連載 第13話:『アルモニコ』店主 佐々木泰広さんが通う店
料理人から料理人へ、バトンを受け継いでとっておきの一軒を追う連載【腕利き料理人が通ううまい店】。
広尾の居酒屋『居間 -ima-』の店主、多田裕紀さんからバトンを受け継いだのは、代官山のイタリアンレストラン『ARMONICO(アルモニコ)』のオーナーシェフ、佐々木泰広さん。独創的なカプレーゼ、色彩豊かなコース展開で訪れるものを虜にさせる。2018年に恵比寿から代官山に移転し、さらなる躍進を遂げる佐々木シェフが、仕事帰りに訪れたくなるのが今回の店。コース仕立てで楽しめる会員制のラーメン会席というから興味津々!
ここからは、佐々木さん自らに語っていただきます!
完全予約制のラーメン会席。地下への階段からワクワク感が募る
東京メトロ日比谷線広尾駅、またはJR恵比寿駅から歩いて10分程度。階段を深く降りた地下に『GENEI.WAGAN』(ゲンエイドットワガン)はあります。黒い扉は閉まっていて、左手の小さな看板下にあるインターホンを押して名前を告げ、中に入る仕組み。
迎えてくださったのは、オーナーの入江瑛起(いりえひでき)さん。東日本大震災のチャリティーイベントでお会いしたのがきっかけでした。『GENEI.WAGAN』は料理ももちろんですが、この入江さんに会いたくて通う人が多数。僕もそのひとりです。何が楽しいって…、その話は後ほど。
▲カウンター席(写真上・左)と、階段上席(同右)
扉を開けて中に入ると小さな階段があって、その先の通路の両側に白い柱のようなものが何本もそびえ立っています。左側は階段を登るとテーブル席。右側はカウンター席で、端の階段を登るとグループで楽しめるシートがあります。『GENEI.WAGAN』は現在完全予約・会員制で、初回は会員からの紹介のみ入店できるというスタイル。
メニューは月替わりのフルコースひとつ。今回はコースの中から、これまで食べて感動したベスト3の料理をご紹介します!
第3位:「イクラと海月(クラゲ)のラーメンパフェ」
スープとともに出てくる前菜です。スープも絶品なのですが、小さなグラスに溢れんばかりに盛られたこのパフェがさらにおいしい!
▲︎食感の違う素材を重ねていくパフェ。自家製麺(写真上・左)を揚げたトッピングのカリカリ感がポイント
入江さんのつくる自家製醤油は、干し海老や干し貝柱、干し鮑(アワビ)などの高級食材を使っていて、香り、風味が抜群。それで漬けたイクラがまたうまいんです。いちばん下はクラゲですね、この緑のは何ですか?
「下から、クラゲのXO醬あえ、生海苔と生クリームのXO醬風味、揚げた自家製麺、イクラの醤油漬けの4層。個々に味わってもいいけど、それぞれ食感が違うのでぜひ混ぜて食べて。こぼしちゃダメ。この混ぜ方で性格わかるよね〜」とニコニコ話す入江さん。これを混ぜるとは至難の技!
そーっと混ぜていくと、海苔の香りがふわっと漂います。ひとつひとつを味わいつつも、がんばってすべてを一口で……なるほど、クラゲのコリコリ、海苔とクリームのなめらかさ、揚げ麺のサクサク、イクラのプチプチ、いろいろな食感が口の中で行き交っておもしろい。そしておいしい! つまみにもなるので、ビールが進んじゃいます。次の料理も期待させる前菜ですね。
第2位:「3種の野菜のアヒージョ」と「スペアリブのコンフィ」
パフェを食べ終わると、テーブルに小さな鍋が登場します。中のオイルにはスペアリブが入っていて、そこへ自分で選んだ3種の季節野菜を加えてアヒージョにするんです。ニンニク入りのオリーブオイルでグツグツ煮えていく様子が見られる楽しい一品。
▲︎季節野菜の盛り合わせから好みの3種を選択。スペアリブとともにオイルで煮て仕上げる
今回僕は、シイタケ、プチトマト、芽キャベツを選択。しばらくすると油が温まり、野菜がじわじわ煮えて、よい香りがしてきます。では、火通りのよいトマトから……アツアツ! 塩をつけなくてもうまみがありますね。
「ベースのオリーブオイルに、ニンニク、ローズマリー、タイムと、自家製の醤油を加えているから風味がほどよくつきます。さすが佐々木シェフ、いい食材選ぶね~。味わってみて、もの足りないときだけ少し塩、ブラックペッパーをかける程度でいいと思うよ」と入江さん。
野菜を食べ終わったら、スペアリブの出番です。アツアツだけど、これは手づかみで豪快にかぶりつくのがいちばん。…最高ですね、シイタケのうまみで、さらにだしが深くなって肉に閉じ込められています。食材のひとつは、きのこ類にすることをおすすめします!
第1位:「玄瑛流拉麺(げんえいりゅうらーめん)」
『GENEI.WAGAN』の〆は、もちろんラーメン。これが、来店回数によって変わっていくからおもしろい。初回は塩、2回目は海老、3回目が香り味噌、4回目がこの「担々麺(タンタンメン)」(写真上)です。
5回目以降は、季節の食材を使ったりお客さんのお好みに合わせたりして、特にリクエストがない限り毎回違うものが食べられます。来店回数によるので、隣の人と違うラーメンということも。
▲水分量の多い自家製麺を、味が絡むように揉んでちぢれさせる。ゆで時間はたった10秒!
この麺がまたすごい。中華麺なんですが女性的というか、細く、やさしい食感もあって、やみつきになります。入江さんが研究を重ねて、粉や水の配合を見定め、麺を作る機械まで作ったとか。
「ラーメンの麺の水分量はものによって違って、例えば博多ラーメンは23~24%、北海道の多加水麺で30~35%、40%を超えると麺がくっついてしまうと言われているんだけど、うちのは47%! なんでかって? 製法や、配合でね(にやり)」と入江さん。独自の技術が隠されているようです。
その様子が、こちら!
ゆでる前にストレート麺をもんでちぢれ麺にしていく。ぎゅっと掴むようにしても麺が固まらず、ほぐれていくから不思議です。
どれも間違いなくおいしいんですが、今日は担々麺をリクエスト。味噌とゴマペーストで濃厚! 醤油や海老油も加わって複雑な味わいです。スパイシーなのは花椒(ホアジャオ)かな。
聞くと、「自家製のラー油に花椒と激辛の唐辛子、八角などが入っています。結構辛いでしょ?」はい。汗がじわじわ。麺はコシがあって、温泉卵を割ったところにスープと絡めて食べると、箸が止まりません。そういえばカレーラーメンもおいしかったなぁ。
「梅と大葉のラーメンは食べた? うちの田舎で手作りしているしょっぱい梅干をくずしながら食べるの」と入江さん。30回以上来ていますが、まだ食べてないです! 今度ぜひ!
ここには書けないようなトークも繰り広げ盛り上げつつ、入江さんの料理は手際よく進んでいきます。この楽しさ、まるで新宿のママに会いに来ているみたい、なんてことを言えば「(ここは)広尾1丁目だけど2丁目ね」って。さすがの切り返し、勉強になります。
来店数200回越えの人も5~6名いらっしゃるとか。入江さんの魅力も然ることながら、無限に生まれていくラーメンの味もファンの心をがっちり掴んでいます。いつも元気をくれる店、僕もまた違うラーメンをいただきに来ます!
【編集後記】
インターホンで扉を開けるときはドキドキでしたが、中はおいしく楽しい笑顔でいっぱい。入江さんのトーク、ライブ感のある料理の演出に私たちもすっかり魅了されました。終了後、特別にいただいた初回の醤油ラーメンも極うまでした!
撮影:千々岩友美
【メニュー】
ラーメン会席フルコース 非会員価格8,200円(会員価格6,800円)
一番搾りプレミアムビール 800円
デイリーワイン グラス900円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別・サービス料別です。
※『dressing』プレミアム読者限定のご来店時特典あり※
完全紹介・会員制ですが、なんとプレミアム読者限定で、「特別に予約が取れる権利」をいただきました!
特典をゲットして、佐々木さんが絶賛する『GENEI.WAGAN』の味を堪能しましょう!
※取材時にいただきましたご来店時特典は、2019年3月30日(土)まで有効です。
ご予約の方法は…! (続きは「今すぐ続きを読む」へ)
GENEI.WAGAN
- 電話番号
- 03-3449-6010
- 営業時間
- 18:00~24:00(L.O22:00)
- 定休日
- 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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