自他共に認める日本酒好きのフリーアナウンサー「あおい有紀」が“和酒”の魅力を発信!
自他共に認める日本酒好きのフリーアナウンサー「あおい有紀」が“和酒”の魅力を発信!
いまや空前の和酒ブーム! 日本酒や焼酎、日本ワインなどの“和酒”が楽しめるお店が急増している。けれども本当においしい魅力的なお店は? そのお店のお酒や料理はどう楽しめばいいの?
唎酒師、焼酎唎酒師、一級フードアナリストなどの資格をもち、大のお酒好きとして各メディアで活躍中のフリーアナウンサー、あおい有紀さんが自分の足で探し歩いた「とっておきのお店」を訪れ、選りすぐりのお酒と料理を実際に味わいながらじっくりとその魅力に迫ります。
代官山の路地裏、迷路のような道を抜けてたどり着く大人イタリアン
こんにちは。あおい有紀です。
今回ご紹介するお店は『Surryhills(代官山)』(以下、サリーヒルズ)。こちらは本格的なイタリアンでありながら、ワインだけでなく日本酒の品揃えも充実したお店です。
以前から日本酒の試飲会などでシェフの小谷野大輔さんにはよくお会いしていたのですが、イタリアンと日本酒という組み合わせは東京でもまだあまりないので、一度伺いたいと興味津々でした。実際に、小谷野シェフが作るイタリア料理のおいしさと、日本酒との相性のよさに感動して、それから何度も通っています。「イタリア料理には絶対ワインでしょう?」と思われる方にこそ、この魅力をお伝えしたいと思います。
サリーヒルズは「代官山 T-SITE」の裏手、飲食店やアパレルなどの入ったおしゃれな空間の一角にあります。駅からは徒歩5分ほどと近いのですが、たどり着くまでにちょっと迷路のような小道を歩くので、隠れ家のような佇まい。お店はビルの2階、テラス席のパラソルが目印です。
階段下にはワインボトルに並んで日本酒のボトルも飾ってありますね。中へご案内しましょう。
店内は落ち着いたバーのような大人の雰囲気。
カウンター席が主体です。イタリアンのお店ですが、カウンター奥にずらりと並ぶ日本酒のボトルが目を引きます。お料理はコース料理のみ。さっそくお料理を出していただきましょう。
日本酒好きのシェフによる正統派イタリアン。最初の一皿から感動の連続!
一品目は「水牛モッツァレラのカプレーゼ」(写真上)。
イタリア・カンパーニャ州から週1回空輸される新鮮な水牛のモッツァレラチーズに、旬のフルーツを組み合わせた軽やかな前菜。『サリーヒルズ』ではコースの最初に必ずこの一品が出されます。秋~冬の時期には完熟した柿を、塩とオリーブオイルでほんの少し味付けされています。フルーツは季節によって桃やぶどう、イチジク、洋梨などを合わせるそう。
合わせたお酒は三重『清水清三郎商店』の「作(ざく)インプレッションTypeG 純米 濾過直汲み原酒」。フルーティな甘い香りが特徴です。
グラスを近づけると、熟したメロンの香りがします。原酒ですが、一杯目に来ても重くないですね。そしてモッツァレラがすごくミルキーでみずみずしくジューシーで驚きました! 合わせた柿がよく熟していて、甘みがしっかりあって、このお酒のフルーティさにぴったり。これに塩が味を引き締めてくれますね。一杯目なのにお酒が進んでしまう(笑)。
さて、二品目の前菜が来ました。
「アジのタルタルと秋刀魚のテリーヌ」(写真上)。
「アジは刻んだ赤タマネギと合わせて叩き、塩とオリーブオイル、少量の醤油のみで味付けしました。イタリア風『なめろう』のイメージですね」と小谷野シェフ。なるほど、うまみののった新鮮なアジに赤タマネギの香りが合わさり、さっぱりといただけます。
サンマのテリーヌは、塩で締めて重ねたものをジャガイモと2層にし、テリーヌ型に詰めてから、低温で火入れして切り分けてあります。添えられたのは大葉、タプナード(黒オリーブのソース)。サンマはくさみもなく、ジャガイモとよく合います。大葉の香りとタプナードの風味がいいアクセント。どちらも塩をしっかりめにきかせてあるため、間違いなくお酒が進みそうですね。
今回、この前菜には2種類の日本酒を合わせていただきました。
小谷野シェフの大好きな蔵のひとつである、島根『王祿(おうろく)酒造』の「王祿 丈径blue(たけみちブルー) 本生」(写真・左)と、愛知『長珍(ちょうちん)酒造』の「長珍 新聞紙 純米吟醸生50 無濾過」(同右)。アジが王祿、サンマが長珍に合わせるイメージで選んでくださったそう。
グラスも香りの立ちやすい丸みのあるタイプに変えて、さあ、いただきましょう。
まずは「王祿 丈径ブルー」をひと口。2015年BY(※)ですが、思った以上にフレッシュな印象。スルスルっと入っていく穏やかで控えめな味わいのお酒。これをアジのタルタルと一緒に味わってみると、お料理にシュッと寄り添い、上品にまとまる感じがします。バランスがいいですね。
次に、長珍をひと口。うまみとボディ感があるお酒ですね。無濾過でアルコール度数も高いということもありますが、ひと口めからうまみが口に広がる感じで、サンマの脂にも負けないコクがありますね。余韻も長い! サンマのテリーヌと合わせると、うん、口の中でうまみが膨らんでいきます。添えられたソースの、黒オリーブとケッパーの香りも合いますね。
三品目はパスタ「ブロッコリーとしらすのフジッリ」(写真上)。
にんにくとオリーブオイルの香りをまとったしらすとくたくたに柔らかく煮くずしたブロッコリーが、ショートパスタのフジッリにたっぷりからませてあります。
南イタリアの定番パスタで、本来はブロッコリーソースにアンチョビを合わせますが、日本酒との相性を考えてしらすを使ったそう。
さて、合わせたお酒は、京都『松本酒造』の「澤屋まつもと 守破離(しゅはり) 五百万石」。富山県産の酒米、五百万石を使い、65%精米の純米酒です。透明感のあるきれいな酸が特徴。誰が飲んでもおいしいお酒ですね。
グラスを近づけると、お料理を邪魔しない程度のフルーティな香りがします。パイナップルやメロンのような香りも。
口にすると、和三盆のような上品で優しい甘みが特徴です。京都のお酒らしい品がありますね。
パスタと合わせてみましょう。ブロッコリーとしらすの甘みを、お酒の上品な甘みがふわふわっと包み込んでくれるようです。しらすとの相性がとてもいいですね。
四品目にはメインのお肉料理「ポルケッタ」(写真上)が来ました。
トスカーナ地方の郷土料理です。豚バラ肉に、にんにくとローズマリーやタイムなどのハーブを巻いてローストした肉料理。以前いただいたことがあり、私の大好きなひと皿のひとつ。お肉を噛みしめるほどに、肉汁とともに凝縮されたうまみと香りが口の中に広がります。こうした正統派のイタリア料理は本来白ワインに合わせるイメージですが、日本酒と合わせるとどんな味わいになるのでしょう。
合わせたのは、再び島根『王祿酒造』の「王祿 純米吟醸酒」。
まずグラスを近づけると、お米の香りですね。華やかな香りというよりは、蒸したお米の香りが感じられます。ひと口味わうと、酸味と甘みのボリュームもしっかり感じます。これをポルケッタと合わせると……、さわやかなハーブの香りがふわっと広がります! お酒の中に含まれる香りとハーブの香りが同調し、さらにうまみの相乗効果が楽しめますね。
正統派イタリア料理×日本酒の相性の素晴らしさを再発見!
オーナーシェフの“ジーザス”こと小谷野大輔さんは、イタリア料理を始めワインやサーヴィスを10年間修業され、2015年4月に『サリーヒルズ』をオープンされました。ジーザスのニックネームは、長髪にされていた頃、以前の修業先のシェフから命名されたとか。
2011年の震災をきっかけに東北を訪れるようになり、「伯楽星」や「写楽(寫樂)」などを飲んで、日本酒のおいしさに開眼したという小谷野さん。その後さまざまな地方の日本酒を飲むようになり、ある時、島根の「王祿」のおいしさに魅せられたそう。「王祿は、最初にフレッシュな香りが楽しめ、あとからうまみが来るのが魅力。すっかりはまりましたね」。ここから、ご自身のお店でも日本酒を取り入れるようになったとか。「ワインと日本酒は、原料の違いはありますが、どちらもイタリア料理に合うんですよ。香りが穏やかなタイプの日本酒に合わせる場合は、料理の塩気や風味をあまり濃くしないように調整しています」と小谷野さん。
「心がけているのは、料理とお酒との温度を合わせること。といっても厳密ではなく、なんとなくイメージや直感でゆるく合わせているだけですが」と謙遜されていますが、実際合わせてみると、素晴らしい! 素材とお酒のうまみの相乗効果が感じられる、日本酒ならではのマリアージュを体感することができました。「ゆくゆくはお燗も合わせてみたいですね」と小谷野さん。
お料理自体は和食寄りではなく、イタリアンそのままの味付けをされていますが、全く違和感なく日本酒に合いますし、ぜひ体感いただきたいですね。ワインの取り揃えも豊富なので、ワイン好きの方と訪ねても一杯を日本酒と合わせてみたり、それぞれが気兼ねなく好きなお酒を楽しめます。スタイリッシュでバーのようなおしゃれな雰囲気なので、女性同士でもデートでもゆっくり楽しめるかと思います。
(※)BY:Brewery Year(醸造年度)。日本酒の場合、西暦表記ではないこともある。例えば「27BY」と書かれていたら平成27年度に醸造された日本酒を指す。
編集協力:糸田麻里子(フードライター・エディター)
撮影:佐々木雅久
【メニュー】
シェフのおまかせコース(前菜、パスタ、肉料理のスタンダードコース) 5,500円~
おまかせプチコース(前菜、肉料理のショートコース) 3,900円
こだわりの日本酒 900円~
グラスワイン (ロゼ、白、赤) 1,000円~
▼バックナンバー
・和酒好きにはたまらない美酒と料理が揃う小料理店『namida』
・『瓢亭』日比谷店で愉しむ繊細かつ斬新な京料理に寄り添う美酒
・割烹レベルの焼鳥とレアな日本酒が味わえる楽園・飯田橋『遊』
・その他の記事(もっと読む)
※『dressing』プレミアム読者限定の読者プレゼントあり※
『サリーヒルズ』小谷野シェフに、dressing読者へプレゼントをご用意いただきました。
特典をゲットして、あおい有紀さんおすすめの店『サリーヒルズ』の料理とお酒を堪能しましょう!
※取材時にいただきましたご来店時特典は、2018/12/21 まで有効です。
ご来店時特典は…! (続きは「今すぐ続きを読む」へ)
Surryhills(サリーヒルズ)-代官山
- 電話番号
- 03-6416-9267
- 営業時間
- 月・水・木・金ディナー 18:00~0:00、土・日ランチ 12:00~15:00、ディナー 17:30~0:00
- 定休日
- 火曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
この記事にはまだ続きがあります
今すぐ続きを読む
プレミアム記事をすべて読むには、ぐるなびプレミアム会員登録が必要です