勉強され、酒蔵にも行かれたりと、興味を深く持っていらっしゃるところはなかなかないのではないでしょうか。「お鮨に一番合うお酒は日本酒だから、お鮨を楽しみながら日本酒も楽しんでほしい」という姿勢が伝わります。東京を代表するお鮨の名店の皆さんが、これだけ日本酒に興味をもっていただいていることも、とても嬉しく思います。
勝又さんはとても気さくなお人柄ながら、お鮨に向き合う真摯な姿勢がお話からも感じられ、心から鮨がお好きなんだな、というのが伝わってきます。中澤大将からお店を任されるプレッシャーも相当なものだと思いますが、その役目を見事に果たしていらっしゃいます。いかにお客さまに楽しんで帰っていただくかを常に考え、あれだけの席数を目配りしながら鮨を握るのは神経を遣うでしょうし、集中力もないとできないことでしょう。
勝又さんは、次に握るネタやシャリを出すタイミングをはじめ、お客様にお茶を出したり、席を立つ時の配慮など、お弟子さんとの連携プレー、チームワークを大切にされています。毎晩店が終わったあとにかなりの時間をかけてミーティングをし、「あの時はどうすればよかったか」など、お弟子さんに指導されているというのも、エネルギーが要ることですよね。一朝一夕でできることではなく、勝又さんの情熱、愛のあるお人柄で、若い人たちもついてきているのだと感じました。
ハワイに出店されている中澤親方のあとを継ぎ、しっかりとお店を守られている勝又さん。ぜひ皆さまも、訪れてみてはいかがでしょうか?
【メニュー】
ディナー 20,000円~
ランチ 2,000円
日本酒、ワインなどアルコール各種
▼関連記事
・日本酒愛あふれる、名フランス人シェフによる「フレンチ×和酒」の新ペアリング
https://www.gnavi.co.jp/dressing/article/21752/
・お燗名人のテクニックに酔いしれる、日本酒がおいしい神楽坂の「隠れ家割烹」
https://www.gnavi.co.jp/dressing/article/21582/
・本格フレンチとお燗のマリアージュが楽しめる『ます福』【浜松町】
https://www.gnavi.co.jp/dressing/article/21679/
・ヒミツの日本酒酒場『サケストーリー』
https://www.gnavi.co.jp/dressing/article/21407/
・初心者でも飲みやすい「粕取り焼酎」ってどんなお酒? 恵比寿『イワカムツカリ』
https://www.gnavi.co.jp/dressing/article/21542/
編集協力:糸田麻里子(フードライター・エディター)
撮影:佐々木雅久
すし匠
- 電話番号
- 050-3312-8057
(予約専用番号 ※毎月1日に翌月の予約を受け付ける)
- 営業時間
- 18:00~、21:00~ ※2部制 / ランチは月・水・金の11:30~13:30のみ(限定40食)
- 定休日
- 日曜・祝日の月曜、GW、年末年始
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。