世界一周旅行中に出逢ったラムのおいしさに感動してオープン
旅の醍醐味は、その土地の食や文化を五感で味わえることだろう。感動が大きければその後の生き方に変化が表れるし、惚れ込んだ国の魅力は周囲に伝えたくもなるものだ。
東京・麻布十番の『仔羊こだわり屋』がオープンした経緯もまさにそう。
同店は、2017年11月から翌年10月までの約1年間にわたって世界一周旅行を楽しんだ高林慎之介さん(写真下)が、旅の途中、アルゼンチン・パタゴニア地方で食べたラム肉のあまりのおいしさに感動。帰国直後の2018年11月1日に人気のオイスターバー『楸(ひさぎ)』の麻布十番店をリニューアルするかたちでオープンした店なのだ。
帰国は10月12日、プレオープンは10月26日。驚くほどスピーディな理由は、長年、飲食業界の第一線で活躍している父親のサポートがあったから。
父親がオーナーを務める銀座『楸(ひさぎ)』は、牡蠣料理を堪能できる名店として多数メディアに取り上げられる評判店。ラムのおいしさに感動したことを伝えてきた息子に対して、飲食業界の大先輩である父は、姉妹店としてラム肉料理専門店をオープンすることを提案。そこからは、培ってきたノウハウを活かしてさまざまなアドバイスを送り続けた。
「帰国までの間、各地でラム肉料理を食べたり伝統的な調理法を教えてもらったりして、自分なりに研鑽(けんさん)を積みながら、父とやりとりを続けました」
その結果オープンした同店は、旅した国々のエッセンスが散りばめられた、異国情緒あふれる雰囲気。カーテンで仕切られた半個室なども用意されており、大切な人とゆっくり過ごしたいときにもうってつけだ。
名物料理の「モロッコ風スパイス ラム蒸し鍋(タジン)」に使用のタジン鍋は現地から調達
同店の料理の中には、旅の途中に出逢った味を再現したものもある。その代表格は、「モロッコ風スパイス ラム蒸し鍋(タジン)」(写真下)だ。
「タジン(鍋)」とは、サハラ砂漠で有名な乾燥した大地のモロッコをはじめとする北アフリカエリアで、少ない水で調理するために生み出された、円錐状のふたが特徴の土鍋およびそれを使った料理のこと。
「モロッコ風スパイス ラム蒸し鍋(タジン)」では、タジン鍋を使って、ジャガイモやタマネギ、パプリカ、グリーンオリーブなどのさまざな野菜とラム肉を油を使わず蒸し焼き。素材のうまみが封じ込められた栄養たっぷりな一品に仕上がっている。
パプリカパウダー、クミンなどをミックスしたモロッコ風スパイスで漬け込まれたラム肉はとてもやわらかく、さらにそのうまみが鍋の中で循環して野菜に染み込んでいる。口に含むとスパイスの香りが鼻から抜けると同時に、野菜本来の味わいもしっかりと噛みしめることができるのが楽しい。
タジン鍋は、シェフ自らモロッコで買い付けたものを使用。異国情緒あふれるデザインの鍋がテーブルに並ぶと、それだけで気分が華やぐのもオツである。
「ラム肉の黒いカレー」(写真上)は、姉妹店である『銀座 楸』で大人気となり、雑誌やメディアで取り上げられたカレーをラム肉専門店らしくアレンジしたもの。
本家のカレーには牡蠣とやわらかな牛ロースステーキがトッピングされているが、『仔羊こだわり屋』のトッピングはやわらかく煮込んだラム肉。スパイシーな黒カレーとの絶妙なコラボレーションを楽しめる。
さらに、卵などのつなぎを一切使わずラム肉と香辛料のみで作った「ラム肉100%のハンバーグ」をはじめとするさまざまなメニューがそろうが、“アイスランドラム取扱認定店”として今後特に推していきたいメニューは、臭みがなくやわらかな質感のラムの魅力を堪能できる「アイスランドラムたたき」(写真下・左)だという。
▲写真上・右の羊が描かれたプレートは、「アイスランドラム協会」からアイスランドラムの取り扱い専門店のプラチナパートナーとして贈呈されたもの。
ラム肉には「赤ワイン」が断然おすすめ!?
お酒好きならまず頼みたいのは、「羊の4種盛り合わせ」(写真上)。写真左上・手前から時計まわりに、生ハム、ペコリーノチーズ(羊チーズ)、タンスモーク、ソーセージと、他ではなかなか食べることができない珍味ぞろいなのでぜひ味わってほしい一品だ。
お酒は、赤、白、スパークリング、焼酎、日本酒、ウイスキーと豊富にそろうが、ラムと相性がいいものはなんといっても赤ワインだ。
写真上・左から、洗練されたエレガントな風味のフランス『Chateau de Santenay(シャトー・ド・サントネイ)』の「クロ フィリップ ル アルディ ルージュ」、引き締まったタンニンと新鮮でスッキリした後味が魅力のアルゼンチン『Bodega Catena Zapata(ボデガス・カテナ・サパータ)』の「アラモス マルベック」。
同じくアルゼンチンの『Bodega El Esteco(ボデガ エル エステコ)』からはバランスよく落ち着いた味わいの「フィンカ ノターブレス カベルネフラン」、そして、フランス『Jean-Philippe Marchand(ジャン・フィリップ・マルシャン)』の豊かな芳香と重厚な味わいを楽しめる「ジュヴレ シャンベルタン」と、クセが強すぎず、どんな料理ともよく合うワインが用意されているので、シェフに相談しながらいろいろ試してみては。
世界中の味を楽しめば、おのずと行きたい国が増えてくる!
「日本の飲食店が出しているラムの90%以上は、ニュージーランド産かオーストラリア産で、アイスランド産のラムはわずかに2%程度なんです。アイスランドの広い大地で放牧されて、生後4、5カ月で出荷されるラムは臭みがなくて本当にやわらか。ぜひ多くの人に食べていただきたいです」(高林さん)。
高林さんによると、アイスランドは島国ゆえ、約1,000年前に入植者であるバイキングが持ち込んだ羊が他の品種と交配されることがなかったため、今なお「アイスランド古代種」の羊が生息しているのだとか。
話好きの店主のおかげで、来店するたびに世界中に旅したい場所が増える『仔羊こだわり屋』。「ラムのいろんな食べ方を提案したいし、海外からのお客さまにもたくさん来店してほしい」という高林さんの店でおいしいラム料理を楽しみながら、次の渡航先に思いを巡らせてみるのもすてきだろう。
【メニュー一例】
モロッコ風スパイス ラム蒸し鍋(タジン) 1人前1,400円(2人前より)
ラム肉の黒いカレー 1,450円
羊の4種盛り合わせ 1,600円
ラム肉100%のハンバーグ 1,850円
ラムチョップ 黒ごま添え 1本690円
ラムのステーキ チミチュリソース 1,450円
ラムの焼肉食べ比べ 3種類の塩付き 2,000円
ローストラム 1,600円
アイスランドラムたたき 1,600円
ラムのしゃぶしゃぶ 2,500円
<ワイン(ボトル)>
アラモス マルベック 4,900円
クロ フィリップ ル アルディ ルージュ 7,000円
フィンカ ノターブレス マルベック 8,400円
シャンベルタン ジャン・フィリップ・マルシャン 14,000円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です。
※サービス料5%がかかります。
【店舗情報・SNSアカウント】
Email:lamb.kodawariya@gmail.com
Facebook:@lamb.kodawariya
Instagram:@lamb.kodawariya
仔羊こだわり屋
- 電話番号
- 03-3452-3902
- 営業時間
- 18:00~23:00(L.O.22:00)
- 定休日
- 月曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。