洋菓子研究家が伝授! 最高においしい「スポンジ生地」の作り方
みなさんこんにちは!
クリスマスケーキレシピの記事では、憧れの「イチゴのショートケーキ」作りに挑戦しました。
そのなかで登場したスポンジ生地(ジェノワーズ)は、さまざまなホールケーキのベースとなるもの。基本中の基本だからこそ、失敗せずに作れるようになれれば、お菓子作りの幅が広がるのです!
でも、少ない材料で作るシンプルなお菓子ほど、ちょっとした手順の違いで大きく差が出てしまうもの。続編では、しっとりふわふわ! キメ細やかな“基本のスポンジ生地”をより詳しくご紹介します!
グルメライターの植木祐梨子(写真上・左)が、洋菓子研究家・たけだかおる先生(同・右)に教わった“とっておきのレシピ”で、最高においしい「スポンジケーキ」をマスターしましょう!
たけだ先生の“おいしさを追究したポイント”は2つ!
1.卵を泡立てるときは湯煎しない!
2.卵を泡立てるときは“大きな泡”を作らない!
[point1]卵を泡立てるときは湯煎しない!
●先生
「一般的なレシピでは、湯煎しながら卵を泡立てて作ることが多いです。それは湯煎することで卵が早く泡立つからなのですが、わたしのレシピではより“キメ細やか”に仕上げるために、卵を温めずに泡立てていきます」
▲左:湯煎あり 右:湯煎なし
●先生
「卵には、冷たいと表面張力が強いという性質があって、その力は温度が上がるにつれて弱まっていきます。表面張力が強い状態のまま泡立てた方が、丈夫な泡を作ることができるんです。
冷たい卵といっても、あえて冷やす必要はありません。湯煎して泡立てるときよりちょっと時間がかかるのですが、ふわふわで口当たりのよいスポンジを目指して湯煎に頼らずに泡立てましょう!」
[Point2]卵を泡立てるときは“大きな泡”を作らない!
●先生
「キメ細やかで丈夫なスポンジ生地を作るコツは、ハンドミキサーで卵を泡立てるときに“大きな泡”を作らないことです。
はじめから一気に高速で泡立ててしまうと、どれだけ冷たい卵を使っていても、大きな泡ができてしまいます。この大きな泡を残したまま焼くと、焼き上がりのスポンジ生地に大きな穴がたくさんできてしまいます」
▲左:はじめから高速で泡立てて焼いた生地 右:低速で泡立てて焼いた生地
●先生
「とはいえ、冷たい卵を最初から低速で泡立てると、時間がかかり過ぎてしまいますので、最初の3分の1の時間は中速で、残りの3分の2は低速に切り替えて泡立てましょう。卵がもったりしてくると、一度できた泡は消えにくくなってしまうので、気をつけてくださいね」
■ポイントを押さえたところで、さっそく実践!「スポンジ生地」の作り方
■材料(※直径15cmサイズ、高さ6cmのデコ型一台分)
・全卵 … 120g(L玉およそ2個分)
・薄力粉 … 60g(今回は「特宝笠」を使用)
・グラニュー糖 … 55g
・トレハロース … 10g
・バター … 10g(今回は「よつ葉発酵バター」を使用)
・牛乳 … 10g
・バニラオイル … 適量
※卵はあえて冷やさなくてもOK。
※「トレハロース」とは人工甘味料のこと。トレハロースを加えることで、スポンジ生地のパサつきを抑えてしっとりと仕上がる。ない場合は、グラニュー糖の総量を60gに変更。
※「特宝笠」を使用することで、口当たりが軽く仕上がる。
■今回使用したキッチンツール
・デコ型(直径15cm、高さ6cmサイズのものを使用)
・ハンドミキサー
・ボウル(大・小)
・粉ふるい
・ゴムベラ
・ホイッパー
・わら半紙
(※わら半紙がない場合は、ベーキングシートでもOK。ただ、焼きあがりにしわの跡がつきやすいため、わら半紙推奨)
■下準備
・デコ型にわら半紙をセットする。ハサミの先端を使って型をなぞった形に切り、デコ型の底に敷く。残りの紙は、幅10cmくらいの長さに切り、デコ型の周りにセットする。
・グラニュー糖とトレハロースは、混ぜ合わせておく。
・薄力粉はふるっておく。
※粉はふるいにかけると、最後にダマが残る(写真上・左)。ダマはそのまま入れずに、指でほぐすようにして必ずふるいきること(同・右)。
・牛乳とバター、バニラオイルを合わせておく。
■スポンジ生地作り開始!
① ホイッパーで全卵をよく溶きほぐし、混ぜ合わせておいたグラニュー糖とトレハロースを一度に加えてよくなじませる。
② ハンドミキサーに持ち替えて、ボウルを回しながらまず中速で泡立てはじめる。
③ 全体が白っぽくなるまで泡立てたら低速に切り替えて、ハンドミキサーを持つ手は固定して、ボウルを回しながらゆっくりと泡立て続ける。
- ポイント
- ・ハンドミキサーのメーカーやモーターの馬力、卵の状態によるが、目安は中速で2~3分、その後低速で10分以上。
・ボウルを回しながら泡立てることで、混ぜ残しを防ぐ。
④ ハンドミキサーを持ち上げ、たれ落ちる生地で描いた線がゆっくりと消えていくくらいまで泡立てればOK。
●祐梨子
「あれ! 大きな泡ができてしまいました。どうしよう……」
●先生
「無意識にハンドミキサーを持つ手を動かしちゃったかしら。「の」の字を書くように泡立てると、大きな泡ができてしまいます。卵に濃度がついてくると泡はなかなか消えにくくなってしまうんです。③の動画のようにハンドミキサーを持つ手は動かさずに、位置を必ず固定して“ボウル”を回しながら泡立てていきましょう!」
⑤ 下準備でふるっておいた薄力粉を、④のボウルに3~4回に分けて再びふるいながら加えていく。その都度ゴムベラですくうように優しく混ぜる。粉は水分を吸いやすいため、手早く作業すること。
- ポイント
- ・一度に加えてしまうと生地に負担がかかるため、1回目に加える粉の量は少なめにし、徐々に量を増やしていく。
・ボウルを回しつつ下から生地をすくいあげるように、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
⑥ 鍋で湯煎用の湯を沸かし、火からおろす。合わせておいた牛乳とバター、バニラオイルの入ったボウルを鍋にのせ、湯煎で溶かしておよそ50℃にする。
- ポイント
- ・およそ50℃にしておくことで、生地と合わせたときに混ざりやすくなる。
■生地に油脂を加える
⑦ ⑥に⑤の生地の4分の1程度を加えて、ゴムベラで手早く混ぜる。
- ポイント
- ・ゴムベラを立てて混ぜることで、上部の軽い全卵の生地と、下部の油脂を早くなじませることができる。
⑧ ⑤のボウルに⑦を戻し入れて、全体をなじませる。
- ポイント
- ・ボウルを回しつつ下から生地をすくいあげるように混ぜる。油脂と合わせると泡が消えやすくなるため、混ぜすぎないこと。
■型に流し、焼き上げる
⑨ 生地を低い位置から型に流す。
⑩ ゴムベラの先で、軽く表面をなじませる。
- ポイント
- ・生地をすべて流し入れたあとの表面に濃い黄色の生地が見えることがあるが、それは泡が潰れている部分。ゴムベラの先で表面を軽くなじませると、焼き上がりの生地の落ち込みを防ぐことができる。
⑪ 160℃の余熱で温めたオーブンに入れる。160℃で25分程度焼く。天板の奥と手前を入れ替えてさらに5分程度焼く。(今回は、ガスオーブンを使用。電気オーブンの場合は、180℃で25分程度、向きを変えて5分程度焼く)
- ポイント
- ・焼き色が薄い場合は、3分程度追加で焼く。
「きれいに焼けました~!」
●祐梨子
「ふっくらときれいな黄金色に焼きあがりました! 卵とバニラの甘くていい香りがします♪」
●先生
「きれいに膨らみましたね! 早速、型からはずす作業に取り掛かりましょう」
■型からはずして、一晩寝かせる
⑫ 高さ10cm程度のところから、型ごと生地を一度落として中にこもった熱い空気を抜く。
⑬ すぐに型から取り出し、わら半紙ははがさずに布巾を敷いた網の上にのせる。
- ポイント
- ・生地より上に飛び出しているわら半紙は、スポンジ生地の高さまで縦に裂く。
⑭ 裂いたわら半紙を外向きに広げて、表面を平らにするため布巾の上に生地をひっくり返す。
- ポイント
- ・ひっくり返したら、底面も布巾で覆う。
⑮ すぐにもう一度ひっくり返して布巾で包んで網の上にしばらく置き、粗熱を取る。
⑯ 粗熱が取れたら、焼きあがった表面を上にした状態で布巾ごとラップで包み、涼しいところで一晩休ませる。
- ポイント
- ・生地をしっとりとさせるため、最低でも半日は寝かしておく。
⑰ 生地からわら半紙を丁寧にはがす。
- ポイント
- ・はがすタイミングは、デコレーションの準備が整ってから。それまではスポンジ生地が乾燥しないようにはがさずに置いておく。
「基本のスポンジケーキができました~!」
●先生
「さあ、目指していた食感に仕上がっているかしら。ちょっと味見してみましょう!」
●祐梨子
「口当たりがとっても軽くて、ふわっふわ! しっとりと理想の食感に作ることができました♪ 次はデコレーション! 先生から教わるポイントを守って、ワンランク上のイチゴのショートケーキに仕上げるぞ~!」
文/植木祐梨子、写真/岡本寿
※本編はホールケーキの「基本のスポンジ生地」です。
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