下町情緒が色濃く残る中津商店街にある『月と太陽』
北は中国・チベット、南はインド、その中間にありヒマラヤの山々に囲まれた国、ネパール。日本にはカレーやナンが味わえる店は多いが、それに比べるとネパール料理が味わえる店というのはまだ少ない。特に、現地の味を伝える“本気”のネパール料理店というのはわずかだろう。
2018年7月に、大阪・中津に誕生した『ヒマラヤ山麓の街角ごはん ネパール料理専門店 月と太陽』(以下『月と太陽』)は、ネパールの伝統料理を楽しめる店。中津にある大人気スパイスカレー専門店『梵平(ボンベイ)』と、インド周辺のイスラム諸国で食べられるスパイス炊き込みご飯専門店『ダイヤモンドビリヤニ』の2店を手掛ける奥山浩平氏が、3店舗目として同じ中津の地にオープンさせた店だ。
『月と太陽』が佇むのは、繁華街・梅田の隣にありながら、古い下町の雰囲気が色濃く残る「中津商店街」。商店街の入り口は間口が狭く、うっかりしていると見逃してしまいそうなので気をつけよう。
アーケードを奥へ進むと現れるのが、ネパールの国旗を掲げ、スパイスの香りを放つカラフルな1軒『月と太陽』だ。
ちなみにネパールの国旗(写真上・左)と言えば、世界で唯一の四角形ではない形が印象的。現在の国旗の上部のモチーフは「月」を、下部は「太陽」を表し、太陽や月と同じくらい国家が末永く繁栄するようにとの願いが込められているという。『月と太陽』の店名も、そんなネパール国旗に由来。
また、店頭に掲げられたのれん(写真上・右)は、1962年頃まで使われていた国旗の月と太陽それぞれに描かれた“顔”をモチーフにアレンジしたもの。
古き良き日本のような、どこか懐かしい気分にさせる店内
のれんをくぐると、まるで田舎の家を訪れたような、どこか親しみ感のある空間が広がる。
「元々乾物屋として利用されていた店舗の雰囲気を生かしました。土間があり、小上がりがあり、微妙に暗い雰囲気はネパールの家に近く、昔の日本の家庭の雰囲気とも似ているものがあるんですよ」と奥山さん。
ノスタルジックな雰囲気でリラックスした気分を味わえるのも同店ならではだ。
おかずを好きに組み合わせて食べるネパールの国民食
ネパールの料理の代表選手が「ダルバート」(写真上)。ダル(豆スープ)とバート(ご飯)を中心に、カレーとタルカリ(野菜中心のおかず)を一緒に楽しむ、日本でいう一汁三菜にあたるスタイルだ。
レンズ豆から作ったダル(写真上・右器)はまったりとしたうまみで、チキンカレー(同・左器)はシャープな辛さ。
タルカリには、ニンジンや大根などの野菜を干してからスパイスで漬け込んだネパールの発酵料理「アチャール」や、炒め物などの野菜を使った副菜がたっぷり盛り付けられている(写真は10種盛り)。スパイスの使い方はインド料理に比べるとマイルドで、素材の良さを上手く引き立てるバランスになっている。
食べ方はもちろん自由だが、ひと品ずつ味を確かめながら、ご飯とカレー、スープとおかずなど、好きな組み合わせで混ぜ合わせて楽しもう。自分だけの好みのコンビネーションを見つけたり、最初と最後で異なる味わいを楽しめるのもダルバードならでは。ご飯は「バスマティライス」という長粒種を使用。水分が少ないので、ボリュームがありながらも軽く、あっさり食べられる。
クセの強さでトリコになる! 日本初の「国産水牛」料理
同店のメニューで特筆すべきは、日本初となる「国産の水牛」料理が食べられるということ!
ネパールでは約8割の人がヒンドゥー教を信仰しているが、ヒンドゥー教では牛(一般的に背中にコブのあるコブウシを指す)は神様の使いであることから、食べられていない。その一方で、水牛は神話では魔神の乗り物とされ、コブウシとは全くの別物と考えられている。そのため、食肉として用いられさまざまな料理に使用されている。
日本ではほとんど流通していないが、同店では、日本で唯一水牛を食肉用に育てている酪農家から一頭買いで仕入れることに成功。水牛を使った料理をラインナップしている。
写真上はネパールのソウルフードである「モモ」。モモという名前は、水牛の部位を示しているわけではなく、ネパールやその周辺で食べられる蒸し餃子や小籠包、肉まんに似た料理のこと。
小麦粉から練ったムッチリした自家製生地の中には、タマネギやスパイスで和えた水牛のミンチがぎっしり! 鶏と豚の合挽き肉を使ったモモと食べ比べると、鶏豚モモはあっさりとした味わいで、水牛モモは水牛のクセのある風味や弾力感が押し寄せて美味。ジビエ好きなら間違いなくトリコになる味わいだ。
すっぱくてちょっぴり辛めのソース(写真上・奥)やゴマが香る白いスープをつけて、味の変化を楽しめるのもおもしろい。
ビールがすすむ、マニアックなつまみは必食!
「ダルバートや水牛のみならず、マニアックな料理も用意していますよ」と奥山さん。「パニプリ」(写真上)は、ネパールやインドなどの屋台で親しまれているスナック。
全粒粉で作った生地を揚げるとボール状に膨らむので、スプーンの柄などで穴を空け、中にスパイシーなポテトサラダと、酸味のある冷製スープを注ぎ、一口でパクリと食べるスタイルのメニュー。“サクサク”とした生地が口の中で“しっとり”に変わり、ポテトサラダとの一体感を奏でながら爽やかな余韻を感じさせる不思議な一品だ。ビールとの相性もよくひとつふたつとつい手を伸ばしてしまうことうけあい。
お酒と相性の良い「スクティ」(写真上)もおすすめ。羊の干し肉をタマネギやスパイスで和えてレモンの酸味を効かせたおつまみメニュー。かじってみると想像以上の弾力にびっくり! ジャーキーのように噛みしめるほどに、味わい深さがじんわりと広がってくる。「ネパールで親しまれているヒエ焼酎やラムも用意しているので、スクティと合わせてどうぞ」と奥山さん。
▲料理を手掛けるのはネパール出身のシェフ・アルズンさん(写真上・右)とガイレさん(同・左)。
「中国と接していることから、インド料理にはない麺料理『トゥクパ』などもあるんです。みなさんネパールに行く機会はなかなか少ないと思いますので、店の雰囲気や料理を通じて現地の風土を感じていただきたいですね」と奥山さんは語る。
ちなみに『月と太陽』に続き、4店舗目となる新店もオープン予定だとか。こちらも今から楽しみだ。
撮影:前田博史
【メニュー】
月と太陽のダルバート 10種 1,680円
モモ盛り合わせ(鶏豚モモ・水牛モモ) 4P 520円
パニプリ 550円
スクティ 680円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
ヒマラヤ山麓の街角ごはん ネパール料理専門店 月と太陽
- 電話番号
- 06-6375-1911
- 営業時間
- 11:00~15:00(L.O.14:30)、17:00~21:30(L.O.21:00)
- 定休日
- 火曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。