どうも、料理芸人のクック井上。です!
これでもかというくらいに、住みたい街ランキングでは、常に上位に入る吉祥寺。住みやすい街、そしておしゃれタウンとしても有名な吉祥寺ですが、北口駅前には戦後の闇市の名残である商店街があります。
その名も「ハーモニカ横丁」。無数に小さな店舗が立ち並ぶ様が、ハーモニカの吹き口のように見えることがその名の由来ですが、その「ハーモニカ横丁」中に、創業65年以上の町中華屋があります。
創業時から継ぎ足されてきた“特製醤油ダレ”がおいしさの秘訣! 吉祥寺の町中華『珍来亭』
やってきたのは、JR吉祥寺駅北口から徒歩3分ほど、駅前の商店街・通称“ハモニカ横丁”にある『珍来亭(ちんらいてい)』です。
戦後すぐに新宿で屋台のラーメン屋として創業した同店は、1951年に吉祥寺に移転。現在の場所に店舗を構えました。
僕は2000年代前半、吉祥寺の隣の駅・西荻窪周辺に住んでいたこともあって、週に何回も吉祥寺を訪れ、その度に『珍来亭』に通っていました。
▲2階の様子
店内は2階建て。歴史あるお店ですが、10年程前に改装して、今は小奇麗に。以前は、小上がりの席には歴史を感じさせるちゃぶ台が置いてあって、そこが僕のお気に入りの席でした。その頃を思い出して、その席へ。
では、まずは…「すいません、餃子一皿!!」
▲「ギョウザ」一皿6個入り
「はいよー」と運ばれてきたのがこちら、いかにも65年の歴史を感じさせる、昭和の餃子! それでは、タレも昭和で、少し酢が多め、安心の配合の酢醤油にラー油を垂らして、いただきます!
▲パクっ
ふぅー、これよこれ! 焼き面はカリッと香ばしく、上部は“もちもち食感”というより心地よい歯ごたえと弾力があって、しっかりとした造り。この皮は製麺所に特注して作ってもらっているそうで、創業時からレシピや製法をほとんど変えていないんだそう。
そして、しっかりとした皮の中からは、シャキシャキとした野菜たち。具材はキャベツ・ニラ・ショウガ・ニンニクとオーソドックスですが、ホッとする味付けの奥に、何とも言えない深み。その正体は、特製中の特製の醤油ダレが隠し味だってさ。何、何、めちゃめちゃ気になるー! 少し図々しく「ちょっと見せて頂けませんでしょうか…?」と聞いたら、「良いですよ!」と。やったーーー! ということで、少々、厨房に失礼します。
その醤油ダレとは、創業時以来、ずっと継ぎ足し継ぎ足しされてきたチャーシューの煮汁。この色は、醤油だけの色ではありません。醤油以外のあらゆる調味料、そして、65年間のチャーシューのうまみの塊! いやさ、今まで携わった店主さんや店員さんの愛情の塊だ。どうりで、餃子の味に深みがあるわけです。これはまさに門外不出の隠し味。真似のしようもありません。
そして、餡に入っているシャキシャキ食感のキャベツは全て手切り。そうそう、このシャキシャキ感はフードプロセッサーでは出せないんですよね。キャベツ以外も、ショウガも手切り。既製品やすりおろしではないので、噛むたびに、口の中にショウガのフレッシュな香りが広がり、この香りでビールもご飯もすすむんです。
ちなみに、ラー油も自家製とのこと。ゴマ油と一味を煮立たせて作ったもので、とっても香りがいいんですよ。餃子専門店ではないのに、このこだわりよう! 手間ひまは、お客さんへの愛情の現れ。そして、お客さんからも65年もの間、愛されている。まさに、相思相愛の老舗の味です。
看板メニューは醤油味のラーメン。 だけど他のメニューも絶品!
いやー、何年食べても飽きの来ない餃子には、チャーシューの煮汁が隠し味で使われていたわけですが、、『珍来亭』の看板メニューといえば、そのチャーシューが乗った、醤油味のラーメンなのです。
鶏ガラや豚足、魚介などでだしを取ったすっきりした味わいのスープに、中太ちぢれ麺がベストマッチ。餃子のうまみの生みの親とも呼ぶべきトッピングのチャーシューは、とろとろしすぎず、ほどよいモイスチャーと歯ごたえ。シンプルかつ正しすぎるラーメン。65年変わらぬ味に、ただただ脱帽です。
ただですね、餃子+ラーメンもいいのですが、是非是非、2人以上で訪れて食べていただきたいメニューがあるんですよ。それが「油ラーメン」と「チャーハン」!
▲油ラーメン+半チャーハンセット
「油ラーメン」は、ラーメンとも油そばとも違う、『珍来亭』発祥のメニュー。
さかのぼる事55年ほど前、常連のお客さんから「油そば発祥の某店のようなメニュー、作れないかな?」と言われたのが始まりだそう。
そこから当時の店主が試行錯誤を繰り返し、例の特製の醤油ダレとダシのきいたスープ、そこにサラっとした多めのラードをプラスして、ラーメンとも油そばとも違うオリジナルのこのメニューを作り上げたんですって。
ラードがかかっているっていうと味がしつこそうですが、油そばよりも汁気が多くてラーメンに近いから、スッキリした味わい。でも、ズズズっと啜ると、油そば要素もあるんだよなー。ここにしかないのに、誰もが懐かしさを感じるような味わいとバランス。半世紀以上、消えずに生き続けてきたオリジナリティです。
そして、セットの「チャーハン」も侮れないクオリティですよ!
具材には、チャーシュー、そこに卵とネギを加えたオーソドックスかつシンプルなチャーハンですが、味付けにはそう、もちろん特製の醤油ダレを使っています。チャーシューから切り離されたうまみを、あとあと味付けに使うという、手の込んだ代物。でもそうしないと、この味が出ないから、料理って面白い。いやー、この特製醤油ダレ、最強でしょ! 『珍来亭』のほぼ全てのメニューを支えている、縁の下の力持ちです。
『珍来亭』にもドラマが! 店を切り盛りするのは3代目飯田さん姉妹
現在お店を切り盛りするのは3代目店主で、創業者の孫にあたる飯田恭子さんと園江さん姉妹。ちなみに、2代目は、飯田さん姉妹のお母様。
▲妹の園江さん
「母が病気になって、姉妹で休日に店を手伝うこともありましたが、この店はあくまで母の店であり、自分が継ぐとは思っていなかった」と園江さん。
それまでは普通の勤め人として働いていて、人手の足りない土日などに手伝いをしていた程度だそうですが、その後お母様が…。お店を継ぐか閉店するか悩んだそうですが、お店の火を消すわけにはいかないと、姉妹力を合わせて、お店を引き継ぐことに。
「当時はすごく悩みましたが、『30年ぶりに来たら変わっていなくてうれしい』と言ってくれるお客様もいるんです。そうやって言ってもらえると継いでよかったと思いますね」と園江さん。
昔、僕もよく見かけました。親子だけでなく、3代揃って『珍来亭』に来店されるお客さんを。
おそらく、おじいちゃんおばあちゃんは初代を、お父さんお母さんは2代目を、今の店主である姉妹の向こう側に見ているんじゃないのかな。
跡継ぎ問題で、老舗の味が消えつつある昨今。初代⇒2代目⇒3代目と受け継いできた『珍来亭』の味、消しちゃいけません。消えてもらっちゃ困ります。
▲最後は、元気いっぱいな飯田さん姉妹とパシャリ!
吉祥寺が“おしゃれタウン”という反面“住みたい街”と称されるのは、『珍来亭』のようなお店があるからに他なりません。
もし、吉祥寺の本当の魅力を体感したいなら、65年以上前から地元民に愛され続ける『珍来亭』に行ってみてください。
餃子・ラーメン・油ラーメン・チャーハン…、あらゆるメニューに、65年の歴史と愛と想いの全てが凝縮された、深い深い味の特製の醤油ダレが使われていますよ!
ぜひご自身の舌で、『珍来亭』が奏でる味のハーモニーを確かめてみてくださいね。
【メニュー】
ギョウザ(6個) 400円
ラーメン 530円
油ラーメン単品 550円
油ラーメンセットメニュー(半チャーハン)750円
ビール 550円
※価格は税込
珍来亭(ちんらいてい)
- 電話番号
- 0422-22-3842
- 営業時間
- 11:30~15:00、17:00~21:00
- 定休日
- 水曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。