ワインの味はグラスの種類でホントに変わるの? 初心者でも分かる「ワイングラスの選び方」

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
#ワイングラスの選び方

2018年09月15日
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ワインの味はグラスの種類でホントに変わるの? 初心者でも分かる「ワイングラスの選び方」
Summary
1.ワインとグラスの関係を知れば「ワイン」がもっと楽しくなる!【ワインナビゲーター・岩瀬大二】
2.雰囲気やシーンがたのしくなる、気分よく飲めるグラスとは?
3.ワインの知識がなくても大丈夫! デイリーのワイングラスの選び方

家で使える! デイリーのワイングラスの選び方【ワインナビゲーター・岩瀬大二】

ワインバーやレストランで、ワインによってグラスを変えるという光景。とても丁寧で、ワインそれぞれの魅力を引き出してくれる素敵なサービスである。でも、こんなことが頭に浮かぶかもしれない。「そうしないと魅力が引き出せないって、やっぱりワインは随分と面倒くさいものなんだな」と。

もちろん親切という面もあるかもしれない。けれども、「グラスはどうしましょう?」と聞いてくれる店もあり、これ、詳しくない人にとってはどうしていいのかわからない緊張の場面でもある。逆に、ちょっと詳しくなると、ワインに合わないグラスで注がれるとストレスがたまったりもする。

他方、家飲みを考えると、それだけの数のグラスを揃えるなんてスペース的に無理。やっぱり、ワインとグラスの関係って面倒くさい…。

でも、実はワインとグラスの関係はそんなに難しいことではなく、むしろ、気分と最低限の知識でぐっとワインの時間が楽しくなり、積極的に取り入れてみたいと思えるもの。

今回は目から鱗的グラスの選び方を紹介。その前にちょっと面倒くさいかもしれないが、一応、ワインとグラスの基礎的なところを解説しようと思う。

グラスの形がワインに与える影響は大きく4つ

ワインの教科書的なところでいくと、代表的なグラスの違いはボルドー型(写真上・左)とブルゴーニュ型(同・右)の赤ワイン用グラスということになる。なぜ違うのか? それはそれぞれの特徴を引き出すため。

ボルドーワイン用のグラスの特徴は、チューリップ型ともいわれる少し縦長のフォルム。この形によって香りが立ちやすく、一方で渋みをまろやかに感じさせてくれる。

ブルゴーニュ型は金魚鉢ともいわれる大きめのボウルとすぼまった口が特徴。大きめのボウル(グラスの膨らんでいる部分)とすぼまった口はともに共通だが、よりブルゴーニュ型の方が特徴的。まずボウルは、大きさや丸みによって香りを立てやすくしつつ、長く滞留させることで複雑なアロマを最後まで堪能することができる。

ブルゴーニュ型がより広くなっているのは、繊細なピノ・ノワールの風味を立て、じっくりとその複雑さを堪能するためにそれだけの空間が必要だからだ。すぼまった飲み口は、ワインが口の中に入っていくスピードと量のコントロール。こうしたグラスは顔をあげて飲まなくてはいけないため、舌から喉まで直線的にワインが入っていく。

すると舌の中でも塩味や酸味を強く感じる両端の部分に触れる量が少なく、時間も短くて済み、バランスの良さを感じやすくなる。ブルゴーニュはより、その傾向を強くして飲んだ方がわかりやすいということになる。

白ワインはともにこれより小ぶり。これは白いワインのほうが低温でも香りや風味を感じやすいものが多いため、最後まで適温で飲める、あまりリッチな形にして複雑さを出すよりフレッシュさも大切な要素としてキャッチしやすくする、という狙いがある。

つまりワインとグラスの関係の第一はワインの風味を引き出すこと。まとめるとワイングラスの形によって以下のようながコントロールできるわけだ。

・口に入る量とスピード
・香りをキャッチする量
・舌と各部位にあたる時間の長さと量
・温度変化やアルコールの強さにより適量で飲みきれる大きさ

テイスティングを真面目にしようと考えたり、せっかくの高級ワイン、オールドヴィンテージを味わったりするなら、やはり最適なグラスを選ぶほうがベターといえる。

有名グラスメーカーの多くは、いろいろなブドウ品種に最適化したグラスをラインナップ。豊かにそれぞれのワインが楽しめるようになっている。ただここまでくると、ワインの豊富な知識が必要だし、物理的にも家で揃えるなんて無理。お店でもすべてを揃えているところは少ないだろう。

ワインの知識がなくても大丈夫! デイリーのワイングラスの選び方

さて、ここでシャンパーニュとグラスの関係を見てみよう。ここからだんだん「簡単に気軽にグラスを考える」実践に入ろうと思う。

シャンパーニュで代表的なグラスはフルート型(写真上・左)だが、実は様々。例えば、あるグラスメーカーから販売されているグラス(同・中)は、著名な世界的ジャーナリストがボウルやステム(脚)の長さなど、多くのシャンパーニュに最適化して造ったというグラス。さらに写真上・右は、日本でも人気のシャンパーニュメゾン『シャンパーニュ・サロン』の現地テイスティングルームで使用されているグラス。このほかにも、昔の映画のパーティーシーンでよく登場する小皿をステムの上に乗せたようなクープ型というものもある。

テイスティングや良質なワインをおいしく飲むためには、フルート型やボウルとステムの長さを考え抜いたグラスが確かに適していると言える。シャンパーニュを発泡性の白ワインと考えると、フレッシュさと隠された複雑さの両方をキャッチすることが求められ、温度的には低温、フレッシュさを感じられるように、やたらと大きなボウルである必要はなく、風味の繊細さや上品なバランス感を楽しむなら、口はすぼまっていた方が理想的だ。

また、唇が触れる部分が薄いほうがより繊細さをキャッチできるため、比較的、薄目、小さめがポイントとなる。ではなぜ、フルート型が主流で、クープ型も必要とされるのか? フルート型とシャンパーニュの親和性の高さは何といっても泡。立ち上る泡の距離が長く見えるため、わかりやすく美しさを堪能することができる。

パーティーアイテムとしての役割も大切なシャンパーニュ。時には見た目を重視するのもいいこと。クープ型はさらに口が広がっている。効果はすぐに香りが広がること。披露宴の乾杯やパーティなどでは部屋中にすぐにシャンパーニュの香りが立ち込め、香りから雰囲気を盛り上げてくれる。風味よりも雰囲気という場面にも活躍するシャンパーニュならではの選択だろう。

ここで気づいた方もいらっしゃるかと思うが、風味による最適化の他に、気分や場の雰囲気に合わせることもワインとグラスの関係ではとても大事な要素。いやむしろ、普段使いではこれこそ大事。そしてこれこそワインの知識がなくても楽しめるワインとグラスの関係でもある。

いろいろなワインがあって、その風味に合わせて選ぶなんて大変。よほどのプロでもなかなか厳しい。であれば、気分よく飲めるグラスさえあればいいじゃないか! というのが結論。じゃあ、このグラスで! というタイアップのコラムではないので、ここからあなたの気分にあわせるためのワイングラス選びのコツ、そのための要素をいくつか紹介していこう。

ステムの長さ

ワイングラスはステム(脚)がなければいけない、なんて思いこんでいるのでは? 確かにステムの部分を持てばボウルの中のワインの温度変化はほとんどないので、理にはかなっている。それ以上にステムがあることでワインのある場がエレガントに見える、これも重要。

ただ、ステムがあることで緊張感もある。家でリラックスしたいとき、友人を呼んで楽しみたい時。ステムの存在が多少の緊張を生んだりする。ひっかけてこぼす、落として割るケースもあるだろう。そして温度変化についていえば、ワインを冷蔵庫で冷やした場合、最初は冷やし目、少しずつ手の温度もあってワインが緩くなり飲みやすくなっていくというポジティブな変化もある。さらにステムの太さでも気分が変わる。太ければ重厚感や安定感、細ければエレガンスに繊細さ。

薄さ

厚めのグラスよりも薄めのグラスの方が風味や温度をダイレクトに感じさせてくれる。繊細な白ワインや高めのシャンパーニュなどは薄めを推奨するし、美しくドレスアップした高級レストランのテーブルなどでは、気分まで上げてくれる。

一方、1,000円代ぐらいの赤ワインや、果実味も酸味もリッチな白ワインなどは、ゆるやかさや気軽さがあったほうが、不思議においしく感じられる。ステム同様薄さは緊張感をともなうし、なんといっても洗う時、ふく時にプレッシャーも。家飲みの主力グラスの薄さは、風味はもちろん、簡単に言えば飲むワインの価格帯で考えてもいいだろう。

重さ

シャンパーニュや白ワインなどでフレッシュさを求めた場合、また冷涼感を楽しむ場合は軽いグラス、逆に重厚感であったり、1日の終わりにゆったりとしみじみと振り返るときなどは重いグラス。気分はもちろんだがワインの風味である、軽快感や重厚感とも紐づいている。

例えばバーで、気分を少しふわっとさせたいジントニックは軽めのタンブラー、仕事の成果を振り返り達成感と共にモルトウィスキーを楽しむ時には重厚なロックグラス、これも風味と気分がマッチした選び方となる。

ワインは色も一緒に楽しむものなので、ブラインドテイスティングでもない限りは中が見えないグラスをあまりお薦めしたくないのだが、季節に合わせた美しい柄でワインの色を邪魔せず、むしろ寄り添うようなものであれば取り入れるのも楽しいもの。白い花とグリーンの葉が描かれたグラスに、キンキンに冷やしたソーヴィニヨン・ブランやスパークリングワインなど、いろいろ試してみたくなるものもある。

自分が普段楽しんでいるワインや場面を想像してみよう。そこにここで紹介した、ボウルの大小、口の広さ狭さ、ステム、重さなどを当てはめてみると、すっと合うグラスが浮かんでくるのではないだろうか。

例えば僕のデイリーグラスはこの3つ。

1.家では気楽にスポーツや映画を見ながら楽しみたいし、その時は比較的軽めの赤ワインが多い。やや薄はりのステムなしの軽いグラス(500円ぐらい)。

2.日常でもいろいろなタイプのシャンパーニュ、スパークリングワインを飲むので汎用的にシャンパーニュが楽しめるグラス(2,500円ぐらい)。

3.白から軽めの赤ワインを飲むことが多い日常でも、ちゃんと風味を感じながら分析的にも飲みたい時用。汎用性が高くしかもガシガシ洗えるグラス(1,200円ぐらい)。

商売柄いろいろなタイプのグラスは揃えているのだが、基本、この3つがレギュラー。このほか、ホームパーティ的なワイン会も多く、そこには100円ショップのグラスを12脚用意。これ、結構使えます。

どうぞ、気分と好みでデイリーのグラスを選んでみてください。


写真提供元(一部):PIXTA