荒木町の名店が2店舗目を開業! 店主の創意が随所に活きるおまかせコースを堪能する
新宿・荒木町で2012年に開業して以来、すぐに予約の取れない人気店となった日本料理店『和食 こんどう』。ここ数年の荒木町の賑わいを牽引してきたともいえる店主・近藤明弘さんが、2018年8月、2店舗目となる店『馳走 こんどう』をオープンした。
場所は荒木町・舟町の交差点付近にある建物の地下1階。今のところ目立った看板は出ておらず、夜に出る置き行灯を頼りに入店することになる。
店内はカウンター席と個室が2室。ゆったり広々とした店内にこそ、近藤さんが2店舗目を開業した理由がある。
「『和食 こんどう』は個室がないんです。ゆったりした空間で静かに食事をしたいと、お客様からご要望をいただいていました」と近藤さん(写真上)。
『和食 こんどう』で6年間腕をふるい食材や料理を追求していくなかで、近藤さん自身も、料理だけではなくサービスや設え等すべての要素がそろわなければお客をもてなせない、と考えていた。
近藤さんが一時体調を崩して休養したこともきっかけとなり、物件探しに着手。『和食 こんどう』からほど近い場所に店を構えることになった。現在『和食 こんどう』は二番手が厨房に立つ。
「献立は2店舗とも僕が考えています。価格帯は『馳走 こんどう』の方が上で、使う素材もさらに良いものを仕入れていますが、『和食 こんどう』で出す料理は『馳走』の料理と素材の“質”が違うだけ、ということにならないよう、食材も料理自体も変えるようにしています」。
2店とも贔屓にしてくれる常連客のことを考えて、近藤さんは日々創意を凝らしている。
一品一品に個性があふれる! 厳選した素材を存分に堪能できるコース料理
コースの中からいくつかのお料理を供していただこう。
まずは「先付」(写真上)。山口県下関産のフグと島根県産アンコウの肝の一品。
プリップリな食感の新鮮なフグの刺身と、湯引きしたコリコリの皮。その下に、アンコウの肝が。アン肝は、橙を使ったジューシーなポン酢と合わせて裏ごししてある。このペースト状のアン肝をフグの和え衣として、混ぜていただく。濃厚でまったりとしたアン肝と、プリプリ・コリコリのフグの食感や淡泊な味わいが調和し、ひと口目から日本酒が欲しくなる。
この日の「椀」(写真上)は、キンキと聖護院かぶら。
キンキは北海道網走で一本釣りされたもの。「釣キンキ」と称され、高級魚として知られるキンキのなかでも最高級品だ。炭火でふっくらと焼いた大ぶりな切り身は、椀種とはいえしっかりと食べごたえがある。その下に隠れている聖護院かぶらは、ほっくりとしてやわらかく、噛みしめるごとに素材そのものの甘さを感じる。
器は石川県加賀市名産の、山中塗の骨董品。美しい器に出逢えることも、こちらの店での食事の楽しみのひとつだ。
「焼物」(写真上)は、琵琶湖産のモロコ。
漁獲高が減少して、希少な高級魚となった琵琶湖のホンモロコ。「冬場のモロコは寒モロコといって、脂がのっています」と近藤さん。モロコが水の中で泳いでいる姿を模して、身体をくねらせて串を打ち、炭火で焼いている。
皿は、近藤さんの故郷・岐阜県で活動する女性作家さんが焼いたもので、数個の石を埋め込んである。近藤さんはこの作家さんの作風を知って自分の料理プランを伝え、盛り付けのイメージを共有しながら皿を作ってもらったという。
モロコが湖を自在に泳ぐ風景が浮かんでくるひと皿。奥に見える炊いた海老芋も、湖の中の岩場のイメージだ。
モロコは、上品な苦みのある味わい。添えられた自家製のカラスミで塩味を補い、カボスを搾って酸味を足す。
カラスミ(写真上)は、毎年好評で予約が殺到する「おせち」に詰めている品。近藤さんが修業時代から作り続けているもので、通常は焼酎で仕込むところを、日本酒を使って調理している。蒸留酒ではなく、醸造酒を使うことで「うまみがのっかる」と近藤さん。単品での注文はできず、コースのなかで出てきたらラッキー。これもまた、お酒によく合う。
コースの〆は炊き込みご飯! 旬の食材をたっぷり使った、贅沢なひと品
コースの〆は炊き込みご飯。
この日の炊き込みご飯は……
兵庫県香住産の香住蟹を余すところなく使った、贅沢なひと品。
中央にはカニの脚の身がたっぷり。その右にはお腹の身、左には内子、下には外子が惜しげもなく盛られる。京壬生菜のグリーンが鮮やかで、大きな甲羅が添えられた華やかなビジュアルに、思わず感嘆の声が上がる(写真は2~3人前)。
米は山形県産のつや姫。「炊き込みご飯に使う米は、食材に負けないように、噛みごたえがあって米自体に味のあるものを選んでいます」と近藤さん。
旬のカニのうまみをしっかりとまとったご飯と、ふっくらしたカニの身、外子のプチプチとした食感。ほんのりと香る柚子もきいて、二膳、三膳とお代わりしてしまいそう。
それでもすべて食べきることができなかった場合は、近藤さんがおにぎりにして、お土産として持たせてくれる。
お酒は日本酒、ワイン、シャンパーニュをそろえる!
「お酒も飲むんですが、実は甘いものも好きです」という近藤さん。
最後を締めくくるデザート(写真上)は、カボチャのブランマンジェとココナッツミルクのグラニテ(氷菓)。
ブランマンジェはカボチャそのものの味わいが活き、甘さは抑えめ。濃厚なココナッツミルクのグラニテは凍った液をかき砕いて調理。かき氷ともシャーベットとも違うテクスチャーだ。添えられたフルーツは、岐阜県産の冬柿をオレンジの香りのグランマルニエシロップで炊いたコンポート。皿の上の色合いも鮮やかで、コースの最後の最後まで高揚感が続く。
お酒は、日本酒、ワイン、そしてシャンパーニュも数多く取りそろえる。近藤さんの故郷・岐阜県産の酒では「醴泉」や「醴泉 蘭奢待」(写真上)、ほかに石川県の「宗玄」、香川県「悦 凱陣」、島根県「月山」、奈良県「ALPHA 風の森」、福井県「黒龍」など、日本各地の名酒がそろう。ワインも、お客からの要望が多いというシャンパーニュも、手ごろなものから高級品までストックしている。
地元のお客や常連客に愛される、季節ごとに通いたくなる店『馳走 こんどう』
荒木町は繁華街だが、住宅街でもある。『馳走 こんどう』で個室の設置にこだわった背景には、子供連れも入店できるようにとの考えもあった。「地元のお客様や常連さんに使ってもらわなければ、お店は良くなっていかないんです」。
新規のお客やインバウンド客も大事にしながら、地元のお客や常連客のことを思う近藤さんは、料理の価格設定も、お客の目線に立った時にこのくらいが妥当だ、と思える値段にしている。
『馳走 こんどう』の「馳走」は、もとは仏教用語で、他者のために奔走すること、お客をもてなし、その準備のために走り回ることを意味する。「産地を走り回って良い食材を集めてはお客様に振る舞っている、今の自分の状況を表している」と近藤さん。
日本各地から集めた良い食材を極上の料理に仕上げて、妥当な価格で提供。個人にも家族連れにも配慮した店内。地元客はもちろん、エリア外からでも、季節ごとに通いたくなる店だ。
すっかり荒木町の顔となっている『和食 こんどう』とは一味違う『馳走 こんどう』。より高級な食材やゆったりした空間、そして近藤さんの創意あふれる料理を楽しみたい時には、こちらの新しい店を訪れてみていかがだろう。
【メニュー】
昼 10,000円
夜 15,000円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です
※サービス料は別途
※要予約
馳走 こんどう
- 電話番号
- 050-5487-7194
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月~土
ランチ 12:00~14:30
(L.O.12:30)
ディナー 17:30~22:30
(L.O.21:00)
- 定休日
- 日曜日
祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。