線路沿いに誕生した、小さなワインバー
東京メトロ副都心線・北参道駅から徒歩3分。JR代々木駅からも徒歩圏内。JRの線路沿いに、ひと際目立つ真っ赤なビルにブルーの外観。通る人が思わず「なんだろう?」と立ち止まるほど、目を引く可愛らしい店が誕生した。2018年11月6日に開店したこの店の名は、『vinmari(ヴァンマリ)』。
フランス語でワインのことを指す「vin」が付く店名。自然派ワインをメインに、つまみと共に楽しめるワインバーだ。
店主は、前田杏理さん(写真上)。前田さんは大学を卒業後、会社勤めをしていたが「もともと好きだった料理を仕事にしよう」と、29歳の時に服部栄養専門学校の調理師本科へ。同校へ通いながら中野区野方にある『BISTROT La Pomme de Pin(ビストロ・ラ・ポム・ド・パン)』(現在は高円寺に移転)で経験を積みながらソムリエ資格を取得。その後、西麻布の人気店『Le Bouton(ル ブトン)』で腕を磨いた努力家だ。
脱OLから10年を数えた2018年、こうして独立を果たしたのだ。
カウンター6席、テーブル4席のこぢんまりした店内ながら、そこには前田さんのセンスとこだわりが詰まっている。
北欧が好きだという、自身の好みを隅々まで盛り込んだ店内、一番のお気に入りは、壁の色だ。「ブルーグレーが大好きなんです」。まるで、前田さんのキッチン&リビングのようで、くつろぎ感は格別。
特注のワインセラーは、ウッディな家具のよう
特注のワインセラーは、ウッディでスタイリッシュ。まるで家具のように空間に馴染んでいる。「思い切って、作り付けにしてもらったんです」と、前田さん自慢のセラーだ。
中には、自然派を中心に、正統派のワインなどが並ぶ。「選ぶ基準をよく聞かれるのですが、実はエチケット重視なんです」と、笑う。文字だけを描いたシンプルなデザインや、太陽や月、樹木など自然をモチーフにした絵が多い。
期待を膨らませ、まずはマカロンと泡で乾杯!
アミューズとしての定番メニューは、コロンとかわいい「ドライいちじく、ナッツ入りバターを挟んだマカロン」(写真上)。
修業先の『ル ブトン』ではフォワグラのテリーヌを挟んでいたが、『vinmari』らしさを表現して、ドライのイチジクと、さまざまなナッツをレーズンバターのように仕立てて挟んでいる。
マカロン生地は季節によって変わるが、この日のマカロン生地はラズベリー味。春を感じさせてくれる淡いピンク色だ。
さあ、乾杯といきましょう。
パリで人気の生産者が作る、スパークリングを
ラズベリーの甘酸っぱさと、ナッツの芳ばしさや濃厚さが凝縮されたマカロンに、きれいな色のスパークリングワインが添えられる。
ブルゴーニュより、パリで人気の生産者、ダヴィド・ルノーのピノ・ノワール100%「CREMANT DE BOURGOGNE BRUT(クレマン・ド・ブルゴーニュ・ブリュット)」(写真上)を。ほとんどはフランス国内で消費され、輸出はわずか10%という貴重な1本だ。
おつまみに合わせて、グラスを1杯ずつ
前田さんがコツコツ集めた食器のひとつ、北欧・フィンランド発のブランド「Marimekko(マリメッコ)」の器にギュッと盛られて登場したのは、「静岡県産 長谷川さんマッシュルームのマリネ」(写真上)。静岡県の長谷川さんが栽培するマッシュルームを使った一品だ。
マッシュルームの香りとともにフワッとハーブ香を感じる。「タイム、ニンニクを入れて白ワインと赤ワインビネガーで蒸すんです」と、前田さんが細やかにレシピを教えてくれる。
肉厚のマッシュルームにニンニクの風味とビネガーの酸味がじわっと染み込んで、口がワインを求めているのがわかる。
ブラウンマッシュルームにはロゼが似合う
「このボトル、すごくシンプルなエチケットなんです。でも、瓶先のピンクのロウがかわいいでしょう!」とおすすめしてくれたのは、南仏のラングドックより、自然農法に取り組む『レ・フレール・スーリエ』の「La Clastre(ラ・クラストル)」。シラー90%、テンプラニーリョ10%のロゼは、ドライでしっかりとした味わい。
「どんなワインが合うか聞かれたら提案いたしますが、マリアージュというより、好きなワインを飲んでいただくのが一番です」と、前田さん。
ボリューミーなグラタンは、北欧仕込み
同店は小さなおつまみから、ボリュームのある食事まで、メニュー数は多くはないものの、豊富なバリエーションが揃う。
スウェーデンの家庭料理として知られる「ヤンソンさんの誘惑(じゃがいも、アンチョビ、玉ネギのグラタン)」(写真上)は、焼いている時からいい香りが店内に漂うので、1つオーダーが入ると連鎖反応が起こり、次々に注文が入る人気メニュー。
さて、このグラタンの名前は、どうして“ヤンソンさん”なのだろう? 日本で語られる由来としては、「スウェーデンの菜食主義者であるヤンソンさんが、あまりにもおいしそうな匂いに負けて、アンチョビが入っているにも関わらず食べてしまったらしいんです」とのこと。
そんなエピソードを教えてもらいながら、熱々をいただこう。
細切りにされたジャガイモとタマネギが入っていて、クリーミーな中にジャガイモのシャキッと感と、ときどき感じるアンチョビの塩気がいいアクセントだ。
ワインはフランス・ロワール地方のシュナン・ブラン100%で造られる、トマ・バダルディエールの「L’esprit Libre(レスプリ リーブル)」(写真上)。「綿菓子のようにやわらかく優しい感じ」と、前田さんの表情も注ぎながらやわらかくなる。分類すると辛口ではあるが、甘みや酸味がふんわり口に広がる。
〆は、クラシックプリンと食後酒を
心地良くてついつい長居をしてしまう同店だが、そろそろ腰を上げなきゃという時のきっかけには、デザートがもってこい。おすすめはクラシックな「プリン」(写真上)だ。
スプーンを入れるとしっかり固く、口に含むとカラメルの苦みが広がる甘さ控えめのプリンだ。食後酒には、前田さんが仕込むリキュールを。
「自家製リモンチェッロ」(写真上)は、広島県産の無農薬レモンを使って作る。ベースとなるお酒は、“世界最強のお酒”と言われる、アルコール度数96度のポーランドを原産とするウォッカ「スピリタス」。
「レモンとハチミツが入っているので、40度ほどになっていますが、ゆっくり飲んでくださいね」と、前田さんは注意してくれるが…… 爽やかな香りで口当たりが良く、クピッといってしまいそうになる。ご用心を。
休日は明るいうちから乾杯を
同店は、平日は18時からの営業だが、土曜は15時からオープン。早い時間からワインを楽しめるだけでなく、ハンドドリップで丁寧に淹れられたコーヒーもあるので、ワインの後にデザートとコーヒーでシメるのもおすすめ。
カウンター目指して一人でふらっと立ち寄るのもよし、友達を誘ってテーブル席を陣取ってボトルを開けてゆるゆる過ごすのにもぴったり。
「『vinmari』の店名は、フランス語の調理用語で“湯せんする”という『bain marie』をもじっているんです」と、前田さんは店名の由来を語ってくれた。
「 直訳すると“マリーちゃんのお風呂”なのですが、お風呂のように温かく心地良い店にしたかったんです。あと、フィンランド語で“マリーちゃんの洋服”という意味を持つ『マリメッコ』から、“マリ”を拝借しているのと、“マリ”は世界中で親しまれている女性の名前の一つでもあり、女性らしくていいかなと思って。また、スペルの中には、文字を並べ替えると私の名前の“anri(杏里)”も入っているんですよ」
そんなたくさんの想いが詰まった『vinmari』で、前田さんが醸し出すやさしい雰囲気とワインのある時間は、心底、温かくて心地良い。
【メニュー】
■フード
ドライいちじく、ナッツ入りバターを挟んだマカロン 300円
静岡県産 長谷川さんマッシュルームのマリネ 550円
ヤンソンさんの誘惑(じゃがいも、アンチョビ、玉ネギのグラタン) 900円
プリン 500円
■ワイン
グラスワイン 900円~1,400円
ボトルワイン 5,000円前後~
自家製リモンチェロ 600円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です
vinmari(ヴァンマリ)
- 電話番号
- 050-5487-8641
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月~金
18:00~23:00
(L.O.22:30)
土・祝日
15:00~20:00
(L.O.19:30)
- 定休日
- 日曜日
第1月曜日、第3月曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。