マルタ共和国首相のお墨付き! 日本で唯一の「マルタ料理専門店」
「マルタ共和国」という国名を聞いたことがあるだろうか。
イタリア・シチリア島の南に位置する島国で、地中海には珍しく公用語が英語であり治安も良好なことから、最近、語学留学先として急速に人気が高まっているという。
それにつれて注目されているのが「マルタ料理」。
2016年8月にオープンした『レストラン マルタ』は、マルタの料理を味わえる日本初の専門店だ。
『レストラン マルタ』があるのは、JR新橋駅から徒歩4分。庶民的な飲食店が立ち並ぶ細い路地奥のビル2階。
席数は22席。こぢんまりとしたスペースが隠れ家のようで、アットホームな雰囲気を感じさせる。
オーナーシェフの高宮崇(たかし)さんは、4年前まで東銀座『トラットリア マルタ』というイタリア料理店のシェフを務めていた。当時のオーナーがたまたまつけた名前だったため、同店はマルタ料理と直接的には関係がなかったそうだが、高宮さんはそのお店で働くことをきっかけに、日に日にマルタ共和国に興味を持つようになっていた。
マルタ料理の魅力は、多彩なスパイス使い
そんな中、お客として訪れたマルタ観光局の職員が高宮さんの料理を気に入り、「後援するので、ぜひマルタ島の料理を学んで欲しい」と懇願されたことから、念願のマルタ島を訪れることに。
イタリア料理歴20年というベテラン料理人の高宮さんだったが、マルタ島の料理には驚くことが多かったという。
「ベースはイタリア料理なのですが、近くにあるギリシャやチュニジアの料理の影響も色濃く受けていて、スパイスの使い方が多彩でとても面白かったんです」(高宮さん)。
すっかりマルタ料理に魅せられた高宮さんは、独立後、日本初のマルタ料理専門店をオープン。
▲店内には、マルタ共和国首相との記念写真が
今では、高宮さんの作る“ふるさとの味”を求めて、マルタ島出身者もよく店に集まるそう。2018年8月1日には、マルタ共和国のムスカット首相もこの店を訪れ、食事を楽しんだという。
初めて訪れる人にオススメしたいのは、マルタ島の名物料理の魅力を堪能できる「マルタコース」。
・「魚介のアリオッタスープ」
・「スチーム旬野菜のゴゾチーズソース」
・「セミトマトと豆のパテ ブルスケッタ」
・「シェフの前菜6点盛り」
・「マルタ名物 フティーラピッツァ」
・「和牛ローストとベイクドライス」
・「旬フルーツとマスカルポーネジェラート」
と、ボリュームも満点だ(コース内容は季節によって内容に変更あり)。
その中から、特にオススメの3品を紹介しよう。
6種類の前菜で、パンチのきいたスパイス使いを堪能!
▲「豆のパテ ブルスケッタ」
「ホブズ」という、マルタ島でよく食べられている大きなボール状のパン。それをひと口サイズにカットし、セミドライトマトのペーストと、ウズラ豆のペーストを乗せている。
ホブズ自体は素朴だが深い味わいがあり、同じように素朴な豆のペーストがよく合う。豆はレンズ豆、ヒヨコ豆など、日によって異なるとのこと。トマトの酸味がアクセントとなり、飽きることなくぺろりと食べられてしまう。
マルタ料理の特色をさらにハッキリと感じることができるのが、「シェフの前菜6点盛り」(写真下)。
▲「シェフの前菜6点盛り」
写真上段左から「アジのカルピオーネ(甘酢漬け)」「牛タンのペペロナータ添え」「ホタテの生パン粉焼き」。
下段左から「サーモンとオクラのタルタル」「マダコと焼きナスのマリネ」「小ヤリイカのグリル トマトジュレ」
どれを食べても、イタリアンやフレンチにはない独特のハーブ・スパイス使いに驚くはずだ。
その代表が「アジのカルピオーネ」。
いわゆる「南蛮漬け」だが、シナモンとナツメグの風味が鮮烈。お菓子に使われることの多いシナモンを、魚料理でこうした使い方をしているのは珍しい。だが意外にも、アジのややクセの強い風味がシナモンの主張の強い香りでやわらぎ、アジと思えないエキゾチックな味わいになっている。
また「牛タンのペペロナータ添え」は、ペペロナータ(パプリカ、トマト、タマネギ、ニンニクにオリーブオイルを加えて煮込んだ料理)の甘みが溶けあったおいしさを味わっていると、突然グリーンペッパーの辛みが直撃し、驚かされる。
いずれもスパイスやハーブの使い方に意外性があり、一つひとつの料理にパンチが感じられる。
「マルタ料理っておもしろくておいしい!」と、この前菜でその魅力を早くも感じられるだろう。
マルタ名物「フティーラ ピッツァ」は必食!
前菜だけでもマルタ料理のユニークな個性がわかるが、この店で必ず食べてほしいメニューは、ひだをつけて折り込んだ独特の形状が特徴的な「フティーラ ピッツァ」だ。
▲人気No.1の「マルタ フティーラ セント・ジュリアン」
「フティーラ」も「ホブズ」と同じように、マルタ島で愛食されているパン。
シンプルな丸型だったり、サンドイッチのように具材を挟んでいたりと、同じ「フティーラ」でも形やタイプはさまざまだが、現地ではそれらのパンを総称して「フティーラ」と呼んでいる。
イースト菌を加えて発酵させる「ホブズ」に対し、「フティーラ」は本来、イースト菌を入れずに時間をかけ自然発酵させて作る。ただし本場の作り方は酸味も強いため、同店ではほんの少しのイースト菌を加えて食べやすくしている。
同店にはマルタ風ピッツァの「マルタ フティーラ」のメニューが6種類あるが、人気ナンバーワンは「セント・ジュリアン」。
「フティーラ ピッツァ」はキッチンで生地から手作りし、仕上げている。
生地は、中力粉(ゼロゼロ粉)がベース。そこに、蒸してからペースト状にしたホウレンソウを練り込み、薄く伸ばしていく。
トッピングは、自家製トマトソース、山羊の乳を使ったゴゾチーズ、モッツアレラチーズ、マルチーズソーセージ(ポークソーセージの一種)の中身をほぐしたもの、タマネギ、ラードで揚げたジャガイモと、実に具だくさん。
コリアンダーとオレガノで風味付けしたら、ひだを作りながら、手早く成形。
仕上げにゴマを振って、オーブンでこんがりと焼き上げたら完成だ。
ジャガイモは、マルタでは皮つきのままスライスし、オリーブオイルを振りかけてから生地とともに焼き上げる方法が一般的。しかし同店では、ラードで素揚げしたジャガイモを使用し、より香ばしく仕上げている。
ザクザクもちもち! ピザのようでピザではない、クセになる食感
ひだを寄せた部分の皮はパリパリ、ザクザクの食感。そこに、カリッと焼けたジャガイモと、仕上げに振りかけたゴマの香ばしさが加わる。対して、ソースがしみた底の部分はほどよく水分を含んでもっちり。ほんのりと甘みも感じられる。
1枚の「マルタ フティーラ」に、実に多様なおいしさがつまっているのだ。
アラカルトメニューにも魅力がたくさん! オススメは「煮込み料理」
コースメニューではないが、「フティーラ ピッツァ」に次ぐ、高宮さんオススメのマルタ料理は「タコの赤ワイン煮込み」。
▲「タコの赤ワイン煮込み」
タコのうまみが溶け出した赤ワインソースは、軽くトーストしたホブズとの相性が抜群!
濃厚なコクの奥にオリーブの風味も強く感じられる。ホブズを追加で注文し、ソースの最後まですくい尽くさずにはいられないおいしさだ。
お酒はマルタワインやマルタビールのほか、マルタでよく飲まれているリキュールなども豊富。
「マルタ料理には、イタリア料理を凝縮してスパイスでメリハリをつけたような、独特の面白さとおいしさがあるんです」と高宮さん。
マルタ共和国は東京23区の半分くらいの面積の小さな国だが、地中海のちょうど真ん中に位置しているため、古代から特殊な文明を持ち、フランス、イギリスなどさまざまな国の侵略や併合を経て独立を果たしている。
その歴史を物語っているのが、独特なパン文化や料理なのだろう。
「マルタ島は観光スポットが多く街も美しいし、食べ物もおいしいので、週末やバカンスを利用して観光や語学留学に来る近隣の国の人が多いんです。日本人はまだ少ないですが、留学したらきっと楽しいと思いますよ」と高宮さん。
語学留学に興味がないとしても、この店の料理を食べたら、きっとマルタ島に行きたくなることだろう。
撮影:倉持ますみ
【メニュー】
お通しのパン代 300円
マルタコース(飲み放題付き<90分>)5,000円
マルタ・フティーラ セント・ジュリアン 1,200円
タコの赤ワイン煮込み 1,400円
グラスワイン 500円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込みです。
レストラン マルタ 新橋
- 電話番号
- 050-5492-1168
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- ディナー 17:30~23:00
(L.O.22:30)
火~木
ランチ 12:00~15:00
(L.O.14:30)
ピッツァ生地が無くなり次第、早目に閉める事があります。
土曜日のランチは2500円コースを6名以上で予約営業になります。
- 定休日
- 日曜日
祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。