連載:【日本酒の基礎知識】ラベル表示の読み方ポイント
近年、再び脚光を浴びている日本酒。気軽に日本酒が飲めるバーや、日本酒を楽しむ野外イベントなども増えてきた。とはいえ、「日本酒は敷居が高そう」「飲んでみたいけど難しそうでよくわからない」と思っている人も多いのではないだろうか。
そこで本連載では、日本酒を詳しく知らない初心者の方に向けて、知っておきたい基礎知識から、日本酒を気軽に楽しめる飲食店やイベント、さらには注目の銘柄などを紹介していく。
今回は、日本酒のラベル表示の読み方について説明しよう。
日本酒のラベルには表示義務が設けられている!
最近は、おしゃれなラベルの日本酒が出てきている。CDのジャケ買いのように、日本酒をラベル買いしても楽しいことだろう。もしかしたら、ワインのエチケットのようにおしゃれなラベルをコレクションしている人もいるかもしれない。またラベルには、製造した蔵元の思いが書かれていることもあり、日本酒選びの大事な要素となる。
そんな日本酒のラベルには、表示義務が設けられているのをご存じだろうか? 日本酒のラベルに表示すべき必須項目は10項目ある。順に説明していこう。
(1)「清酒」or「日本酒」
ラベルには酒類の品目として「清酒」または「日本酒」の表示をしなくてはならない。逆に商品名である銘柄は、必ずしも表記しなくてもよい。
ちなみに「清酒」とは酒税法上で日本酒を指す用語であり、米こうじを原料として発酵させてこした酒(アルコール分が22度未満のもの)であること。だから、こしていないどぶろくなどは清酒に含まれず、「その他の醸造酒」と表記される。
(2)原材料名
水を除いたなかで使用量の多い順に記載されている。日本酒の原料といえばお米。お米の品種などを記載したい時は、原料米の使用割合が50%を超えている場合のみ、使用割合と併せて表記できる。
(3)製造時期
日本酒を造った時ではなく、瓶を詰めて出荷できる状態にした時が記載されている。つまり、数年前に造った日本酒であっても、今日詰めたなら製造年月は今月(または今日)になってしまう。この製造時期だけを見て、新酒や古酒などの判断はできないのだ。また賞味期限とは異なるのでご注意を! ちなみに、カップ酒など容量が300ml以下なら、製造時期表記の「年月」の文字省略が可能。
そのほか保税地域から引き取る清酒で製造時期が不明なものについては、製造時期に代えて輸入年月を「輸入年月」の文字の後に表示してもよいことになっている。
(4)容量
容器の容量のこと。
(5)アルコール度数
一般的に流通している日本酒は、アルコール度15%前後だが、中には20%ほどのものもある。ビールやワインなどのお酒と比較すると、度数は高め。楽しく日本酒を飲むためにも、念のため確認しておきたい項目である。
(6)製造者の氏名(名称)と所在地
造った蔵元の名前と住所が表示されている。
(7)保存または飲用上の注意事項
生酒のように、火入れをしないで出荷をする場合は、保存もしくは飲用上の注意事項を記載する。そのほか常温や要冷蔵などが表示されている場合もある。
(8)未成年飲酒防止に関する表示
「お酒は20歳になってから」「未成年者の飲酒は法律で禁止されています」などの表示のことを指す。
(9)原産国名(※輸入品の場合のみ)
今や海外でも製造されるようになった日本酒。海外からの輸入品には、原産国名の表示が必須となる。
(10)外国産清酒を使用したものの表示
また日本国内の製造においても、日本産と外国産の両方を使用して製造する場合には、外国産の原産国名と使用割合を表示しなくてはならない。
純米酒、吟醸酒、本醸造酒など「特定名称酒」表記の留意点
必須の表示項目ではないが、特定名称酒であれば、その旨をラベルに記載できる。特定名称酒については、本連載「純米酒、吟醸酒、本醸造酒の違い」で紹介したので参照していただきたいが、簡単に言えば、特定名称酒とは国が定めた“いいお酒”の基準のこと。特定名称は、原料、製造方法などの違いによって8種類に分類される(表下)。
この表をよく見てほしい。特定名称酒の規定では、留意したいポイントが2つある。まず1つは、精米歩合(米の表層部を削って残した、製造に使う芯部分の割合)の基準が「50%以下」など、ざっくりとした数値でしか定められていないことだ。そのため水と米・米麹のみを原料とし、精米歩合40%の場合は、「純米酒」とも「特別純米酒」とも「純米吟醸酒」とも「純米大吟醸酒」とも表記できてしまう。
次に「特別純米酒」と「純米吟醸酒」、「特別本醸造酒」と「吟醸酒」はそれぞれ規定が同じになっている。つまり、条件を満たしていれば、どちらの名称も名乗れるということだ。
▲実際のラベルがこちら。こちらの日本酒のラベル表示は「テイスティング分類」などが記してあり、とても分かりやすい
ただし、果実や花のような固有の香味がするものを「純米吟醸酒」「吟醸酒」、そうでないものを「特別純米酒」「特別本醸造酒」と付けることが多い。とはいえ、特別名称酒はあくまでも原料、製法の規定であり、香りや味の特徴を正確に説明できるものではない。このことは覚えておきたい。
成分表記は、日本酒の味を知るヒントになる!
次に、裏ラベルに表記されている成分についても説明しておきたい。裏ラベルを見ると、物によっては①日本酒度、②酸度、③アミノ酸度の項目が表記されている。この項目は、日本酒の味を知るヒントになる。
①日本酒度
日本酒度とは、日本酒度計という計測器を使って日本酒の比重を表す数値だ。水を0とし、水より重ければ「-(マイナス)」、水より軽ければ「+(プラス)」で表記する。水より重いということは、その分糖分を含んでいるということ。そのため一般的に、マイナス数値の日本酒は糖分が多くて甘口、プラス数値は糖分が少ないので辛口とされている。
②酸度
酸度とは、日本酒に含まれる酸の数値のこと。こちらも酸度が高いほど辛口の傾向があり、低いほど淡麗で甘口の酒に感じやすいとされている。
③アミノ酸度
アミノ酸度も数値が高いほど日本酒のうまみを感じやすく、数値が低いと淡麗に感じられる。
とはいえ先述した特定名称酒と同様、数値だけで日本酒の味が特定できるわけではない。あくまで味に関するヒントであり、参考程度に留めておきたい!
【まとめ】
・おしゃれなラベルの日本酒が増えてきている。
・日本酒のラベルには表示義務が定められている。
・特定名称酒の表記には留意点もある。
・日本酒度、酸度、アミノ酸度の成分は、日本酒の味を知るヒントになる。
初心者でもお手軽に試飲できる店がここ! 虎ノ門『日本の酒情報館』
さて、少し日本酒のことを勉強して興味を持ったところで、日本酒初心者でも楽しく試飲できる店を紹介しよう。
東京都港区西新橋1丁目にある『日本の酒情報館』は、日本酒と本格焼酎のことがわかる情報館だ。今までは銀座や西新橋で35年ほど営業してきたが、より日本酒と本格焼酎の情報拠点になるよう2016年8月末、現在の地にオープンした。
同館のコンセプトは「Japan Sake and Shochu Information Center」。館内には2台のテレビモニターと2台のプロジェクターが設置されており、日本酒と本格焼酎に関するビデオ上映があったり、そのほか自由に雑誌や書籍を閲覧できたりする。日本酒のイベントのチラシや、各県の蔵のパンフレットも置いてある。入場料は無料だ。
▲「日本酒特集」のグルメ雑誌やタウン誌が置いてある
▲全国の酒蔵のパンフレットもある
同館の一番の特徴は、全国各地の日本酒と本格焼酎などを試飲・飲み比べできるところだろう。試飲は、1杯(30ml)税込100円~。日本酒と本格焼酎、泡盛、リキュールあわせて常時100種類ほど用意している。メニューは、約3~4週間ごとに変わる。
▲注文はカウンターにて。そのほか、酒蔵ツーリズムに関することなども質問可能
運営する『日本酒造組合中央会』は、全国にある約1,700の蔵を束ね、国内外に向けて日本酒と本格焼酎のプロモーション活動をしている。全国の蔵からお酒を取り寄せているため種類が豊富であり、有名な銘柄から無名のものまでとりそろえられるのだ。また、日本酒カクテルなど新しい飲み方も提案していて、こちらも試飲できる。
▲館内の様子。和モダンな内装になっている
簡単に飲み比べをするなら、日本酒のセットがいいだろう。セット内容は「Aセット(大吟醸)」「Bセット(バラエティ)」「季節のセット」の常時3セットを用意。1セットで、3つの銘柄が飲み比べられる。セット内容は、約2日ごとに変わる。
日本酒初心者におすすめなのは「Aセット(大吟醸)」。「大吟醸」または「純米大吟醸」の飲み比べセットで、初心者でも日本酒のおいしさがダイレクトにわかるだろう。「季節のセット」も初心者でも飲みやすい銘柄をそろえているという。
この日の「Aセット(大吟醸)」(写真上)は、「大吟醸 宮の雪(宮崎本店、三重県四日市市)」「純米大吟醸 白鴻(盛川酒造、広島県呉市)」「大吟醸 東白菊(藤橋藤三郎商店、埼玉県深谷市)」で構成。銘柄リストには、以下の商品特徴が書かれていた。
【宮の雪】
華やかな吟醸香と、まろやかな味が特徴。アルコール分17%、精米歩合40%、日本酒度+2、酸度1.1、使用米は山田錦
【白鴻】
米のうまみを持ちながら、キレの良い辛口の酒。アルコール分16.5%、精米歩合50%、日本酒度+6、酸度1.4、使用米は山田錦
【東白菊】
吟醸の香りが豊かで、ふくいくとした味わい。アルコール分15%、精米歩合38%、日本酒度+2、酸度1.0、使用米は山田錦
日本酒のラベル表記の読み方について勉強した読者なら、数値の意味もわかるだろう。試飲して気に入った銘柄は、その場で購入して持ち帰ることもできる。また、おしゃれな酒器なども併せて販売している。
▲気に入った銘柄は、その場で購入可能!
「日本酒は年々おいしくなってきています。酸味が強いワインのような味わいのものも増え、肉料理や洋食とのペアリングも楽しめるようになってきました。女性からの人気も高まってきています。日本酒初心者の方も一度、試飲にきてみてください」と、館長の今田周三さん。ちなみに同館は、外国人観光客の利用も多いという。そのためスタッフさんは英語も話せるそうだ。
▲4カ国語対応のタブレットも自由に使用できる
『日本の酒情報館』で、日本酒の雑誌やパンフレットを読みながら、お手軽に試飲してみてはどうだろうか? 初心者の方でも日本酒のことが好きになること請け合いだ。
【メニュー】
試飲(30ml or 60ml)100円~
飲み比べセット 300円~
※価格は税込
<参考文献>
・『新訂 日本酒の基』日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)著/NPO法人FBO
・『酒仙人直伝 よくわかる日本酒』NPO法人FBO 著
・『ゼロから分かる!図解日本酒入門』山本洋子著/世界文化社
・『もっと好きになる 日本酒選びの教科書』 竹口敏樹監修/ナツメ社
<編集協力>
名久井梨香
日本の酒情報館
- 電話番号
- 03-3519-2091
- 営業時間
- 10:00~18:00
- 定休日
- 土・日・祝日・年末年始
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。