ミラノの名物「スープペアリング」がついに東京へ!ミラノ発 名イタリアン『TOKUYOSHI』の分身店

【マッキー牧元の今月の1軒】

2019年03月08日
カテゴリ
レストラン・ショップ
  • レストラン
  • 神保町
  • イタリアン
  • イノベーティブ
  • ワイン
  • 連載
ミラノの名物「スープペアリング」がついに東京へ!ミラノ発 名イタリアン『TOKUYOSHI』の分身店
Summary
1.マッキー牧元の今月の一軒
2.ミラノのリストランテ『TOKUYOSHI』の姉妹店が東京にオープン
3.料理とスープの「スープペアリング」は至極の味!

ミラノの一つ星リストランテ『TOKUYOSHI』の分身!東京にオープン

『ALTER EGO』(アルテレーゴ)

意味は、他の自分や分身という意味だという。

ミラノの一つ星リストランテ『TOKUYOSHI』のオーナー 徳吉洋二シェフが、2019年2月、東京・神保町に作ったレストランの店名である。

おそらくミラノにいても、この店は自分の分身であり続けるのと同時に、ミラノでは見せない、違う魅力を表現したかったのだろう。

7皿からなるコースは、ミラノ同様のものもあれば、日本で新たに創作した料理もある。

最初の一皿は、ミラノでもおなじみ、小さなピッツァの箱(写真上)が手渡される。

中のピッツァ(写真上)は、米とポレンタで作ったクリスピーな生地を土台に、トマトソース、モッツァレラ、パルミジャーノ、モルタデッラ、食用花がのせられている。チーズのコク、ソースのうまみ、ハムの塩気、花の澄んだ香りが、パリパリと軽快に弾ける生地と合わさって、食欲を刺激する。

楽しい、心弾む食事のスタートだなあ。

役どころをとらえた「スープペアリング」が面白い

次は、ヴェニスのクモガニのサラダからヒントを得たという皿が出された。

花咲ガニと傍らには、焦がしバターとマスカルポーネチーズ、ヨーグルトを合わせたバターが添えられ、バゲットにこのバターを塗って、蟹をのせて食べるのだという。

そして同時に一杯のスープ(写真上)が運ばれた。花咲ガニのスープに、ふきのとうとオレンジを加えたものだという。

ひと口飲んで目を見開いた。

蟹の風味に溢れたスープをすすると、微かにふきのとうの苦みが顔を出し、オレンジの爽やかな香りがそよぐ。あくまで蟹を主体としながら、苦みが味を引き締め、香りがエレガントさを演出している。そのバランスが素晴らしい。

ふきのとうとオレンジが、ギリギリに感じられる、さりげなくも精妙な計算がなされて、それがスープに品を呼んでいる。

バゲットにのせた蟹を食べると、淡い甘みとバターのコクと混じった酸味が渾然となって口の中に広がる。

そこでこのスープを飲めば、毛ガニとは違う花咲ガニの動物的な色気が、海に沈み、優美に輝き出す。

時間が緩み、永遠になっていくような瞬間が生まれた。

『ALTER EGO』では、ワインペアリングとは別に、ノンアルコールペアリングではなく、スープペアリングというのを設けている。

ミラノでも実践済みだが、水の国である日本の食材を使った料理は、よりスープが馴染むような気がした。

次は「ウニのパスタ」(写真上)が出される。

厳選された小麦で作られた、マンチーニ社の乾麺を使い、ソースはマルサラ酒とウニをザバイオーネ仕立て(卵黄に砂糖を加えて泡立て、温めながら、酒を少しずつ加えて煮詰めたクリーム)にしたものである。

空気を含んだふわふわのソースの中で、パスタが滑らかに泳ぎ、噛めば小麦の甘みとウニの甘みが抱き合う。

添えられるスープは、焼きジャガイモとニンニク、ロースマリーのスープだという。

夢見心地を呼ぶパスタであるが、スープは共鳴より、パスタにはない風味を宿していて、一旦味をリセットする役目を持っている。

このようにスープペアリングは、料理の味を膨らますものや、リセットさせるもの、寄り添うものというふうに、それぞれ役どころが違うのが面白い。

日本で供している店は皆無に近い!

パスタが終わると、ハムの時間がやってくる。

まずは、バイヨンヌの24カ月熟成の生ハムで、マグロのヅケと合わされた。

薄く薄く切られたハムが、甘い香りを放ちながら、うまみを溶かし、マグロの赤身がほのかな酸味を流し、抱擁しあう。

山と海の滋味が、抱き合った瞬間だった。

さらに36カ月熟成のクラッテロ(写真上)が出される。おそらく日本で出している店は皆無に近いだろう。

樹木のような、蜜のような、獣のような、熟鮓のような、濡れた土のような、白酒のような、そのどれでもない香りが、混沌としながら漂ってくる。

豚でありながら、豚ではない。ハムでありながら、ハムではない。

この世の不思議をそっと集めた香りが、いやこの世のものとは思えぬ蠱惑が、鼻腔をくすぐり続ける。

もはや肉を超えた別次元であり、そいつを口の中に入れて、噛むまでもなく、しばらく置いてとろとろになった時点で、ゆっくりと潰してやる。

薄い薄い一枚でありながら、複雑なうまみを秘めて、味わいが永遠に続いていく錯覚を導く。

余韻だけで、ひと晩は語れる。そんなハムであった。

ハムの最後は、鳥取牛のブレザオラ(写真上)である。

こいつは、一枚一枚食べるのではなく、まとめて食べるといい。脂の甘みが深くなって、より陶酔を呼ぶ。

次は、椎茸のトリフォラートである。カブのエキスとイタリアンパセリ、パン粉とニンニク、アンチョビを合わせてカリカリにしたものが、上からかけられている。

噛めば、肉厚の見事な椎茸からジュースがどっと溢れて、笑みが生まれる。肉のコーフンの後に、穏やかなキノコの精で気を鎮めようという計算だろうか。

添えられた、微かな酸味を忍ばせた鶏とパルミジャーノのスープ(写真上)を飲めば、椎茸のうまみが一気に膨らんだ。

続いては、「トルテッリ・イン・ブロード」(写真上)。すっぽんのスープの中に浮かせた、猪のトルテッリである。

スープが澄んでいる。澄み切ったきれいさがありながら、深い。食べれば、トリュフが香り、猪の脂の甘い香りが漂い、スープの香りが追いかける。香りの三重奏は、やがてもつれ合い、一つになって、体に落ちていく。

美しいなあ。

最後は、野菜を煮詰めたソースを塗って焼いた鴨肉である。

ビーツと清見オレンジのジュースが添えられ、鴨肉には仕上げにシヴェソースが流される。

これまたそのままいただくのと、ジュースを合わせるのでは、趣が異なってくる。そのままでは、鴨の全てを凝縮した味わいが広がり、土の香りとさわやかな酸味を合わせたジュースと抱き合わせると、鴨は軽やかになって、空に飛んでいく。

面白いなあ。

デザートは、菊芋のジェラートとメレンゲの灰、カカオとアーモンドのビスケット。素朴な菊芋の甘みを生かした、シェフの菊芋への愛に溢れたドルチェだった。

【メニュー】
コース 20,000円(スープペアリング or ワインペアリング)

Alter Ego(アルテレーゴ)

住所
東京都千代田区神田神保町2-2-32
電話番号
050-5488-5262
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
月~木
18:00~23:00
月曜日から木曜日は何時からでもご来店頂けます。

金・土
18:00~20:00
20:30~23:00
金曜日、土曜日は今まで通り二部制で営業致します。
※お電話でのお問い合わせは、12:00〜17:00まででお願い致します。
定休日
日曜日
第1月曜日
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/jygp6jtt0000/
公式サイト
https://alteregotokyo.dinesuperb.com/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。