老舗鶏肉専門店から生まれた、日本で初めての鶏だし専門店
かつおだしに昆布だし。うまみがギュッと詰まっただしがあれば、いつもの料理がグンとおいしくなる。
なかでも鶏から取るだしは、ラーメンなどで馴染み深く、好きな人も多いだろう。
この鶏だしを手軽に味わえる店『信濃屋+(プラス)』が、2018年7月、東京・五反田にオープンし、早くも人気を博している。
『信濃屋+』は、五反田にある鶏肉専門店『信濃屋』の鶏だし工場。『信濃屋』は、創業約70年になる老舗で、産地直送の銘柄鶏を扱う鶏肉専門店である。
肉のうまみを逃がさないよう手作業で一羽一羽解体するなど、とことん鶏肉のおいしさにこだわることで知られ、界隈の住民のみならず、プロからも絶大な信頼を寄せられている人気店だ。
この『信濃屋』の3代目・石坂優貴さんが、子どもの頃から慣れ親しんできた鶏だしを、もっと多くの人に楽しんでもらえないかと考え、『信濃屋+』をオープンするに至った。
場所は本店のすぐ近くで、JR五反田駅から徒歩3分。目黒川を越えて少し路地に入ったところにある。タイル張りの外壁に大きなガラス窓が開放的な雰囲気を放っている。
印象的な鶏のロゴマークと、入口近くに置かれた黒板書き以外、大きな看板もなく、一見、鶏だしの店には見えないスタイリッシュな店構えだ。
店内は、タイルの代わりに本物の石を使うなど、シンプルでありながら上質な造りになっている。入口近くには、店のシンボル、ブランコが置かれている。小さな子供連れでも気軽に訪れてほしいという石坂さんの遊び心の表れだ。
テイクアウトが基本だが、窓際にはカウンターがあり、ぶらりと立ち寄って、お酒ならぬスープを軽く一杯飲むのに最適だ。中央の大きなカウンターには、惣菜やスープの入った鍋が並び、スタッフと会話しながら注文をすることができる。
専門店が作る鶏だしは、プロも絶賛する極上のおいしさ
メニューは、自宅でそのまま料理に使える、シンプルな化学調味料無添加の鶏だしと、そのだしを使った特製スープと惣菜類だ。
店の中央に据えられた巨大ダクトと、ヒーターの上に並べられた特大の寸胴鍋は、店全体を鶏だし工場に見立て、そのコンセプトを表現している。
ここで毎日、ベースとなる鶏だしを作っている。まさに工場直送、できたてほやほやのおいしさを楽しむことができるのだ。
目指したのは黄金色に澄み、鶏のうまみのみが凝縮されただし。一番のポイントは、素材の鮮度だという。新鮮な素材を使うことにより、だしに鶏肉特有の臭みを出さないのである。
『信濃屋+』では、『信濃屋』から入手する鮮度抜群のひな鳥の鶏ガラを使うが、うまみを増すために手羽元、もも肉、むね肉といった鶏肉を合わせている。これらを香味野菜と共に、沸騰させないようにコトコト丁寧に煮出していく。
ひと口に鶏ガラといっても、使う部位によって味わいが違い、さらにだしを取る方法でも濃厚さが違ってくるのだという。
石坂さんは子どもの頃から、鶏肉に関する知識や技術を父親から教え込まれてきた。その経験を基に、鶏肉と鶏ガラの配合などを試行錯誤しながら理想のだしを作り上げた。飲食店を営むプロも絶賛する、「信濃屋だし」と呼ばれる極上のだしだ。
『信濃屋+』では、基本となる「信濃屋だし」(写真上・右)以外に2種類、白濁し濃厚さを増した「濃厚鶏白湯だし」(同・左)、部位ごとに個別に取った「鶏だし」が用意されている。
「信濃屋だし」はひと口飲むと、初めはさっぱりとしていながら、後からブワッと、まるで鶏肉を食べているかのような濃厚なうまみが広がっていく。コクがありながらも、後に脂っぽさがまったく残らない。
そのまま塩などで味付けして野菜や肉を煮込めば、極上のスープができる。これからの季節欠かせない鍋料理で重宝すること間違いなし。だししゃぶや豆乳鍋、辛みを効かせた鍋に、具材は肉でも魚でも合うそうだ。
洋風から和風まで、鶏だしを使ったバリエーション豊富なスープを堪能
スープメニューには、鶏だしを使った料理のおいしさを知ってもらおうという想いが込められている。
塩と生姜のみで味付けした具無しスープ「プラススープ」と、具だくさんで味わいがそれぞれ異なる3種類のスープがラインナップ。
具材が入ったスープは、日替わり1種類、週替わり2種類で構成されている。いずれも、旬の野菜と鶏肉をたっぷり使った食べごたえのあるものばかりだ。
写真上は手前から左回りに「夏野菜のポタージュ」、「鶏モモ肉と鶏むね肉のきのことナスのスープ」、「かぶと鶏むね肉の透明スープ」。どのスープも鶏だしのうまさを生かすために味付けは控えめ。野菜の甘みが引き立ち、シンプルながら奥深い味わいになっている。
鮮やかな赤い色が美しい「夏野菜のポタージュ」は、トマトやビーツを使い、クリーミーさを出すために牛乳がプラスされている。鶏だしは、うまみだけが凝縮された味わいのため、洋風メニューにもぴたりと合う。
味付けはシンプルに! 鶏だしの滋味深い味わいを生かした惣菜
また、鶏だしの味わいを生かした惣菜も人気だ。
惣菜の内容は日によって異なるが、定番は「鶏だし巻き玉子」(写真上・左)と「鶏ゴボウ巻き」(同・右)。
「鶏だし巻き玉子」はふわふわの卵がたっぷりの鶏だしを含んでおり、ひと口食べると、ジュワッとうまみたっぷりのスープが溢れ出す。何度も食べたくなる、絶品のおいしさだ。
「鶏ゴボウ巻き」は、アク抜き後にじっくりだしを染み込ませた太めのゴボウを鶏肉で巻き、『信濃屋』秘伝の焼き鳥のたれを「信濃屋だし」で割ったもので味付けしている。焼き色のついた香ばしい鶏肉はだしのうまみを生かした味付けで、しっかり味が染みて柔らかいゴボウとのバランスが抜群だ。
さらに、3種類のスープに白米・パン・鶏おこわのいずれかをプラスするセットメニューもあり、ランチにぴったりと人気を博している。
なかでも人気の「鶏おこわ」(写真上)は、自慢の鶏だしが染みた滋味豊かな味わいがたまらない。スープは具もたっぷり入ったボリューミーなものが多いため、ご飯類とセットにすれば、満腹なランチとなる。
セット用のパンは、五反田で人気のベーカリー『Pain aux fous(パン オ フゥ)』から毎朝焼きたてが届けられている。ハード系のパンやフワッと柔らかいロールパンなど3種類ほどから1つを選べるのがうれしい。
早朝4時からその日の鶏だしを仕込むという、店長の石坂優貴さん。
「脂を増やして『信濃屋だし』の濃厚バージョンを作ったり、ガラと鶏肉の配合を変えたりするなどして、だしの種類を増やしていきたいですね。お客様が作りたい料理にぴったりあった鶏だしを提案できればと考えています」(石坂さん)
『信濃屋+』でしか出逢えない滋味豊かな鶏だしの奥深さを、体感してみてはいかがだろう。
【メニュー】
信濃屋だし 460円(400ml)
3種のスープ 320円(R)、450円(L)、850円(LL)
鶏ゴボウ巻き 780円
鶏だし巻き玉子 500円
ランチセット
ご飯 プラス150円
パン(2個) プラス230円
鶏おこわ プラス250円
※価格はすべて税込
信濃屋+(しなのやぷらす)
- 電話番号
- 03-6417-4136
- 営業時間
- 10:00~19:30(売り切れ次第終了)
- 定休日
- 日曜、祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。